情報交換スキルを高めるテクニックITエンジニアのチームリーダーシップ実践講座(11)(2/2 ページ)

» 2014年07月08日 18時00分 公開
[エディフィストラーニング 上村有子,@IT]
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コミュニケーションに無頓着なメンバーには

 一般に、エンジニアはコミュニケーションに無頓着だといわれがちです。特に、若いときに自分一人で仕事ができる環境に長くいると、人と関わらなくても仕事ができると思い込みがちです。小さな仕事であれば、他人とコミュニケーションしてもしなくても、仕事の結果に大きな差はつきませんので、コミュニケーションそのものに意味がないと思い込み、「時間の無駄」などという大きな誤解をしてしまうことがあるのです。

 長いキャリアの一時期ならば、大きな仕組みの中の1つの歯車として、黙々と仕事をするのも悪くないでしょう。しかし、エンジニアに期待されているのは、そのような仕事ではないはずです。やがて大勢を動かす仕事、関係者を仕切る仕事を受け持つようになることこそが、一人前のエンジニアとして期待される姿です。

 組織がらみの仕事とは、日々いろいろな人と関わり合いを持ちながら、双方の要望やスケジュールを調整し、金額を交渉し、品質レベルの折り合いを付け、人材や機材の調達を交渉し……と、仕事の70%以上をコミュニケーションが占めるといっても過言ではありません。

 皆さんのチームのメンバーに、もし「仕事には必要最低限のコミュニケーションで十分だ」と誤解している人がいるなら、急いで誤解を解いてください。これはチームの運営にかかわることです。

 そういう人が一人でもチーム内にいると、そこがコミュニケーション上のボトルネックになってしまいます。伝言ゲームと同じで、伝達途中に一人でも間違って伝える人がいると、そこでたちまち情報が変質し、そこより後の時点で元のレベルに回復することはありません。

 こういう人は、何かトラウマがあるというわけではなく、単に会話に対して無頓着なだけということが多いようです。きっかけを与えて、コミュニケーションの重要性に気付くように仕向けましょう。

ポイント

会話の必要性に気付かせよう

質の高い情報はテクニカルスキルの底上げから

 コミュニケーションの良しあしを決めるのは、和やかな意思疎通だけではありません。

 専門職の集団として仕事をする上で、限られた時間に正確で的を射た情報を伝えることは、できて当然です。仕様の説明やトラブルシューティングなどの際に、テクニカルターム(専門用語)を適切に使いこなせないようでは、他のメンバーのスムーズな思考や行動の妨げになってしまいます。

 それぞれのメンバーが、プロとして、質の高い情報を選んでメンバー間の意思疎通に貢献できるよう、リーダーも協力してください。

チーム内での共有

 メンバー全員が、仕事に密接に関係する分野でのテクニカルスキルを磨くようにしましょう。もっとも、仕事に直結する分野のスキル習得には、組織も個人もすでに、時間と費用を十分に投じていることと思います。重要なのは、それを「チーム内に広める」ことです。

 例えば、メンバーの誰かがセミナーや技術講習を受講して、スキルが向上したとしましょう。その後、「受講後、研修報告書を上司に提出」して終わり、または「テキストをチームのメンバーに回覧して情報共有したつもり」ということはありませんか?

 一人の能力が向上しただけでは、チームに対して貢献できません。受講した人は、他のメンバーにもこれを展開することが必要です。周りにも相応のスキルアップをしてもらわないと、少なくとも同じレベルで会話ができません。

 ちょっとした勉強会を開いてフィードバックするとか、現場で折に触れて、習ってきたことを説明に追加するなど、積極的に伝達・共有していけば、チーム内での意思疎通の質が向上していきます。

 チームの予算や時間など、貴重な資源を投資して受講したのであれば、投資のリターンをチームへ還元するのは義務です。自分の中に情報を寝かせてしまうのはルール違反であることを、チーム全体で肝に銘じておきましょう。

ポイント

スキルの還元を義務付ける

 次回は「論理思考をベースにした、メンバー間の意思疎通」について解説します。

筆者プロフィール

上村有子

上村有子

エディフィストラーニング インストラクター。外資SIer、証券会社を経て2000年に野村総合研究所入社。現在、情報化戦略、コンプライアンス、ビジネスコミュニケーション領域のコース開発、講師。専門分野はBA(ビジネスアナリシス)、コミュニケーション。


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