プロマネ初心者に送るプロジェクト管理の基礎知識まとめアジャイル時代のプロジェクトマネジメント入門(1)(2/2 ページ)

» 2014年10月23日 18時00分 公開
[石川靖株式会社Cuon]
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計画――「WBS」を作成

 「計画」フェーズで一番重要なことは、WBS(Work Breakdown Structure)を作成してスケジュールとコスト計画を立てることです。

 プロダクト・サービスの機能一覧や立ち上げフェーズの「スコープ定義書」を基に、WBSを作成します。WBSの各アクティビティ(最小のワークパッケージが望ましい)に対してリソースを配分し、当初リソースで足りなければ、パートナーや協力会社からリソースの協力を得ます。こうした「リソース計画」は「計画」フェーズで非常に大切な要素の一つといえます。

システム開発プロジェクトにおけるWBSの例(記事「プロジェクト全体の成否を左右する、スコープ」より引用)

 しかしながら、昨今はどの業界でもエンジニア不足が取り沙汰されています。「現在のプロジェクトにおいて、調達管理は品質管理の次に難しいのではないか」と個人的には考えています。

 また、品質を計るための「メトリクス」は「計画」フェーズで作成されるのが一般的であり、定性的・定量的な指標と共に定義しておきます。

 メトリクスとしては、下記などが参考になります。

実行――「チームで戦える」マネジメントを

 「計画」が完了すると、次は「実行」フェーズです。「計画」フェーズで定義したWBSに沿って、プロジェクトを推進していきます。

 ここで一番大切なのは、「チームのマネジメント」です。筆者が勤める会社でも「フルスタックエンジニア」と呼べるようなメンバーはごく一部に限られていますので、チームでの推進が非常に大切であり、「チームで戦えるか」を非常に重視しています。

 次回以降は、この「実行」フェーズでアジャイルの開発方式を取り入れた事例をお話しします。

監視・コントロール――変更に強い仕組みを作る

 「プロジェクトの難しいところは、この『監視・コントロール』フェーズにある」と筆者は考えます。「成功率を上げるのは、『監視・コントロール』フェーズに懸かっている」といってもよいです。

 プロジェクトを進めていくと、以下のように、当初、予測していなかった事態に遭遇することがよくあります。

  • ビジネス要因で、クライアントから当初予定のスコープに変更の申し出がある
  • 利用を予定していた外部サービスのAPI仕様に一部問題があり、別のサービスへの変更を余儀なくされる
  • メンバーのモチベーションから来る生産性の低下により、進捗が遅れる
  • WBSのアクティビティの優先順位の変更により、当初より早くリソースの調整が必要となる
  • 当初見積額に大幅な変更がある

 などなど、ITの開発プロジェクトでは日常茶飯事に変更が行われます。

 この変更を監視し、対応する仕組みを持つことが、このフェーズでは最重要となります。例えば、「変更管理」をコントロールする委員会の設置、それから変更管理の「チケット」を管理する仕組みでもいいでしょう。「見える化」し、クライアントとの調整を迅速に進めていくことが必要です。

 システムの一部分が再計画を余儀なくされる場合もあり、全体のコスト・進捗状況・品質を見ながらプロジェクトを推進していきます。

終結――礼に始まり礼に終わる

 紆余曲折を経て途中で終わるプロジェクトを除けば、どんなに辛いプロジェクトでも最後は終結フェーズに到達します。ここでは、正式に納品・検収の手順を経て、プロジェクトが「終結」となります。

 最後もクライアントとミーティングを行い、「KPT法」(Keep:続けていきたいこと、Problem:問題があったこと、Try:次にやりたいこと)を用いて、必ず「ふりかえり」ミーティングを実施することを心掛けています。お互いの良かったところ、悪かったところを「マインドマップ」など使って「見える化」し、後に続く「保守」や機能改修時に使える教訓を残します。

 KPT法は下記などが参考になります。

KPTによる「ふりかえり」のサイクル(「プロジェクト ファシリテーョン 実践編 ふりかえりガイド」p14から引用)

PMBOKの良いとこ取りとなる、今回のまとめを一覧表で

 ここまで、筆者が勤める会社を例に一般的なWebアプリケーション構築プロジェクトの進め方とアウトプットを紹介しました。必要最低限のドキュメントを用いた、PMBOKの良いとこ取りの内容になっているかなと思います。

 今回説明した、プロジェクトのフェーズ・大切なこと・アウトプットを一覧表にまとめました。

各フェーズでの大切なこととアウトプットのまとめ
フェーズ 大切なこと アウトプット
立ち上げ ・関係者と親睦を深めること
・プロダクト・プログラムのスコープを決めること
・プロジェクト計画書
・スコープ定義書
・ステークホルダーマネジメント計画書
計画 ・WBSを作成し、コスト・スケジュールの計画を立てること
・リソースの計画を立てること
・WBS
・リスク一覧(見える化したもの)
・リソース計画書
実行 ・チームのマネジメントを心掛けること ・成果物(ソースコード・テスト計画書など)
監視・コントロール ・変更を監視し、対応する仕組みを持ち実践すること ・変更管理表(変更の履歴が分かるもの)
・WBS更新版
・リスク一覧更新版
・リソース計画書更新版
終結 ・ふりかえりをすること ・次回につながる教訓

次回は、アジャイル開発手法について

 さて、次回はアジャイル開発手法についてお話しします。現在、筆者が勤める会社でも「アジャイルを取り入れてプロジェクトを推進したい」とクライアントの要望を受け、一部のプロジェクトでは、手法を取り入れ始めています。

 アジャイルの理想と現実や、他の開発手法と比べた場合のメリット/デメリットに関しても言及していきたいと思っておりますので、ご期待ください。

著者紹介

石川靖

株式会社Cuon 執行役員

株式会社Cuonで事業部長と営業を兼任。現場のプロジェクトマネジャーとしても活躍中。PMI認定PMP資格保有者。趣味はGolfと料理。

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