レッドハットがDockerのリーダーシップ獲得を急ぐ理由Atomic Hostを国内提供開始

レッドハットは2015年3月19日、国内で同社のコンテナ戦略を説明し、具体的な取り組みを発表した。「Red Hat Enterprise Linux 7.1」および「Red Hat Enterprise Linux 7 Atomic Host」を提供する一方、「認定コンテナエコシステムプログラム」の提供により、国内独立系ソフトウエアベンダーによる自社アプリケーションのコンテナ化を支援していく。

» 2015年03月20日 17時23分 公開
[三木 泉@IT]

 レッドハットは2015年3月19日、国内で同社のコンテナ戦略を説明し、具体的な取り組みを発表した。新製品としては、「Red Hat Enterprise Linux 7.1(以下、RHEL 7.1)」および「Red Hat Enterprise Linux 7 Atomic Host(以下、Atomic Host)」を発表。また、新たな取り組みとして、「認定コンテナエコシステムプログラム」の提供により、国内独立系ソフトウエアベンダー(ISV)による自社アプリケーションのコンテナ化を支援していくと発表した。

 現在のレッドハットにとって、「コンテナ戦略」とは「Docker戦略」にほぼ等しい。一般企業が、Dockerを活用してコンテナ環境でアプリケーションを運用するための、包括的な環境やツールを提供することが目的だ。同社のプラットフォーム製品全般に、Docker活用を積極的に支援する機能を組み込むことで、「一般企業がDockerを使いたいなら、レッドハットのプラットフォーム製品(あるいはサービス)で環境を構築すべき」というイメージを定着させたいと考えている。

 Windowsベースの業務アプリケーションを提供しているISVに対しては、「Dockerという、今後のデファクトスタンダードとなるアプリケーション配信手段を活用して、アプリケーションのクラウドネイティブ化を進めませんか、レッドハットがお手伝いしますよ」と働き掛けることができる。こうして企業向けアプリケーションのエコシステムを作り上げられれば、同社のプラットフォーム製品を一般企業が採用する理由を、さらに増やすことができる。

 レッドハットの一貫したアプローチは、オープンソースプロジェクトで主導的な役割を果たしながら、これをエンタープライズレベルの製品・サービスとして、サポートとともに提供することにある。

LinuxやOpenStackにおけるレッドハットのやり方を、Dockerに持ち込もうとしている

 Dockerに関しても、このやり方を完全に踏襲している。レッドハットは、Dockerプロジェクトにおいて、米Dockerに次いで2番目のコントリビュータであり、Dockerコンテナのオーケストレーション機能を開発しているKubernetesプロジェクトでは、これを主導する米グーグルに次いで2番目のコントリビュータだという。同社は、Docker関連技術の開発に深く関与しながら、自社の製品・サービスで、その利用を支援していこうとしている。

 今回発表されたAtomic Hostは、Dockerコンテナ環境としての役割に特化させるべく、RHELを軽量化したもの。Kubernetesを利用することで、Dockerのオーケストレーションもできる。Atomic Hostは物理・仮想のどちらの環境でも稼働でき、アプリケーションやアプリケーションコンポーネントを、高い集約率で運用できる。特に仮想化環境では、一般的なLinux仮想マシンで複数のコンテナ化アプリケーションを動かすだけでも、集約率を高められるが、Atomic Hostの仮想マシンを採用すれば、物理サーバーのリソースをさらに効率的に活用できる。

米レッドハットのプラットフォームマーケティング担当シニアディレクター、マーク・コギン氏

 「コンテナが仮想化を駆逐するという人もいるが、仮想化はコンテナと異なるレベルのアイソレーション(分離)を可能にする。当社は、仮想化が要らなくなることはないと考えている」と、米レッドハットのプラットフォームマーケティング担当シニアディレクターであるマーク・コギン(Mark Coggin)氏は説明した。いずれにしても同社は、物理・環境の双方で、Docker活用の多様な選択肢を提供できるようになった。

 なお、Atomic Hostは、RHELのサブスクリプションに含まれる。従ってユーザー組織は、時と場合に応じてRHELとAtomic Hostを使い分けることができる。

 さらにレッドハットは、PaaS基盤製品/サービスのOpenShiftで、DockerとKubernetesに対応しながら、コンテナ化アプリケーション構築・運用に必要な機能を包括的に提供していく。また、「Red Hat CloudForms」「Red Hat Satellite」といった管理製品で、Dockerコンテナを管理対象として追加していく。Satelliteでは、コンテナ化アプリケーションの社内レジストリ(カタログ)を作成する機能も提供するという。

レッドハットは、同社のプラットフォーム製品全般をDocker対応させ、Docker活用のライフサイクルを包括的に支援する環境を提供しようとしている

Dockerコンテナ化アプリケーションのエコシステムを構築

 一方、レッドハットはISV向けのパートナープログラム「Red Hat Connect for Technology Partners」を提供開始した。

 このプログラムの参加企業は、Dockerベースのコンテナ化アプリケーションの構築と保守を容易に行えるツールとリソースを集めた「Red Hat Container Development Kit(CDK)」を利用できるという。構築されたアプリケーションは、レッドハットのプラットフォーム上での動作に関する認定を受けることができる。認定されたアプリケーションは、レッドハットが運営するコンテナレジストリ(カタログサービス)に登録され、レッドハットのコンテナ運用プラットフォーム製品を利用するユーザーが、安心して選択・利用できるようにするという。

 レッドハット日本法人は、国内に約1000社いるといわれるISVの少なくとも半数に対し、これらのISVが提供している業務アプリケーションのコンテナ化、あるいはコンポジット化の手伝いをしていくという。このため、ISV専任の部隊を作るとしている。

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