複数のルーティング手法とルーティングプロトコルの比較CCENT/CCNA 試験対策 2015年版(15)

シスコシステムズの認定資格「CCENT/CCNA」のポイントを学ぶシリーズ。今回は「ルーティング」と「ルーティングプロトコル」について学習します。

» 2015年05月28日 05時00分 公開
CCENT/CCNA 試験対策 2015年版

連載目次

 ネットワーク初心者がCCENT/CCNAを受験するために必要な知識を学ぶ本連載。今回の学習テーマは、シスコシステムズが発表しているCCENT試験内容の4.6「複数のルーティング手法とルーティングプロトコルの比較」です。

ルーティングとルーティングプロトコル

 「ルーティング」とは、ユーザーデータを宛先ネットワークへ届けるためにルールに従って最適な経路(ルート)を選ぶことです。東京の日本橋から京都までの移動に、東海道を使うか、中山道を使うか決めることと同じです。

 経路選択をするための仕組みのことを「ルーティングプロトコル」と呼びます。

ルーティングプロトコルの分類

 次に、ルーティングプロトコルの各項目を説明します。

静的ルーティング

 「静的ルーティング」は、ネットワーク管理者が手動で経路情報を設定することです。ルーターが経路情報を計算する必要がないため、ルーターのリソース(CPUやメモリなどの資源)を動的ルーティングに比べて消費しません。しかし、設定された経路が途中で切断された場合には、ユーザーデータを宛先に届けられなくなります。

静的ルート

 「静的ルート」は、静的ルーティングにより設定された経路情報のことです。「スタティックルート」とも呼びます。

  • デフォルトルート

 静的ルートは宛先ネットワークを個別に設定します。「デフォルトルート」は、全てのネットワークに対する経路情報を一括で設定するときに使用します。

動的ルーティング

 「動的ルーティング」は、ルーターが一定のルールに基づいて、最適な経路を算出する仕組みです。最適な経路を計算するため、ルーターのリソースを絶えず使用します。静的ルーティングとは異なり、最適経路が途中で切断されても、自動で代替経路を算出できます。

ディスタンスベクター

 「ディスタンスベクター」は、ディスタンス(距離)とベクトル(方向)に基づいて、最適経路を算出する方式です。ルーティングプロトコルにおけるディスタンスの代表は、「ホップ数(ルーターを通過した回数)」です。ホップ数が多いほど遠いネットワークであると判断します。

  • RIP:Routing Information Protocol

 「RIP」はホップ数の大小により最適経路を算出するプロトコルです。同じ宛先ネットワークに対してホップ数が3と10の経路があったら、ホップ数3の経路を最適経路と判断します。RIPには、次のような特徴もあります。

  • 大規模ネットワークにはRIPは適さない(ホップ数は最大15のため)
  • 30秒間隔での定期的なアップデートを行う
  • 帯域幅の小さい経路(遅い経路)でもホップ数が小さいと最適経路として選んでしまう欠点がある

  • EIGRP:Enhanced IGRP(Interior Gateway Routing Protocol)

 「EIGRP」は、シスコシステムズ独自の「IGRP」の拡張版です。次のような特徴があります。

  • 帯域幅、信頼性、遅延、負荷、MTUをメトリック計算に使用する
  • デフォルトでは帯域幅、遅延のみを計算に使用する
  • 拡張ディスタンスベクター型 ホップ数100(最大255)
  • 最適経路を「サクセサー」、二番目の最適経路を「フィジブルサクセサー」と呼ぶ

リンクステート

 「リンクステート」は、リンク(回線)のステート(状態)に基づいて最適経路を算出するルーティングプロトコルです。ホップ数が多い経路でも、帯域幅が広い回線を最適経路として算出します。

  • OSPF:Open Shortest Path First

 「OSPF」は、リンクステート型のルーティングプロトコルです。帯域幅を基にコストを算出し、最低コストを最適経路とします。

  • 100Mbps(Mビット/秒)÷帯域幅=コスト
  • 高速回線ほど低コスト
  • ネットワーク構成(トポロジ)を把握する
  • トポロジを把握するアルゴリズムのためにCPUやメモリへの負荷が高い

 下の図は、ディスタンスベクターとリンクステートの最適経路の算出方法です。

ルーティングプロトコルごとの最適経路

AD値

 最後に「AD値」(アドミニストレーティブディスタンス値)についても説明しておきましょう。AD値は経路情報の信頼度を表す数値で、値が小さいものほど信頼度が高くなります。同じ宛先への経路情報について、例えば静的ルートとRIPで得られた場合、静的ルートを優先して使用します。直接接続が最優先、静的ルートがその次、EIGRP、OSPF、RIPの順に、AD値の小さいものから選択されます。表中の赤字のものが特に重要です。

アドミニストレーティブディスタンス値

演習問題

Q1. アドミニストレーティブディスタンス値の項目のうち、シスコシステムズが策定したルーティングプロトコルはどれか(2つ選択せよ)。


A1. 「EIGRP」および「IGRP」です。


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Q2. アドミニストレーティブディスタンス値の項目の、「外部BGP」「内部BGP」は「BGP」というルーティングプロトコルが算出した経路情報である。BGPとその他のルーティングプロトコルの違いを「IGP」「EGP」の語句を使って説明せよ。


A2. IGP(Interior Gateway Protocol)はEIGRP、IGRP、IS-IS、OSPFおよびRIPです。EGP(Exterior Gateway Protocol)はBGPのみ。AS内部で動作するIGPs(複数形のs)に対し、EGPはAS間で動作するルーティングプロトコルです。


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Q3. 「ルーティングループ」とはどのような状態を指すのか。


A3. 経路情報の算出が終了していないときに、誤った経路情報によりユーザーデータをルーターが転送しても、送信したルーターに戻ってきてしまう状態です。


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 次回は、4.4「ping、traceroute、telnet、SSH、show cdp neighborsの各コマンドを使用したルーターの設定とネットワーク接続の確認の範囲」を説明します。

「CCENT/CCNA 試験対策 2014年版」バックナンバー

筆者プロフィール 齋藤貴幸

齋藤貴幸(さいとうたかゆき)

ドヴァ ICTソリューション統轄本部 デベロップメント&オペレーショングループ 2部

情報系専門学校の教員を12年勤めた後に同社へ入社、エンジニアへ転向。沖縄県と首都圏を中心にネットワーク構築業務に携わる。また、シスコ・ネットワーキングアカデミー認定インストラクタートレーナーとして、アカデミー参加校のインストラクターを指導している。炭水化物をこよなく愛する男。


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