LightningはSalesforceアプリの開発プロセスを変えるのかテラスカイに聞いた

2014年10月に米セールスフォース・ドットコムが開催した「Dreamforce 2014」で発表された「Salesforce1 Lightning」。そのメリットとインパクトについて、テラスカイの佐藤秀哉氏と今岡純二氏に、会場で取材した。

» 2014年11月07日 12時07分 公開
[三木 泉@IT]

 米セールスフォース・ドットコムが、2014年10月第3週にサンフランシスコで開催した「Dreamforce 2014」における発表の1つは「Salesforce1 Lightning」。Salesforceのモバイルユーザーインターフェイス(UI)の開発を容易で高速なものにする環境だ。

 ここでは、Salesforce1 Lightning のメリットとインパクトについて、Salesforceの画面開発ツール「SkyVisualEditor」を製品に持つテラスカイの代表取締役社長である佐藤秀哉氏と、取締役ソリューション本部本部長の今岡純二氏に、Dreamforce 2014の会場で聞いた話をお伝えする。なお、テラスカイは10月7日に、米セールスフォース・ドットコムとの資本提携を発表している。

 Salesforce1 Lightningは、アプリケーションコンポーネント(「Lightning Component」)、アプリケーションコンポーネントをドラッグ&ドロップで配置することでアプリケーション作成するツール(「Lightning App Builder」)、ワークフローの構築を自動化するツール(「Lightning Process Builder」)などで構成されている。セールスフォースが提供するものとして中心となるのはLightning App Builderだ。

こうした図だけを見せられると、今すぐにでもSalesforce1 LightningがSalesforceアプリケーション開発のデフォルトプラットフォームになろうとしているような錯覚に陥ってしまう(Dreamforce 2014にて)

 Sakesforce1 Lightningは、2013年に発表されたSalesforce1をベースとしている。Salesforce1はそのものがモバイルファーストを指向していて、Visualforce、およびHTML5/CSS/JavaScriptを使ってモバイルアプリを開発できるとされている。

 だが、Salesforce1は「既存のVisualforceでつくった画面を特に意識しているわけではない」と佐藤氏はいう。「標準のオブジェクトや画面、限定された画面だけで使っている顧客が米国では多いが、それをすぐにモバイル対応できるようになった。その意味では時機を得ていた」。

 そのSalesforce1をベースとして今回発表されたSalesforce1 Lightningを、今岡氏は「Auraをラップするフレームワーク」だと表現する。AuraはJavaScript/CSSを用いるオブジェクト指向のWebアプリケーションUIフレームワークで、オープンソースで提供されている。セールスフォースはこれを、既存のVisualforceによる開発に代わるものでないものの、次世代アプリの開発に欠かせないものとして推進している。Salesforce1 Lightningでは、クライアントサイドにAura、サーバーサイドにApexを用いてアプリケーションを構成する。

Salesforce1 Lightningのメリットとは

 佐藤氏と今岡氏は、Salesforce1 Lightning のメリットとして、Salesforce1ではカバーできていなかったレスポンシブUIの構築が自動化できるようになったことを指摘する。App Builderはアプリケーションコンポーネントを配置する機能しかないが、配置しさえすればレスポンシブUIが実現され、事実上モバイル対応が実現する。

テラスカイの代表取締役社長 佐藤秀哉氏(左)と、取締役ソリューション本部本部長の今岡純二氏(右)

 「(アジャイル開発で)モバイルアプリのモックをつくるのに、開発者がレスポンシブUIに対応しながらやるのはしんどい。その意味で、コンポーネントを配置して見せるスピード感は確実に向上する」(今岡氏)。

 セールスフォースにとって、アプリケーションを容易にスマートデバイス対応できることは、他のCRM製品/サービスに対する差別化につながると、佐藤氏はいう。

アプリケーション開発プロセスは変わるのか

 「だが、Salesforce1 LightingのApp Builderは、出来上がったコンポーネントを配置するだけ。Visualforceでつくった画面を出すことはできるが、画面自体をつくる機能はない。Salesforce1 Lightningとしての機能はここまでにしておこうという意図が見える。今回もセールスフォースは、『ロジックはVisualforceで開発してください』と言っている」(佐藤氏)。結局、Salesforceアプリケーションの開発プロセスは、全体としてみればほとんど変わらないことになる。スマートデバイス対応の作業が省力化されるだけだ。

 テラスカイが提供するビジュアル画面開発ツールのSkyVisualEditorにとっても、Salesforce1 Lightingがもたらすマイナス要素はないという。むしろ、テラスカイがスマートデバイス対応のためにApp Builderのようなものを開発しようとしていたが、その手間が省けたとする。Salesforce1 Lightingとの関連でいえば、テラスカイはSkyVisualEditorを、生産性の高いコンポーネント作成ツールとして推進していけると、佐藤氏と今岡氏は話す。

 「App Builderのようなものをつくらなくてよくなり、コンテンツの自由度を高めるところに集中できるという意味で、当社としてはよかった。SkyVisualEditorも、もともとコンポーネントを幅広い開発者がつくって配置できる機能を組み込んでいる。今後は、コンポーネントをさらに多くの開発者がSkyVisualEditorでつくってくれ、App Builderで自由に配置するという流れを加速できる。開発者は今後、ユーザーのニーズに合うような、凝ったコンポーネントをつくらなければならない。そういったものを素早くつくれるツールとして、SkyVisualEditorの価値を訴えていける」(今岡氏)。

 SkyVisualEditorでつくった画面は、App Builderのコンポーネントとして使えることになる。ただし、Lightingのユーザーインターフェイスおよび操作性に合わせるための機能強化はするという。一方、2015年1月には、Visualforceでつくった画面をSkyVisualEdittorに取り込める機能を提供開始するとしている。

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