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» 2014年10月24日 01時30分 UPDATE

マイクロソフトカンファレンス2014基調講演:新生マイクロソフトは“チャレンジャー”――デジタルワークとデジタルライフをコアにビジネスを進める

日本マイクロソフトの年次イベント「The Microsoft Conference 2014」が10月23日、東京で開幕。基調講演に登壇した樋口泰行社長は「モバイルファースト」「クラウドファースト」を旗印に、サティア・ナデラ新CEOが進める“変革”の全容を紹介した。

[@IT]

デジタルワークとデジタルライフをコアに

ALT 日本マイクロソフト 代表執行役 社長 樋口泰行氏

 「モバイル、クラウドに軸足を起き、マイクロソフトが自身のカルチャーを変えていく。チャレンジャーとして危機感を持って取り組みを進めている」──樋口社長は、ナデラ新CEO下で進む変革がマイクロソフト自身を大きく変えていることをそう表現した。

 実際、新生マイクロソフトに対する顧客の期待もかつてないほど高まっている。今回のイベント規模は、2日間の登録人数が8400名超、計82セッションのセミナー、32の展示で、マイクロソフトの製品やソリューションが一挙披露される場となった。

 「新しいマイクロソフトの取り組みのコアは、デジタルワークとデジタルライフだ。B2B(Business to Business)とB2C(Business to Consumer)の両分野に関わる会社はなかなかない。企業文化とコンシューマー文化は相矛盾する領域だが、今日のビジネスには、ワークとライフに境目がなくなっている。両方にまたがって、課題を解決する会社がマイクロソフトだ」(樋口氏)

ALT マイクロソフトは、デジタルワークとデジタルライフをコアにビジネスを進めていく

 具体的な施策の一つに上げるのが、オフィススイート製品に代表される「生産性(Productivity)」に対する製品やサービスだ。ワークとライフの両方で価値を届ける会社として、「クライアントPC」「Word、Excel、PowerPointなどのオフィスアプリケーション」「データベースとサーバーのトランザクション」「インターネットとクラウド」という4分野で、プラットフォームを提供するという。

 実際、Windowsを中心としたプラットフォームはPCだけでなく、鉄道の予約発券システムや銀行のATMなどの組み込み分野、法人向けタブレット分野など、多岐にわたっている。特にタブレットは、昨年の出荷が320万台、OSシェアで26%と急成長を遂げ、アップルの46%、Androidの27%と肩を並べる規模に成長したという。

ALT Windowsタブレットは成長著しい分野の一つとなった

 樋口氏は「エコシステムの中で、Surfaceなどの2 in 1タブレットや、低価格のタブレット、4Kタブレットなど多種多様なデバイスが登場し、あらゆるニーズを満たしている。懸念されている管理性やセキュリティにも対応できる」と、Windowsをベースにしたエコシステムとプラットフォームの強みを訴えた。

モバイルファーストを実践するユーザー企業を多数紹介

ALT 4Kタブレットで気象衛星ひまわりの画像を表示するデモを行った日本マイクロソフト エバンジェリスト 西脇資哲氏

 樋口氏はこうしたモバイルとクラウドにフォーカスしたプラットフォーム提供の事例として、法人事例をいくつか紹介した。

 例えばローソンでは、コンバーチブルタイプのPCを1500台導入し、タブレットに新製品情報や店舗施策、キャンペーン情報を集約。本部とスーパーバイザー間の情報、意識の共有を図ることで、社員の生産性向上につなげたという。

 また、中外製薬では、PCとiPadを導入していたが、「2台持ち」による物理的な重さの負荷や管理コストの増加が課題だった。そこで、Windowsタブレットを導入して2台を1台にすることで、作業負荷、運用コスト、管理負荷を“半減”させたという。

ALT PCとiPadの「2台持ち」だった中外製薬は、Windowsタブレットに一本化することで、作業負荷、運用コスト、管理負荷を“半減”

 Windowsタブレットならではの事例として、三井住友銀行やTBSが利用する4Kタブレットを紹介。三井住友では窓口業務に20インチのタブレット3700台を導入し、顧客への商品説明に活用。紙と変わらない大きさで、資料を分かりやすく説明できるという。TBSでは、電子フリップとして利用。気象衛星ひまわりの画像を表示し、その画面をデジタル放送で流しても耐えられる表示品質がポイントだという。

 また、小田急電鉄のIT推進部部長である後藤真哉氏がビデオで登場し、同社の鉄道運行を支える情報共有システムを紹介した。同社では、Surfaceに電車の運行情報をリアルタイムで配信し、電車の遅延などを迅速に顧客に伝えているという。

 「異常時に、いかに迅速に情報提供ができるかが重要。乗務員はタブレットを使って遅延に関する正確な情報を知ることができ、それを乗客に迅速に伝えられる。紙ではワンテンポの遅れが出るが、タブレットはそうしたことがない。セキュリティをどう保つかも課題で独自にシステムを組むとコストが掛かる。クラウドを利用できるのがありがたい」(後藤氏)

 また、実際に会場では、エバンジェリストの西脇資哲氏が、4Kタブレット、USB接続の3Dプリンター、クレジットカードや非接触ICを利用できる決済端末などデモで紹介した。

クラウドプラットフォームが企業を変える

 クラウドファーストの成功事例も多数紹介された。製品としては、コミュニケーション基盤の「Office 365」を中心に、Excelを活用したエンドユーザー向けBI(Business Intelligence)製品「Power BI for Office 365」、CRM(Customer Relationship Management)製品の「Dynamics CRM」がある。LyncやSkype、Yammerなどのコミュニケーションツールとの連携も可能だ。

 「Office 365は5期連続で3桁成長を遂げ、日経225銘柄の70%の企業に採用されるなど、標準基盤になりつつある。Android向け、iPad向けオフィスアプリケーションの提供も開始し、オープンな環境で利用できるようにした。Dynamicsは、4万社425万人に利用されており、CRMにモバイルから情報を蓄積し、そのデータをPower BIで可視化するといった連携が可能だ。Lyncとつなげてコミュニケーションをとることで、トータルな生産性を向上させることができる」(樋口氏)

 こうしたモバイルデバイスとクラウドを連携させたプラットフォームがいかに生産性を向上させるかのデモも行われた。デモは、ある企業が出店のために敷地調査を行い、そのための資料作成を行うというシナリオ。現地を訪れた担当者が、タブレットで写真を撮影して、広さや敷地面積、商圏規模、地図などをクラウドに保存。ビデオ会議を行って、別の担当者とコミュニケーションをとり、さらに、社内SNSで提案に対する意見を募るといった使い方が可能だ。デモを行った西脇氏は、こうした作業がタブレット1台でこなせるため、生産性向上にトータルで貢献できると強調した。

 事例としては、Lync、SharePoint、Exchange、Yammerを次世代IT基盤に採用し、ダイバーシティを考慮した働き方改革を続ける伊藤忠商事をビデオで紹介。伊藤忠商事 IT企画部長の渡辺一郎氏は、「Yammerを使って部署を越えた連携を図るようにした。2014年4月からスタートした女性の働き方支援では、出産や育児を支えるコミュニティが100以上立ち上がるなど、社員のつながり、サポートが進んだ。これからはPCだけでなく、モバイル環境への対応を進めていく」と話した。

 マイクロソフト自身も「テレワークの日」を実践するなど、テレワークを積極的に進めている。10月27〜31日に26団体が連携して実施する「テレワーク推奨強化週間2014」にも積極的に参加している。

 クラウドプラットフォームの基盤となる、Windows ServerやMicrosoft Azureについても、事例が紹介された。今年から来年にかけては、2015年7月のWindows Server 2003のサポート終了が一つのテーマだが、10月末時点で残り26万台という状況だという。移行に際して、クラウド技術を活用するケースも増えており、例えば第一生命では、固定費削減と運用効率化を目的にクラウド移行を果たし、管理環境の標準化で約25%のコスト削減や従来から2分の1〜3分の1の移行期間での移行を果たしたという。

楽天もマイクロソフトのテクノロジを積極採用

ALT マイクロソフトとのパートナーシップを説明した楽天CTO、James Chen氏

 クラウド技術の活用については、ゲストスピーカーとして登壇した楽天CTO、James Chen氏のセッションが一つの山場となった。Chen氏は「楽天における製品とテクノロジのビジョン」と題し、同社がマイクロソフトと進めるパートナーシップの内容や、そこで展開されている社内システムについて解説した。

 注目のポイントは「グローバル・プロダクト・カタログ」という、楽天の社内向けサービスの統合プラットフォームともいうべきシステム。Chen氏によると、「拡張性の高いAPIとUIをフルスクラッチから構築し、グローバル化、カテゴリ化、製品マスター、柔軟な製品属性やセット対応などをサポート」したものだという。具体的には、社員や開発パートナーなどがアクセスする調達&検索の基盤をグローバルで統一したものだ。

 稼働状況としては、本番環境(プロダクション)が東アジアリージョンのデータセンターを用いており、Web VM(Webロール)3台、バックエンドVM(Workerロール)3台、1台のSQL Azure Databaseなどを月額最低500ドルから利用している。テスト環境(ステージング)も東アジアで同様の構成だ。開発環境(デベロップメント)は米国西海岸のデータセンターで、小規模なWeb VM1台、バックエンドVM1台、SQL Database 1台などを月額2800ドル(開発者当たり200ドル)で利用しているという。

 「Microsoft Azureを選んだ理由は、グローバルにクラウド環境を保有し、日本にもデータセンターを有していること。競合に比べて魅力的な価格設定であること。驚くべきスピードで新たなサービスが追加されていることの三つ。マイクロソフトは、.NET、Java、PHP、Rubyなど、さまざまなテクノロジスタックをサポートしている。これからも最強のグローバルITプラットフォームを提供してもらいたい」(Chen氏)

ALT 楽天は「グローバルでエンタープライズ」「価格」「新サービスの提供スピード」の三つの理由でMicrosoft Azureを選択

 この他、樋口氏はクラウドの事例として、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)分野で進める三菱電機とオムロンというFA機器2大メーカーとの提携、竹中工務店との協業によるビル管理システムを紹介。いずれも、Microsoft Azureをベースにしたサービスで、機械学習サービス「Microsoft Azure Machine Learning」を使って、故障予知や環境の管理ができることができることが特徴だ。

ALT 竹中工務店のビル管理システム。「Microsoft Azure Machine Learning」を活用して、故障予知や環境の管理を行うという

 また、最新技術としては、基調講演の配信でも用いられたAzure Media Serviceや、動画からリアルタイムにテキストを抽出するAzure Media Indexer、Skypeを使って自動通訳を行う「Skype Translator」のデモや、HTML5アプリ作成ツール「Sway」などを紹介した。

 2時間にわたった基調講演では、マイクロソフトのビジョンに加えて、多岐にわたる製品やソリューション、取り組みを一挙に解説。エンタープライズとコンシューマーの垣根を越えて、モバイルファースト、クラウドファーストが進んでいることを実感させるものとなった。

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