「QA@IT」ナンバーワン回答者 flied_onionさんに聞く「なぜ私は、無償で質問に答え続けるのか」一つの回答に数時間かけることもある(1/2 ページ)

@ITが運営する問題解決コミュニティ「QA@IT」には、日々さまざまな質問が投稿されている。レベルもジャンルもさまざまなこれらの質問に、丁寧で分かりやすい回答を付けてくれることで、コミュニティ内外のエンジニアから注目されているのが「flied_onion」さんだ。「空飛ぶタマネギ」はどんな人物で、どんな思いで回答しているのか。編集部がお話を伺った。

» 2015年05月21日 05時00分 公開

 2012年5月29日にサービスを開始した、ITエンジニアのための問題解決コミュニティ「QA@IT(キューエーアットマークアイティ)」は、ITエンジニアが日々遭遇する課題やトラブルを質疑応答形式で解決&共有するサイトとして、たくさんの質問と回答を蓄積してきた。中でも、レベル4000超という圧倒的な数字でサイト内ランキングトップを独走するのが「flied_onion」こと、北原隆博さんだ。

 北原さんは、システム開発会社に勤め、認定スクラムマスター/認定スクラムプロダクトオーナーの資格を取得するアプリケーションエンジニア。「QA@ITは、自分に足りないスキルや経験の幅を広げてくれる貴重な存在」と語る北原さんに、QA@ITとの出会いや普段の使い方、仕事への生かし方などを語っていただいた。

QAサイトを利用してスキルアップ!

flied_onion」こと、北原隆博さん 編集部の質問に対しても、分かりやすく丁寧に答えてくれる姿が印象的だった

 QA@ITにユーザー登録して、質問に対する回答を始めたのは2013年3月です。それからほぼ毎日サイトを訪れ、日課をこなすように回答を続けてきました。Google Chromeなどのブラウザーでは、よく訪れるサイトが順番にホーム画面に表示されますよね。ずっとそのトップに居続けているのがQA@ITなんです。

 QA@ITを使い始めた大きな理由は、自分に足りないスキルを得たり、経験の幅を広げたりしたいという気持ちです。スキルや経験を得るためには、まずは自分の考えを伝えることが大切で、そのために自分の活動をブログやCMS、SNSなどで公開すればいいとよく言われます。例えば、Joel Spolsky(ジョエル・スポルスキー)氏のブログ「Joel on Software」の「コンピューターサイエンスの学生へのアドバイス」というポストには、こんな一節があります。

どんな分野でもいいから、毎週、あるいは毎日文章を書く宿題を出す授業を見つけることだ。日記やWebログをつけ始めるといい。書けば書くほど、書くのは楽になる。そして書くのが楽になれば、もっとたくさん書くようになるという、プラスのサイクルができる

出典:Joel on Software「コンピューターサイエンスの学生へのアドバイス(Advice for Computer Science College Students)」

 スポルスキー氏は、QAサイトの「Stack Overflow」を作った人で、いろいろと影響を受けました。書くこともその一つで、自分でもブログや日記を書き始めてみました。でも、長続きしませんでした。そんなとき、「QAサイトだったら続けられるのではないか」と思ったのです。「質問に答える」という形ならば、書くネタに悩む必要はなく、自然に続けられるはずだと。

 実際に始めてみると、与えられた課題に答えるように無理なく続けられると分かりました。質問に答えることで足りない知識やスキルを整理できますし、足りない部分を調べることで新しい知識やスキルを得ることにもつながります。

 書いたり説明したりする技術は、仕事でも求められます。他人の経験は、たとえ悪いものであっても、バッドノウハウとして仕事に生かせます。QAサイトのそうしたメリットをうまく利用して、自身のスキルアップにつなげてきたという感じです。

大切なのは「相手の状況に合わせた代替案のアドバイス」

「スポルスキー氏のブログには、いろいろと影響を受けました」

 基本的には、質問はせずに回答専門です。回答に費やす時間は1日数時間。昼休みや通勤時にスマートフォンでチェックして、できるものはその場で回答しています。その場では調べ切れないものや自分で試す必要のあるものは自宅に帰ってから。ただ、自宅は誘惑も多いのでそれを避けながらですが。

 私は文章を書くのが苦手で、スピードも遅い方です。1つの回答を書くのに2時間ぐらいかかることもあります。うまく伝えようと書いては消してを繰り返し、休日のほとんどをQA@ITの更新に割いたこともあります。

 質問を選ぶときは、自分が答えられる質問かどうか、質問に答えることで新しいスキルが得られるかどうかで判断することが多いです。すでに他の誰かが回答していて補足する必要がないと思ったら、無理に回答はしません。

 回答するときに心掛けているのは、「相手の状況を踏まえてアドバイスすること」です。回答をしていると、相手の状況が分からなくて、自分の都合の良いような回答をしてしまうことがままあります。それがきっかけで言い争いに発展してしまうと、お互いに気分を害することになります。

 相手の状況に合わせてアドバイスできれば、お互いが何を知り何を知らないのかが分かり、問題解決がスムーズに進みます。これらはサーバントリーダーとも言われるスクラムマスターにも必要なマインドです。

 質問によっては、OSのセットアップから始めて、質問者と同じような環境をそろえて、現象が再現するか確認することもあります。そういう意味では、最初に、どのような環境でどんなことをどんな手順で行ったかが書いてあれば、再現性を確認しやすいので、回答が付きやすくなると思います。逆に、情報の後出しはやめてほしいなと思います。

 始めから詳細に全ての情報を書くことを強制するつもりはないのですが、後出しで情報が出てくると、回答する方の手間も増えます。もちろん、何が分からないかが分からないというケースもあります。その場合は「何が原因で困っていて」「何を解決したいのか」の2点を明確にしてくれれば、回答しやすいと思います。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。