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» 2015年02月27日 18時00分 UPDATE

ものになるモノ、ならないモノ(61):個人でもOKのLINE@、達人に聞く活用の極意 (1/2)

店舗などから「友だち」に向けて1対多でメッセージを発信するためのビジネスアカウント「LINE@」が、個人にも開放されたが、どのように使いこなせば効果が上がるのだろうか? 開放早々にLINE@の利用方法にズバズバと切り込んだブログを公開した美容師、木村直人氏を直撃してみた。

[山崎潤一郎,@IT]
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 2014年2月13日、LINEは、LINE@(ラインアット)を個人に開放した。LINE@というのは、実店舗などを運営する企業向けのO2O(Online to Offline)マーケティング用のアカウントのこと。LINEでは「もうひとつのLINE」という表現を用いてプロモーションを行っている。

 通常のLINEは、主に個人対個人のメッセージのやりとりを主眼に置いたサービスなのだが、LINE@は、店舗などから「友だち」に向けて1対多でメッセージを発信するためのビジネスアカウントとして2012年11月に始まった。

 ただし、個人に開放される以前のLINE@では、サービスを利用するにはLINE側の審査を受ける必要があり、原則として実店舗を運営していることがアカウント発行の条件だった(一部、メディアや公共団体などを除く)。LINEには、「公式アカウント」と呼ばれる大企業が運営するアカウントがあるが、LINE@は、その中小企業・店舗版だと思えばよい。

 今回、そのLINE@が無料で個人にも開放されたのだ。正確に言うと、審査不要でアカウント開設が可能になった。もちろん、従来通り、中小企業や店舗などでもアカウントを開設できる。加えて、1人で複数のアカウントを作成することも可能だ。アカウントの作成は「LINE@」という専用アプリで行う。

 ただ、個人といっても一般ユーザーは、通常のLINEがあればそれで十分事足りる。ここでいう個人というのは、1対多でメッセージを一斉配信する必要を感じている「個人」だ。例えば、たくさんの顧客を持つ営業担当者、アーティスト、弁護士などの士業に携わる人といった、ビジネス上で多数のファンや顧客とつながりを維持する必要がある人だ。以後、本稿では、今回のこの個人向けのLINE@を「LINE@個人」と呼ぶことにする。

 LINEでは、LINE@個人と、従来の審査を経たアカウントを区別するために、従来のものを「認証済みアカウント」と呼んでいる。LINE@個人のアカウントを作成すると管理画面に「未承認」と表示される。これは、「認証済みアカウント」でないことを示している。

LINE@で集客しようと考えるな!

 2月13日に公開されたLINE@個人だが、その翌日に早々と「【美容師の在り方に革命をおこすかもしれん】LINE@個人がヤバすぎる。美容師は今からやるべきツール。」というブログを公開し、LINE@個人の、ビジネスツールとしてのポテンシャルの高さに着眼して、その本質的な利用方法にズバズバと切り込んだ人がいる。美容師の木村直人氏だ。

木村直人氏。全国に13店舗を展開するヘアサロン「air」「LOVEST」の発信統括マネージャー。取材中も「友だち」からの返信が「バカバカ入ってくる」

 今回の記事を書くに当たり、取材するならこの人しかいないと、麻布十番の駅から徒歩5分程度の店舗にお邪魔して話を聞いてきた。いつもはIT分野の堅めの人たちばかりを取材している筆者だけに、木村氏のブログから発せられる「突き抜けた」感覚に戸惑いつつ、「どんな人なんだろうか」と、脳内を期待と不安で満たして待合室で緊張している筆者の前に現れたのは、写真で見る通りの木村氏だった(当たり前だ)。

 LINE@の利用方法について、木村氏から出てきたのは「集客しようと考えるな」という意外な言葉だった。LINE@を一言で説明する際には「O2Oの集客ツール」という括り方をするのが一般的だけに、この言葉は予想外だった。実際、筆者も「コストをかけずにお客さまがドンドン集まる!LINE@でお店をPRする方法」(KADOKAWA中経出版刊)という本を書いている。

 理由はとても単純で、「集客しようと血眼になっている発信源に、のこのこと出向いてくるほどお客さんは甘くない」からだという。確かにそうだ。TwitterでもFacebookでも、ギラギラとした「買ってください」的なメッセージを受け取って引いてしまった経験は誰しも持っているだろう。

 それに、LINE@個人の仕組みを考えたら、これ単体では集客ツールにはなり得ないことが分かる。一般ユーザーが利用しているLINEアプリ内から、未知のLINE@個人アカウントにつながる仕組みが用意されていないのだ。LINE@個人で「友だち」を作りたければ、ブログ、他のSNS、リアルからの送客が必須だ。

 これが認証済みアカウントであれば、LINEアプリ内のキーワード検索の対象となったり、「その他」→「公式アカウント」→「LINE@」からインデックス検索、キーワード検索、位置情報による検索などを行えるので、LINEアプリから未知の「友だち」が流入してくる可能性はある。

 つまり、LINE@個人のアカウントで「友だち」を作るためには、ブログやリアルなど他の手段で、自分自身の存在を周知しなければならない。LINE@個人は、あくまでも「友だち」となってくれた顧客やファンとの間に、より強い結び付きを構築したり、リピーターとして来店を促すためのツールという位置付けを忘れてはならない。

ブログとLINE@個人はクルマの両輪のような役割

 実際、木村氏も「ブログというメインの情報発信メディアがあり、それを補う形で運用するのがLINE@個人であり、ブログとLINE@個人はクルマの両輪のような役割。『友だち』はブログから入ってくる」と明かす。実際、木村氏のブログには、TwitterやFacebookのボタンに並んで黄緑色のLINE@ボタンが設置されている。

 では、そうやって作った「友だち」に対し、LINE@を利用してどのような情報を発信しているのだろうか。「LINE@でブログの新着記事を紹介し、『友だち』からのリプ(リプライ)に目を通している。そして、そのリプを基にして新たなブログ記事を書く」というのだ。つまり、「ブログ→LINE@→ブログ」という情報のフィードバックループを構築している。木村氏は、この手法を「ゴールデン使用法」としてブログでも紹介している。

木村直人氏のサイト内にあるプロフィールページには、LINE@へ誘うボタンが設置されている。そしてブログ記事には「友だち」からのリプ内容がフィードバックされる

 ただ、似たような使用法であれば、TwitterやFacebookでも可能だと思うのだが、LINE@個人でなければならない理由はあるのだろうか。木村氏によると、LINE@個人の特徴である「『個別メッセージ』による返信が生きてくる」というのだ。

 個別メッセージについて説明しよう。例えば、「ブログを更新したよ」というメッセージを「友だち」に発信するのは、1対多の一斉配信だ。だが、LINE@の仕組みとして、「友だち」がその一斉配信されたメッセージに返信を返すと、木村氏対「友だち」という形の1対1のやりとりに移行する。

 Twitterの返信やFacebookのコメントは公開型なので、「自分の返信を他の人に見られることに抵抗を感じる人が多い」という。その点、LINE@の1対1のコミュニケーションであれば安心して返信を行える、というのだ。LINE@であれば返信は、木村氏だけが閲覧可能な返信となる。これは、今まで数々のソーシャルメディアを運営してきた木村氏の実体験からの感想だという。

 この仕組みのおかげで「友だち」は、安心して自分の意見、感想、質問などを返せるというわけだ。そのようにして得た「友だち」からの返信が次のブログ記事に生かされ、「メディアとしての質を向上させていくことができる」という。メディアの質が上がれば、訪問者も増え、LINE@個人の「友だち」も増えるという好循環が生まれる。

サポートが目的であれば、従来のLINEアプリのアカウントで十分

 木村氏は、「友だち」からの返信には、「ほぼ全部にスタンプを返している」という。「友だち」からすると木村氏からの具体的な返事はなくても、スタンプにより「見てくれた」という手応えがあるので、悪い気はしないだろう。このようにして、単に「友だち」を増やすだけでなく、既存の「友だち」との間により強い結び付きを構築することに成功している。それが結果的に、「会社(ヘアサロン)の認知度向上と集客に結び付いている」という。

 このような考え方を聞くと、木村氏が「集客しようと考えるな」と言ったことがよく理解できる。LINE@の一斉配信で、ギラギラとした営業丸出しのメッセージを配信してばかりでは、返信しようと考える人は多くはないだろう。一斉配信が単にチラシと同様の役割でしかなく、一方通行の告知に終始してしまう。それなら、わざわざLINE@を使わなくても、ホームページ、Twitter、Facebookといったツールでこと足りる。

 筆者は、LINE@個人で顧客と直につながることができるのであれば、サポートのようなこともできると考えていたのだが、木村氏は、美容師の立場でその考えを否定する。単に顧客のサポートが目的であれば、従来のLINEアプリのアカウントで十分だという。顧客と「友だち」になり、スタイルの相談や髪の悩みなどをLINEアプリで受け、「来店してください」「ご予約をお取りします」など、来店に結び付ければよいだけ、と言い切る。

 なるほど、LINE@個人は、ブログなどのソーシャルメディアでの情報発信力の高い人でないと、そのメリットを生かすことができないというわけだ。確かに、既存顧客などリアルでつながった「友だち」とだけサポート目的でメッセージをやりとりするのであれば、LINE@個人の一斉配信は不要だ。従来のLINEアプリだけでこと足りる。

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