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» 2015年02月16日 18時00分 UPDATE

「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(12):最低限の知識も理解もないユーザーと渡り合うには?(前編) (1/2)

「出荷管理をシステムを発注したにもかかわらず、勘定科目を把握していない」「意見を社内でまとめず、五月雨式に投げてくる」「モックを本番と勘違い」――こんなユーザー、あなたならどうする?

[ITプロセスコンサルタント 細川義洋,@IT]
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「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説

連載目次

ユーザーの責任を問うIT判例もある

 ITのユーザーは基本的には「素人」であり、ITシステムを開発・導入するプロジェクトに参加する際に必要な技術知識は、当然のことながら(ベンダーに比べて)限定的なものになる。ユーザーはCPUのクロック数のことを知らなくても構わないし、システムコンテキスト図やクラス図の見方に精通していなくとも、必要に応じてベンダーからその知識を得ていけば十分である。

 プロジェクト管理に関する知識についても同様である。システムを開発するプロジェクトにはどのようなタスクがあるのか、その中で自分たちの役割や責任がどのようなものなのかについて、ユーザーは当初さほどの知識がなくても構わない。

 もちろんプロジェクトを進めていく課程で自分たちの役割や責任をしっかりと理解し、場合によってはベンダーから提出されたものを突き返す必要もあるが、それらも基本的にはベンダー側が提示した役割・責任分担表を見ながら、「こういうことをしなければいけないのか」と認識してから、「これはどういうことか、本当に自分たちがやるべきことなのか」と疑問をぶつけながら理解し、場合によって調整するといったことでこと足りる。

 もちろん、ユーザーに技術知識やプロジェクト管理スキルが十分に備わっていれば、それに越したことはない。しかし、専門性が高く複雑なITを導入するユーザーに、そこまでを求めるのは、ある意味酷な話であり、数々のIT判例を見れば、裁判所もそうした考えの下、判決を下していることが透けて見える。

ユーザーが責任を果たさないために頓挫したプロジェクトの事例

 こうしたことを考慮してもなお、ユーザーの非が大きいとする判例もかなりある。

 「いくら素人だといっても、これはひど過ぎる」と裁判所が判断する場合だ。この連載ではベンダー側に厳しい判決を紹介することが多いが、実際にはユーザーに厳しい判決もかなり出ている。今回は、ユーザーの責任について考えてみよう。

 ただし、単にユーザーの無責任を断罪するだけでは、読者に何の知見も残せないだろう。今回紹介するようなユーザーであっても、プロジェクトを成功に導くためにベンダーには何ができるのか。読者にもいま一度考えてもらいたい。

 なお、今回の判決はユーザーの責任についていくつかの知見を含むものであることから、二回に分けて取り上げる。まずは、事件の概要からご覧いただきたい。

【事件の概要】(東京地裁 平成21年5月29日 判決より抜粋して要約)

 ある飲料製造販売業者(以下 ユーザー企業)は、あるベンダーに生産、在庫、出荷管理システムの開発を委託した。

 開発は当初、要件が細部まで固まっていなかったことなどから、順次制作、納品をするという方法で進められたが、ユーザー企業の担当者が業務に精通していない、意思疎通が取れていないなどの問題点もありプロジェクトは難航した。その結果、納入されたシステムも運用に耐えないものとなり、ユーザー企業はベンダーに対して既払金の返還、損害賠償など、合計で約3000万円の支払いを求めたが、ベンダーは、これに応じず訴訟となった。

※ この訴訟のベンダーは実際のところ元請けと下請けに分かれているが、本稿で説明する趣旨とは関連しないため、話を簡略化するために「ベンダー」と表記した。実際に支払いを求められたのは下請けのベンダーである。
※ ( )内は筆者の加筆

 序文ですでに「ユーザー側の無責任について説明する」と書いたので、裁判の結果がどのようなものであったかは想像に難くないだろう。ご推察の通り、結果はプロジェクト失敗の責任をユーザーに厳しく求めるものとなり、ベンダー側の全面勝訴と言ってよい結果となった。

 要約文中にも書いた「ユーザー企業の担当者が業務に精通していない、意思疎通が取れていないなどの問題点」を裁判所が重く見た結果である。ここで裁判所が下した判決文を元に、問題点を具体的に紹介しよう。

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