プログラマーは本当に料理が得意なのか――クックパッドで「C丼」作って検証してみた15周年のC#とVisual Studioの現在(2/3 ページ)

» 2015年04月06日 05時00分 公開
[高橋美津@IT]

C#15周年とオープンソース

庄司 C#が出てきたのって、15年も前の話になるんですね。確か、.NET Frameworkが出たあたりで一緒に登場したのでしたよね。そういえば、先日、.NETのオープンソース化が発表されて、かなりびっくりしたんですが。

高橋 はい。.NETのサーバーサイド部分に当たる「.NET Core 5」が完全なオープンソースになりました。.NETのオープンソース化の動きも含め、現在プレビュー版を公開している「Visual Studio 2015」もスゴいことになっていまして、他の特別なフレームワークを使わずに、C++を使ってAndroidアプリをそのまま書けてしまうんです。Androidエミュレーターやコンパイラーも含まれていますので、直接ビルドできるんですよ。

小室 Android向けの開発は、エミュレーターに問題があって苦労することが多いのですが、その辺りはどうなんでしょうか。

物江 Visual Studio 2015からだとHyper-Vベースで完全に仮想化されたエミュレーターが使えますから、かなり実環境に近い検証ができるものになっていると思います。

小室 今回、マイクロソフトさんとお話しする機会があったので、自分の環境でもVisual Studioのインストールを試してみましたが、とても楽でしたね。Android開発のために使うエミュレーターやコンパイラーなども、標準のインストーラー上でできてしまうのがすごいと思いました。Android開発者にとって、環境の作り方も大きく変わるんだなという印象を持ちました。

高橋 昔のマイクロソフトだと考えられないのが、最新のVisual Studioだと、Android、iOS向け開発に必要なツール、オープンソースのコンパイラーなども、全て標準のインストーラーから入れることができるようになっています。実際、ChromeやiTunesもインストールするんですよ。2014年にサティア・ナデラがCEOになって以降、ユーザーのプロダクティビティを高めるために使えるものは何でも使っていこう、コラボできるところとは、どことでもやっていこうという動きが加速していて、それは社内でも感じます。

物江 Visual Studioのインストーラーで、Apache Cordovaの開発環境を導入するんですが、iOSのエミュレーション環境として、ChromeアドオンのApache Rippleを使うんです。そのためにChromeも一緒にインストールできるようになっています。……IEをやっている立場からすると、ちょっとモヤモヤするんですが。

高橋 やっぱりモヤモヤするんだ。(笑)

庄司 インストーラーもそうですが、実際、IDEとしてのVisual Studioの完成度は、非常に高いと思います。以前、Javaをやっていたころから、EclipseをはじめとするさまざまなIDEを使ってきましたが、他と比較してもよくできている。欠点はWindowsでしか動かないことくらいで(笑)。あれでAndroid開発ができたら楽だろうなぁと思いますよ。

高橋 オープンソースコミュニティのパワーや成果物について、使える部分は製品にも積極的に取り込んでいく。逆に、.NET Coreのように、一部分はオープンソース化していく。アプリケーションについても、Mac、Android、iOSに迅速に対応するといったことが当たり前のこととして行われるようになっています。昔だと、なかなかそうはいきませんでしたから。今後、いろいろな分野の方と、一緒に何かをやれる機会が増えてくると思います。

庄司 オープンなスタンスへの変化も含め、一人のエンジニアとして最近のマイクロソフトの動きは、率直に「面白い」し「イケてる」と感じています。

高橋 ありがとうございます。最近は、昔、Windows関連の製品やテクノロジを使ってビジネスをしてくださっていた方々とも、再び情報交換をして、あらためて一緒に新しい何かができないか、考えていく動きをしています。「うちはMacだから」「Android/iOSだから」あるいは「Javaだから」関係ないと思われてしまっているのも残念ですしね。マイクロソフトは、すでにそういうフェーズの会社ではなくなっていることを知ってもらいたいと思っています。

無料WindowsとユニバーサルWindowsアプリで何が変わるか

高橋 開発環境に関しては、われわれの製品や技術を開発者の方に使ってもらえる機会が最近増えてきています。後は、デバイスですね。以前と比べて、ここ1、2年でWindowsタブレットも低価格なものが多く市場に出回るようになってきました。

田中 米国に出張した同僚が、米国で75ドルの7インチWindowsタブレットを買ってきましたよ。

庄司 75ドル! それは安いですね。

高橋 「China Technology Ecosystem」(CTE)と呼んでいるんですが、今、中国のOEMメーカーにARMのチップを乗せたタブレットを発注すると、同じハードウエアで、最終的にOSをAndroidにするか、Windowsにするかを決められるんです。マイクロソフト側でWindowsタブレットのレギュレーションを変えて「Windowsボタン」がなくても認定する形にしたため、Androidタブレットの生産ラインをそのまま使って、Windowsタブレットも作ることができるようになりました。製品価格が下がっている大きな要因の一つです。

物江 OEMライセンスの形態も変わりました。9インチ以下のタブレットであれば、現在Windowsライセンスは無料です。これも大きいと思います。つまり「Windows Phone」についても、これまで作っていたAndroid版と同じハードウエアに、無料のOSを乗せて作れるケースが出てくるということです。すでに、そうした端末も出てきています。ここ半年から1年にかけて、さらに多数のWindows Phoneが登場してくるはずです。

田中 デバイスに関していうと、開発者にとっては「ユニバーサルWindowsアプリ」という仕組みが、Windows 8.1で導入されたのが大きなトピックですね。ユニバーサルWindowsアプリを作ると、PC、タブレット、スマートフォンの全てのデバイスに対してワンバイナリで対応できるようになります。

庄司 それはスゴイ環境ですね。PCに限れば、一般の人の大半はWindowsを利用しているというのが現実でしょう。そういう人が今後スマホを買おうと思った場合、同じOSが動いていて、操作感が同じであれば、それがWindowsスマホを選択する大きな理由になるだろうと思います。

物江 あと、開発者とユーザーの双方にとってのメリットの一つは、ハードウエアの違いによってOSのフラグメントが起きないという点ですね。搭載するハードウエアを事前にある程度規定していて、Windows Phoneであっても、Windows PCと同様にアップデートが可能です。自分の買ったスマホが次のOSバージョンアップに対応するかどうか、心配しなければならないケースはほとんどないでしょう。

庄司 互換性に関するマイクロソフトさんの根性というか、底力には毎度感心します。例えば、いまだに動かそうと思えばDOS時代のアプリが動くとか、リボンUIのOfficeでも以前のショートカットが使えるとか。技術者の立場としては、あまりその辺りは触りたくないというか(笑)、辛そうだなぁと思うのですが、ユーザーの資産を守ろうとする姿勢の表れだと考えれば素晴らしいと思います。

物江 マイクロソフトはエンタープライズ向けのビジネスをやっている点が大きいですね。エンタープライズシステムって、本当に何年もかかって作るものですから、やっとできたというときに「OSのバージョンが変わったので動きません」では済まされないんですね。

高橋 Windowsも含め、Mac、iOS、Androidといった多様なプラットフォームがそれぞれにせめぎあっているというのは、エンジニアにとって面白い状況だと思います。マイクロソフトとしても、エンジニアの皆さんにとって面白く、イケてると思ってもらえるような情報や技術を、今後も次々と出していきますので期待してください。

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