徹底比較! 運用監視を自動化するオープンソースソフトウェア10製品の特徴、メリット・デメリットをひとまとめ特集:運用自動化ツールで実現する、クラウド時代の運用スタイル(2)(9/12 ページ)

» 2014年09月25日 18時00分 公開
[森元敏雄/冨永善視TIS株式会社]
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JobSchedulerのプロフィール

 JobSchedulerは独SOS(Software und Organisations)社が開発を行っているジョブ管理ソフトウェアだ。ジョブマネージャー上に登録された運用ジョブを、指定された時間や依存関係で実行・制御したり、エラーハンドリングを行ったりすることができる。ライセンスは無償利用が可能なGPLの部分と、有償のサポート契約により利用が可能となるオプション製品に分かれている。

 2003年に商用製品としてリリースされたが、2005年にOSSとして提供開始。最新バージョンは2014年7月8日リリースの1.7.4189。

特徴

 Javaで開発されており、ジョブ実行管理の画面はブラウザーからアクセスしたり制御したりすることが可能。ジョブやスケジュール、ジョブネットの生成は、WindowsまたはLinux上のGUIで動作するJavaアプリケーションで作成・編集できる。

 作成した運用ジョブの設定はRDBに格納する。対応RDBはOSSのMySQL、PostgreSQLに加え、商用RDBのOracle、Microsoft SQL Server、IBM DB2にも対応しており、幅広い製品が利用可能だ。

 製品は運用ジョブの実行制御を行う「JobScheduler」本体、各サーバーでジョブの実行を行う「Agent」、運用ジョブの編集を行う「JobScheduler Object Editor(JOE)」、ジョブの実行スケジュールや実行状況確認を行う「JobScheduler Information Dashboard(JID)」で構成。Windows、Linuxの32bit/64bit環境で動作が可能で、それぞれに対応したインストーラーが配布されている。最新バージョンはSOS社のWebサイトからもダウンロードできる。

ALT JobSchedulerの画面イメージ《クリックで拡大》

 インストールはWindows/LinuxともにCLIに加えGUIも提供されている。GUIを利用する場合は不要だが、CLIを利用してインストールする場合、事前に編集済みの設定ファイルの準備が必要となる。設定ファイルの編集が難しい場合は、GUIをインストールしたサーバーで設定ファイルを作成しておき、それを他のサーバーのインストール時に再利用することが可能だ。

 ジョブ、スケジュール、ジョブネットなどは、全てxml形式のファイルに格納される。JOEのGUIを利用して作成することもできるが、そのまま使おうとすると不必要なタグが生成される場合があり、ジョブとして登録する際にエラーになることがある。

 仕様が理解できれば非常にシンプルで分かりやすい構造であるため、SOS社で公開されているサンプルなどを見ながら、手でxmlファイルを作成する方が効率的だ。慣れてしまえば手間が少なく、ジョブやジョブネットをプログラムのソースコードを編集するように作成できるようになる。

ALT JobSchedulerの画面イメージ《クリックで拡大》

 エージェントをインストールできない製品に対して、SSHログインによってコマンドベースでジョブを実行することもできる。そのため、幅広い製品の制御が可能。エージェントからのジョブ実行でroot権限が必要な場合の注意点としては、エージェントがJobSchedulerをインストールしたユーザー側で実行されているため、sudoなどのコマンドでroot権限に昇格させる処理が必要となることだ。

 なお、サポート契約の締結により、商用UNIX(HP-UX/AIX)、および「Amazon EC2」向けのエージェントの利用が可能となる。さらに技術サポート、運用設計の評価、個別ジョブの作成支援などを(日本語サポートはないが)メールで受けることもできる。

 海外では大手企業の導入実績が非常に多いようだが、国内では導入事例も文献も少なく、これから普及が進んでいくのではないかと考えられる。JobScheduler詳細な利用方法は、TISの秋穂賢が@ITに執筆した以下の記事でまとめているので参考にしてほしい。

参考リンク:OSS「JobScheduler」で実現するこれからの運用自動化(1):JobSchedulerの機能と設定〜基礎編 (1-2)(@IT)

優位性と劣位性

優位性

  1. ジョブ管理機能は商用製品と遜色なく使用できる
  2. エージェント以外にもSSHを利用してのコマンド実行が可能であり、制御可能なアプライアンスやプラットフォームが多い
  3. ジョブ、ジョブネット、スケジュールなどの設定が全てxmlのみで生成されており、経験のある技術者なら非常に短時間でジョブの生成・変更が可能
  4. プラットフォームもWindows/Linuxを選択でき、移行するデータもxmlファイルのみであるため開発環境と本番環境のOSが異なっても移行が可能

劣位性

  1. 公式の日本語のマニュアルがなく文献も少ない(日本JobSchedulerユーザーグループにより作成されている)
  2. 国内で有償サポートを行えるベンダーがあまり多くない
  3. 設定にはプログラミングが行えるレベルの技術力が必要

利用シチュエーション

  1. OSS活用可能な技術者が運用を行える状態で、ジョブ運用基盤をOSSで構築する
  2. OSS監視製品と組み合わせて統合運用環境のコストダウンを図る
  3. 運用ジョブのテスト実行用として利用する

 製品自体は高機能であり、海外事例では大規模かつミッションクリティカルな業務に適用した事例も存在する。今後、利用者やサポートを行えるベンダーが増えることにより、国内で普及が進む可能性は高いと考えられる。

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