情シスはビッグデータやUIプロトタイピングをどのように生かせばビジネス拡大に寄与できるのか特集:Biz.REVO〜開発現場よ、ビジネス視点を取り戻せ〜(番外編)(2/2 ページ)

» 2015年07月30日 05時00分 公開
[吉村哲樹@IT]
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クラウド・モバイル時代の「攻めのIT」実現に適した開発・運用基盤と「UIプロトタイピング開発」

 オープンストリーム プロダクト事業部 事業企画部 小泉裕司氏からは、「スマートデバイス活用を業務改革の推進エンジンに!〜システムイニシアティブを実現する最適解とは〜」と題した講演で、同社の業務システム用プラットフォーム製品「Biz/Browser」とその活用事例の紹介が行われた。

 同氏はまず、近年のエンタープライズITを取り巻く大きなトレンドとして、「クラウドファースト」と「デバイスの多様化」の2つを挙げる。

スマートデバイスやクラウドの普及がもたらすもの(小泉氏の講演資料より)

 「自社の業務システムを、プライベートクラウドもしくはパブリッククラウドに置く“クラウドファースト”の考え方が、今や常識になりつつある。またスマートフォンやタブレットといったスマートデバイスの導入も進んでいるが、特に顕著な傾向として“利用端末の多様化”が挙げられる。Android端末やiOSデバイス、Windowsタブレット、専用ハンディターミナルと、それぞれの特徴や強みを生かした使い分けが今後は重要になってくる」

 また「守りのIT」から「攻めのIT」への投資シフトも進みつつあるという。各種の調査結果を見ても、多くの企業が「売り上げ増大」や「顧客サービスの向上」などに直接寄与するITへの投資を重要視していることがうかがえる。これはすなわち、従来のようなバックオフィス業務の効率化を目的としたITから、企業の競争力に直結するフロントエンドのコア業務を担うITへと投資の重点が移りつつあることを意味する。

アプリケーション実現方式のマッピング(小泉氏の講演資料より)

 こうしたシステムの開発に有用なのが、同社が開発・提供するBiz/Browserなのだという。Biz/Browserは、ひと言で言うと「業務システム向けのUI開発・実行プラットフォーム」。一般的なWebシステムは、どうしてもブラウザーやOSの種類・バージョンに依存せざるを得ず、UIの使い勝手にも限界がある。こうした制約を取り払い、かつ「Webシステムならではの優れたメンテナンス性のメリットも享受できないか」と開発されたのが、「業務システム用途に特化したブラウザー」であるBiz/Browserだ。

 業務システムに適したUIを迅速に構築できる仕組みを備える他、OSやプラットフォームの違いをBiz/Browserが吸収することにより、Webアプリケーションのライフサイクルを大幅に伸ばすことができる。また開発スタイルも独特で、「Biz/Designer」と呼ばれる開発環境上で専用の開発言語「CRS」を使ってプログラムを記述することで、異なるデバイスやOS、ブラウザー上で動作するアプリケーションを同一のソースから生成できる。「この仕組みは、多様なデバイスに対応する必要がある昨今のアプリケーション開発においては、大きな強みになる」と小泉氏は指摘する。

オープンストリーム プロダクト事業部 事業企画部 小泉裕司氏

 「Biz/BrowserがデバイスやOSの違いを隠蔽(いんぺい)してくれるため、異なるデバイス・OSごとの個別開発が不要になる。Biz/Designerがもともと持つ高い開発生産性も相まって、短期間かつ柔軟な開発が可能になる。企業の競争力の源泉となりイノベーションを生むシステムは、短期間のうちに立ち上げ、かつビジネス環境の変化に応じて柔軟に変更できることが重要。その意味では、Biz/Browserはこうしたシステムの開発には最適だ」

 また、Biz/Browser独自の開発手法「UIプロトタイピング開発」を併せて適用することで、より一層迅速かつ柔軟な開発が可能になるという。Biz/Designerの機能を使ってシステムのUIプロトタイプを早期に開発し、業務イメージを見える化することによって、ステークホルダー間での合意形成がスムーズに運び、迅速かつ手戻りの少ないシステム開発が可能になるという。

UIプロトタイピング開発による業務改革(小泉氏の講演資料より)

 ちなみに、Biz/Browserは国内ですでに1400社超の導入実績を持ち、多くの企業がそのユニークな機能を生かしたシステム開発で成果を上げている。例えば三菱重工業では、生産現場における「見える化」「ペーパレス化」を目的にスマートデバイスを導入、そのアプリケーション開発・運用環境としてBiz/Browserを採用した。結果、生産現場から日々上がってくる改善要望を迅速にアプリケーションに反映できるようになり、現場でのアプリケーション活用が促進されたという。

 またリコーグループの物流業務を担うリコーロジスティクスでは、運送ドライバーが携帯するPDA端末のアプリケーションや、一般顧客向け倉庫管理システム、社内向け倉庫管理システムなど複数のシステムの開発・運用基盤としてBiz/Browserを長らく利用している。現在、同社情報システム部門における開発業務の多くがBiz/Browserを使って行われているが、その開発要員はオープンストリームのトレーニング受講も含め、わずか1カ月間程で一通りの開発スキルを身に付けることができたという。現在では同社独自の「CRS開発基準」も定義されており、日々Biz/Browserを使った開発・改修作業を大々的に進めているという。

 小泉氏は、最後に講演を次のように締めくくった。

 「企業の情報システム部門は従来、人間系業務のIT化や、法制度・組織変更への対応、あるいは既存システムの継続利用や拡張開発といったような、既存の事業活動を守るための活動が多かったかもしれない。確かに、こうした『現状維持の活動』は、最低限の予算は確実に確保でき、かつ情報システム部門の『自己満足的』なシステム構築に終始できる。しかし本来であれば、IT技術やビジネス環境の変化を逃さず事業部門の変革を迅速にサポートしたり、情報システム部門の自己満足ではなく事業部門が求める『真のニーズ』に対応したりすることこそが真のミッションであるはず。本日お集まりいただいた皆さまには、ご自身が所属する企業において、そのような情報システム部門の変革をぜひリードしていっていただきたい」


 今回は、「開発現場よ、ビジネス視点を取り戻せ」という特集のテーマについて、いつもの開発者向けのものではなく、情報システム部門向けのものとなったが、いかがだっただろうか。ビッグデータを用いた要求開発や、UIプロトタイピングについては、開発者にとっても有用な点が少なくなかったのではないかと思う。特に、情報システム部門が事業部門に対して行う要求開発は、開発者が直接事業部門とやりとりするケースでも生かせるので、ぜひ参考にしてみてはいかがだろうか。

関連特集:Biz.REVO−Business Revolution〜開発現場よ、ビジネス視点を取り戻せ〜

市場環境変化が速い近年、ニーズの変化に迅速・柔軟に応えることが求められている。特に、ほとんどのビジネスをITが支えている今、変化に応じていかに早くシステムを業務に最適化させるかが、大きな鍵を握っている。では自社の業務プロセスに最適なシステムを迅速に作るためにはどうすれば良いのか?――ユーザー企業やSIerの肉声から、変化に応じて「ITをサービスとして提供できる」「経営に寄与する」開発スタイルを探る。



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