Windowsの“Enterpriseエディション限定機能”の最新情報まとめその知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(18)(1/2 ページ)

Windowsの企業向け最上位エディションには、個人ユーザーが触れる機会がないであろう企業向けの“限定”機能がいろいろと入っています。いくつかの機能は新しいWindowsで限定解除されていたりします。ちょっとまとめてみました。

» 2014年11月10日 18時00分 公開
[山市良テクニカルライター]
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連載目次

Windows 7 Enterpriseの限定機能

 WindowsのEnterpriseエディションは、ボリュームライセンスを通じて提供される企業向けWindowsの最上位エディションです。以前はWindowsのボリュームライセンスに追加する「ソフトウェアアシュアランス」(SA)の特典としてEnterpriseエディションが提供されていましたが、2014年3月1日にライセンスが変更され、SAなしでEnterpriseエディションを導入できるようになりました(*1)。

(*1)2015年2月3日追記:お詫びと訂正

 2014年3月1日より、EnterpriseエディションはSA特典としてではなく、「Windows Enterprise Upgradeライセンス」というボリュームライセンスでデバイスごと購入できるように変更されました。2014年12月1日からはユーザーごと(Per User)のライセンス購入も可能になっています。後継バージョンへのアップグレード権は、引き続きSAで提供されます。

 なお、すでに取得済みのライセンスを除き、2014年3月1日からはEnterpriseエディションはSAが対象とする唯一のエディションとなります。詳しくは、以下のサイトで確認してください。


 EnterpriseエディションはWindows Vistaから提供されていますが、Windows Vistaまでさかのぼると話がややこしくなるので、本稿ではWindows 7から始めます。Windows 7 Enterpriseは、Windows 7 ProfessionalやHomeエディションにはない、以下の企業向け機能を搭載しています。

  • AppLocker
  • BitLockerとBitLocker To Go
  • BranchCache
  • DirectAccess
  • エンタープライズ検索範囲
  • 多言語ユーザーインターフェース(MUI)
  • 仮想デスクトップインフラストラクチャ(VDI)の強化
  • VHDブート

 SA特典にはこの他、「Microsoft Desktop Optimization Pack(MDOP)for SA」のサブスクリプションを購入できるという権利もありますが、今回は省略します。

 Windows 7 Enterpriseのこれらの機能は、一部を除いてWindows 7 Ultimateでも利用できます。一部とは、VDIの強化に関連する部分になります。VDIの強化は、機能的には「RemoteFX仮想GPU」や「RemoteFX USBデバイスリダイレクト」(いずれも接続先のEnterpriseエディションを実行するVDI仮想デスクトップが提供する機能)を指し、これらの機能はWindows 7 Ultimateにも実装されています。

 VDIの強化にはこの他、「Windows Virtual Desktop Access」(VDA)という、仮想デスクトップを展開し、リモートアクセスするために必要な権利も含まれます。また、「Windows Thin PC」というWindows 7ベースのシンクライアントOSの無償提供もあります。

 これらはSA特典として提供される権利であり、SAを持たないPCについてはWindows VDAサブスクリプションを購入することで利用可能になります。この辺りの話は非常にややこしいので、本連載の過去記事も参考にしてください。

Windows 8.1 Enterpriseの限定機能

 Windows 8 EnterpriseやWindows 8.1 Enterpriseで限定機能がどうなったか、以下の「Windows 8.1エディション別機能比較」の一覧からリストアップしてみました。

 Enterpriseエディション限定機能としては、以下のようになりました。「スタート画面の制御」はWindows 8.1 Enterpriseからの機能、それ以外はWindows 8 Enterpriseからの機能になります。

  • AppLocker
  • BranchCache
  • DirectAccess
  • LOBアプリのサイドローディング
  • スタート画面の制御
  • VDIの強化
  • Windows To Go Creator

 いくつか減ったり、増えたりしていますね。先に言うと、MUIの機能はWindows 8からエディションに限定されないOSの標準機能になりました。それでは、MUI以外の変更点を詳しく見ていきましょう。

VHDブートは限定解除

 「VHDブート」(ネイティブブート仮想ハードディスク)は、物理PCにWindows Virtual PCやHyper-Vと互換性のあるVHD形式の仮想ハードディスクをマウントし、VHD内のOSイメージを使用して物理PCを起動する機能です。

 VHDブート環境は既存のOS環境を壊すことなく、マルチブート環境を簡単に作成できる上、クリーンアップも簡単なので、評価やテスト環境の構築にとても便利です。VHDブートはWindows 7およびWindows Server 2008 R2から利用可能になりました。

 Windows 7では、VHDブートはEnterpriseおよびUltimateエディションに限定されていましたが、Windows 8からはエディションに限定されず利用可能になりました(ただし、Windows RTは除く)(画面1)。

画面1 画面1 残念ながら、Windows 7 ProfessionalやHomeエディションはVHDブートに非対応

 Windows 8からはVHDに加えて、Hyper-Vの新形式であるVHDXにも対応しています。「Windows 8.1エディション別機能比較」には、Windows 8/8.1 ProおよびEnterpriseだけの機能のように書いてありますが、実際にはコンシューマー向けのWindows 8/8.1(無印)でも利用可能です(画面2)。

画面2 画面2 Windows 8/8.1(無印)でもVHDブートは利用できる

 まとめると、現在、VHD/VHDXブートは以下のバージョンおよびエディションで利用することができます(画面3)。

  • Windows Server Technical Preview
  • Windows 10 Technical Preview for Enterprise
  • Windows 10 Technical Preview
  • Windows Server 2012 R2(全てのエディション)
  • Windows Server 2012(全てのエディション)
  • Windows Server 2008 R2(全てのエディション)
  • Windows 8.1(RTを除く全てのエディション)
  • Windows 8(RTを除く全てのエディション)
  • Windows 7 Enterprise/Ultimate(VHDのみ)
  • Windows Thin PC(VHDのみ)
画面3 画面3 VHDブートはWindows 10 Technical PreviewやWindows Server Technical Previewの評価にも便利に使える

BitLockerも限定解除

 Windows 7 EnterpriseおよびUltimate限定の「BitLockerドライブ暗号化」と「BitLocker To Go」は、Windows 8からはProおよびEnterpriseで利用可能になりました。Windows 8(無印)およびWindows RTでは利用できません。

 しかしながら、BitLockerに対応していないはずのエディションを実行する最近のPCやデバイスで、「BitLocker回復キー」を要求されたという話を聞きました。

 これはWindows 8.1の新機能であり、Windows RTを含む全てのエディションに搭載された「デバイス暗号化」の機能によるものです。デバイス暗号化は、Windows 8.1 RTデバイス、および「InstantGo」(Connected Standby)に対応したWindows 8.1 PCで利用できるセキュリティ機能です。

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