論理思考を会話に応用するITエンジニアのチームリーダーシップ実践講座(12)(2/3 ページ)

» 2014年09月02日 18時00分 公開
[エディフィストラーニング 上村有子,@IT]

論理思考をベースにした意思疎通

 論理思考は欧米から入ってきた考え方で、起源をたどるとアリストテレスやソクラテスの時代までさかのぼります。議論好きの古代ギリシャの哲学者が、相手を説得するために考え出した方法です。

 論理思考は英語で“Critical Reasoning”です。“Critical”は、直訳すると「批判的な」ですが、それだけでは後ろ向きで非生産的なイメージです。Criticalには他にも「検証する」に近い意味があるので、「検証しながら考える」と捉えるのが正しい解釈でしょう。

 第8回「5つのプロセスで進める、効果的な会議ファシリテート」で、アイデア出しをする際のブレーンストーミングの例を示しましたが、論理思考は、ブレーンストーミングのように自由に歯止めなく発想するのとは正反対の、いちいち検証しながら思考する方法といえます。「アイデア出しはブレーンストーミングで」「考えをまとめるときは論理思考で」と使い分けが必要です。

 論理思考では「洗い出した内容に漏れやダブりがないかどうか」を検証します。この「漏れもダブりもない状態」のことを「MECE(ミッシー)である」といいます。MECEは、“Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive”の頭文字をとったもので、「相互に排他で(ダブりがない)」「穴がないように集める(漏れがない)」という意味です。

 一方、“Critical Reasoning”の“Reasoning”とは、直訳すると「理由付け」です。結論とセットでその理由や根拠を述べることです。

 MECEも理由付けも、ちょっと意識すればできることなので、各メンバーが実践し、意見を述べるときのチームの共通スタイルとして定着させてください。以下ではMECEを実践するための思考ツール、ロジックツリーを紹介します。

ロジックツリーとMECE

 最近、企業から顧客情報が流出して大問題に発展するケースが増えました。どこの会社でも人ごとでは済まされません。そこで論理思考の練習として「自分たちの身近な組織やチームで、顧客情報の不正流出を予防するには、どうしたらよいか?」の対策を考えてみましょう。

 皆さんは、対策を考える際、どこから着手しますか?

思い付くまま考える

 1つには「思い付くまま、どんどん洗い出していく」方法があります。

 「開発のテストデータは、全て架空のものを使う」「顧客から預かった情報は、管理責任者を明確にし、アクセス権設定を厳密にする」「メモリスティックなどで外に持ち出されないよう、PCのUSB機能を無効にする」など。

 このやり方は「一通りリストアップが終わり、もうこれ以上出てこないという時点に至っても、リストアップされたもので出尽くしているかどうか検証が難しい」という短所があります。

 一人で考える場合はもちろん、チームのメンバーが頭を寄せて考えても、どうしてもアイデアに偏りが出てしまいがちです。「木を見て森を見ず」ということわざもあるように、せっかくみんなで一生懸命考えても、偏っていて抜けや漏れがあると、結果として有効な解決策にはなりません。

 また、よいアイデアがたくさんリストアップされても、それをグループ分けして最終的な結論にまとめ上げるのには手間がかかります。このように、アイデアを底から積み上げていくボトムアップ式の考え方は効率的とはいいにくいのです。

トップダウンで考える

 逆にトップダウンで考えると、最初に全体を見渡し、できるだけ偏りがないように隅々まで見渡しながら、アイデアの洗い出しを進められます。

 ここで役立つのがロジックツリー(樹形図)です。洗い出したアイデアを図を使って整理していくことで、洗い出しの後、あらためてまとめ直す手間や時間を省くことができるのです。

 先ほどの「顧客情報の不正流出を予防するには、どうしたらよいか?」という課題でしたら、まず、大きな分類で方向性を捉えます。例えば「社内vs社外」という大きな2本の柱で外枠を考え、その後、社内については具体策として「対策A」「対策B」「対策C」……、社外については具体策として「対策X」「対策Y」「対策Z」……とブレークダウンしていきます。

 この方法なら、「忘れてはいけない点」をきちんと押さえたまま思考を進められるため、致命的な見落としを防ぐことにも役立ちます。

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