特集
» 2015年05月26日 05時00分 公開

Tableauから見たデータ分析の世界:現場主義のBI、語るだけでなく実践に結び付けるには

セルフサービスBIツールが目指す、現場主義のBIとはどのようなものか。「誰もがデータ分析ができる」というのはどういうことなのか。近年、ユーザーの支持を集めているTableauの視点から、これを根本に立ち戻って紹介します。

[並木 正之,Tableau Japan]

 @ITの特集「セルフサービスBIをめぐるA to Z」で「セルフサービスBI」と定義しているツールは、従来型のBIツールとは目指している世界が根本的に違います。何がどう違うのかを説明する前に、「そもそもBI(Business Intelligence)とは何か」という話から始めてみましょう。

 「Business Intelligence」という言葉について調べてみると、実はIT用語でも何でもないということが分かります。その語源は古く1865年頃の書物の中に出てきますが、もともとは情報をビジネスに役立てるといった意味で使用されていたようです。では情報、つまりデータを役立つものにするためは、いったい何が必要なのでしょうか。

 例えばここに、パッと見ただけでは何のことだか分からないデータがあったとします。それは星の観測データですが、素人目にはただの数字の羅列にしか見えません。しかし、ある人がそのデータを毎日眺めていると、そこから星と星の距離を測る方法が分かったというのです。それは、天文台でデータ整理の仕事をしていて、後に天文学者になったヘンリエッタ・スワン・リービット(Henrietta Swan Leavitt)という女性です。今から一世紀以上前の話ですから、データを役立つものに変えたのは、もちろんITではありません。ではいったい何か。人間の持っているひらめきや感覚。この例ではリービットさんが持っていた知識や経験に基づく、気付きでした。

 では、このようなひらめきや感覚を呼び起こすためには、どうすればいいのでしょうか? 一昨年に開催された「Tableau Customer Conference 2013」で、Tableau SoftwareのCEOであるクリスチャン・シャボー(Christian Chabot)が、ちょっと面白い話をしました。いわく「偉大な発見者はジャズアーティストのように、直観とロジックを掛け合わせている」というのです。そして発見者が持っているものとしてFeel、Chase、Shift、Relateという4つのキーワードを挙げました。Feelは直感、Chaseは物事を突き詰めること、Shiftは物事の見方を変えること、Relateは物事のつながりや関連性です。

 確かに過去の偉人たちの発見からも、このキーワードが浮かび上がってきます。偶然の産物だった青カビの研究を突き詰めて、ペニシリンを発見したアレクサンダー・フレミング(Alexander Fleming)氏や、データの見方を変えることで元素周期表の元となる法則を見つけたドミトリ・メンデレーエフ(Dmitrij Ivanovich Mendelejev)氏、異なる場所で発見された化石の関連性を疑って進化論に行き着いたチャールズ・ダーウィン(Charles Darwin)氏など、歴史上の偉人たちは皆、Feel、Chase、Shift、Relateを経て、データからさまざまな役立つものを創造してきました。ひらめきというのは何も特別なものではなく、人間が誰しも持っているものです。そしてそれを呼び起こすためのFeel、Chase、Shift、Relateを助けることこそ、ITの役割だと考えます。

ITの役割は、人間が本来持つ力を増幅させること

 ここであらためて、ITの役割とは何かを考えてみたいと思います。アップルのスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏の古い動画の中に、彼が「Computers are like a bicycle for our minds.」という話をしているものがあります。「自転車という道具を使うことで、人間は最も省エネルギーなコンドルよりも、さらに効率的に長距離を移動できるようになった。コンピュータも同じで、人間の考える力を増幅させる自転車のようなものだ」ということを言っているのですが、この言葉はまさにITの役割について、端的に言い表していると思います。

 実際に彼は、手の中でスーパーコンピューターが扱える時代を作ってしまいました。iPhoneやiPadのようなツールによってぐっと身近になったITの力を使うことで、今や誰もが持てる創造力を発揮できる世の中になりつつあります。ITによって場所や時間を超えた雇用機会が創出され、教育機会の拡大や流通の飛躍的な拡大が起こりました。さらに、研究者が研究の速度を速めたり、フィールドを広めたりすることができるようになりました。ツールがITの力をより使いやすいものにし、そのおかげで今私たちの生活はより豊かなものになっています。

 データ分析でも同じで、誰もがITの力を使って、持てる創造力を発揮できるようになるべきです。データをビジネスや公共機関、教育の現場など様々な場所でもっと役立てられるようにすべきです。そのためにITの力をより身近に、使いやすいものにしようということを目指して生み出されてきたのが「セルフサービスBIツール」です。ビジネスマンがiPhoneやiPadのようなツールを自ら進んで使うことと全く同じように、ビジネスに活用できるツールです。Tableauも、これを目指して開発されてきました。

CGのように創造性を引き出すBIツールが必要

 Tableauを例に、こうしたソフトウエアがどのような経緯で生まれてきたかを、簡潔に紹介します。

 従来のBIツールは、旧来からの業務システムの上に開発されているため、専門家でないと扱えないものが多く、経営幹部や管理職がシステム担当者の手を介して利用するようなものでした。Tableauの場合は、こうした従来型のBIツールとは根本的に違っています。そのことはTableauの成り立ちを見ても明らかです。

 Tableauは、スタンフォード大学コンピュータサイエンス学部の研究から生まれたソフトウエアです。Tableau Softwareの創設メンバーの一人で同大学のパット・ハンラハン(Pat Hanrahan)教授は、実はコンピューターグラフィックスの大家として有名な人物。ピクサー・アニメーション・スタジオが開発した、コンピューターグラフィックスのレンダリング用ソフトウエア技術「RenderMan」の中心的な開発メンバーで、これまでにアカデミー賞を3度受賞しています。

 ハンラハン教授のチームは、コンピューターグラフィックスが、クリエイターの創造力をITの力で増幅させたように、Tableauによって人間が持っているひらめきや感覚を増幅させたいと考えました。そのためにやったことは実は単純で、要は数字の羅列だったデータを可視化して、パッと見て分かるものにしたのです。コンピューターグラフィックスと同じようにデータをモデリングしてビジュアライズ(視覚化)し、それをドラッグ&ドロップで簡単に操作できるようにしました。そうすることで、情報を直感的に捉えられる(Feel)だけでなく、より深く掘り下げたり(Chase)、視点を変えたり(Shift)、あるいは関連性を見つけたり(Relate)することが容易になると考えたのです。

 「データをモデリングしてビジュアライズする」と一言で言っても、その仕組みは、本当はかなり複雑です。しかしこれまで述べたように、人が創造力を最大限に発揮するためには、データを扱うために必要な複雑な仕組みを全てソフトウエアの裏側に隠し、データを見るための準備、登録や整理も、極力、簡略化することが必要です。見たいデータをすぐに開いて、簡単に見えるカタチに変えることができ、その瞬間から思考が始められる。iPhoneがボ タン一つに至るまで考え抜かれてデザインされているのと同じように、セルフサービスBIもまた「ITが人の思考の流れを妨げないこと」がポイントとなります。Tableauの場合も、その点を重視して開発したのです。

データを視覚化し、他人と共有できる仕組みの実現

 単なるデータ分析ツールや、データを可視化するだけのツールでは不十分です。そこから得た気付きや、分かった事柄をさらに他の人にも効果的に伝えるというところまで、できなければなりません。例えば、人に何かを伝えるときに、絵を描いて説明することがありますが、データも絵と同じで、可視化することでより正確に情報を相手に伝えられます。正しい情報を共有できれば、組織としてより正しい判断を下すことも可能になります。共通認識の下にディスカッションすれば、一人では得られないような気づきや改善につなげることもできるでしょう。

 以前、某コンビニエンスストアチェーンの事例集で読んだのですが、ある店舗の店長が地域の祭りに合わせて店頭にドリンクを並べたら、それがよく売れたそうです。店長は祭りがあるとドリンクが売れることを感覚的に知っていた。その売り上げを見たコンビニエンスストアチェーンでは、各店舗が祭りの日程などを書き込み、共有できるカレンダーツールを設けることにしたそうです。ただしこの例のように、現場が日々の知識や経験から得た感覚を上層部に伝え、それを業務の改善に結び付けるのは、そう簡単ではありません。一方で、もしこの店長が「祭りでドリンクが売れる」という、自分の感覚を裏付けるデータを視覚化することができ、その共通情報を元に本部スタッフとディスカッションすることができれば、事はもっとスムーズに運ぶはずです。「現場の力を分析で生かすためには、まさにこうした現場のプロフェッショナルが自らデータを自在に操り、それを元にコミュニケーションして、創造性を存分に発揮する環境が大切なのです。Tableauが目指しているのもそうした環境の実現です。

 「今はビッグデータの時代だから、データサイエンティストのような専門家が必要だ」と声高に言われています。実際にデータサイエンティストの研究が果たす役割はもちろん重要ですが、専門家でない人々にこそ、使いやすいツールが必要です。自転車と同じように、漕ぐ方法さえ分かれば誰もが乗りこなせるようなツールです。そのためには、視覚化のためのプロセスが全て自動化されていて、どうグラフにするかといったことを考えなくても、欲しい情報がパッと見て分かる形で得られなければなりません。次回はTableauを例に、こうした可視化のプロセスによる分析の要件について、詳しく紹介します。

特集「セルフサービスBIをめぐるA to Z

 「セルフサービスBI(セルフBI)」とも呼ばれる動き、そしてこれに関連する製品・サービスが急速に広がりつつある。一言でいえば、ビジネスを直接生み出す、あるいは直接支える人々が、データを自ら活用し、より迅速で的確な判断をすることを目指す活動だ。

 本特集では、セルフサービスBIで具体的に何ができるのか、どうやればいいのか、社内の役割分担はどうすればいいのか、セルフサービスBIツールをどう補うのが効果的なのか、といった、従来のBIとは異なるセルフサービスBIならではの課題と解決策をお伝えする。



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