「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」の書き方開業【パーフェクト】マニュアル(7)

「最終仕入原価法」や「低価法」など、棚卸資産の評価方法には複数の種類がある。最終仕入原価法以外を選択する場合は、確定申告期限までに届け出なければならない。

» 2014年09月16日 18時00分 公開
[税理士・社会保険労務士 望月重樹,@IT]

※この連載は「開業から1年目までの個人事業・フリーランスの始め方と手続き・税金」(望月重樹著)の第2章を、著者と出版社の許可の下、一部修正して転載するものです。内容は、書籍出版時(2014年1月現在)の法令などに基づきます。実際に開業される場合は、最新の情報をご確認ください。

本連載「開業【パーフェクト】マニュアル」のインデックス

連載目次

1 年末に売れ残った商品を評価する

 商売では通常、「物を仕入れる」という行為が発生します。仕入れ元に実際に代金を支払った段階で経費にできそうなものですが、仕入額は、商品が売れた段階で初めて、経費として計上されます。


 図の左側にある全ての在庫(年始にあった商品と当年中に仕入れた商品)の行く末は、右側のように、売れた商品と年末に残った商品に区分されます。

 当年中に仕入れたのは「B」ですが、当年の経費になるのは、あくまで売れた「C」のみです。このCを「売上原価」といいます。売上原価を求める算式は下記の通りです。

売上原価C=年始商品A+当年中に仕入れた商品B−年末に残った商品D

 この算式中の年末に残った商品Dを、「棚卸資産」といいます。これは要するに、仕入れた商品のうちまだ販売されていないもののことです。商品の他、製品、半製品、仕掛品、原材料などの会計科目が棚卸資産に該当します。

 棚卸資産の金額を評価するに当たっては、いくつかの方法があります。減価償却資産の償却方法と同様、税務署に届け出ることによって、任意の方法で評価できます。

2 棚卸資産の評価法には複数の種類がある

 棚卸資産の評価方法には下記のように複数の種類があります。

棚卸資産の評価方法の種類

 この中で、低価法だけが特殊です。「年末時点の時価」と「その他のいずれかの方法で算出した原価」とを比較して、低い方を採るという方法だからです。

 その他の原価法については、いずれかのタイミングでの購入価額を元に計算します。

3 所得税の棚卸資産の評価方法の届出書

「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」サンプル(クリックすると大きな画像を表示します)

 評価方法の届出をしなかった場合、自動的に「最終仕入原価法による原価法」を選択したものと見なされます。この方法で差し支えない場合は、届出は必要ありません。

 最終仕入原価法による原価法以外を希望する場合は、「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」を提出します。「減価償却資産の償却方法の届出書」と兼用になっていますので、該当しない方を二重線で削除して使用してください。もちろん、2つの届出を1枚で提出することも可能です。

 記入する内容は、「事業の種類」「棚卸資産の区分」「評価方法」の3点です。「事業の種類」に小売業、製造業、卸売業などといった業種を記入、「棚卸資産の区分」には商品、製品、半製品、原材料などの区分を記入、そしてもう1カ所、「評価方法」を記入します。

 届出書の提出期限は、減価償却資産の償却方法の届出と同じく最初の確定申告書の提出期限、すなわち開業年の翌年3月15日です。

所得税の棚卸資産の評価方法の届出書

  • 対象者   評価方法を「最終仕入原価法による原価法」以外の方法にしたい人
  • 提出期限  最初の確定申告期限(翌年3月15日)まで
  • 提出先   納税地の所轄税務署長

 次回は、消費税課税事業者選択届出書について解説します。

書籍紹介

開業から1年目までの 個人事業・フリーランスの始め方と手続き・税金

開業から1年目までの 個人事業・フリーランスの始め方と手続き・税金

望月重樹著
日本実業出版社 1600円(税別)

開業準備、帳簿の付け方、青色申告、資金繰り、1年目の経営分析……たった1人で開業する人が、1年目を乗り切って2年目以降の経営に弾みを付けるために、何をすべきか、どの順番でやるべきかを網羅した1冊。

望月重樹

税理士法人羅針盤代表社員。2002年税理士試験合格。税理士でありながら社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、MAS監査プランナーの資格を持ち、個人事業主の経営・労務管理や起業家のスタートアップをトータルでサポートしている。著書に「わかりやすい減価償却の実務処理と節税ポイント」「わかりやすい役員給与の実務処理と節税ポイント」(ともに日本実業出版社)がある。


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