Windows 10でデスクトップアプリはどう変わるか ― 第8回 業開中心会議連載:業開中心会議議事録(3/3 ページ)

» 2015年07月31日 05時00分 公開
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パネルディスカッション『Windows 10で業務アプリの形はどう変わるのか(変わらないのか)』

 本会議の最後には、上述の二つのセッションを受けて「UWPという新しいプラットフォームが登場したことで、業務アプリはどう変わるのか、それとも変わらないのか」について検討した。ディスカッションの登壇者は以下の通り。

  • 田中達彦氏(日本マイクロソフト)
  • 山本康彦氏(BluewaterSoft)
  • 川竹一氏(ソースネクスト)
  • 一色政彦氏(Build Insider編集長)
  • かわさきしんじ(モデレーター。Insider.NET/業務アプリInsider編集長)

 パネルディスカッションでは、ソースネクストの川竹氏にもご参加いただき、パッケージソフトベンダーの観点からご意見をいただいた。

 モデレーターを務めた筆者の力不足もあり、どちらかといえば二つの技術セッションが濃い内容だったのと比べて、グダグダ風味の内容となってしまったことをまずはおわびしておきたい。

 というわけで、印象に残ったトピックを以下ではいくつか取り上げていこう。ただし、本会議が開催されたのが7月4日ということもあり、プレビュー版を基にした話題もあるので、その辺はご承知いただきたい。

そもそもWindows 10とUWPってはやるの?

一色: Windows 10でアプリを作るって話になっても、そもそも論としてWindows 10が普及しないと意味ないじゃないですか。Windows 10/UWP/ストアが一般的に使われることが、今回のディスカッションの前提となっていると思いますが、その辺、パネリストの皆さんはどう思っていらっしゃいますか。

――(かわさき): 参加者アンケートの「Windows 10が登場したら最新環境に移行する予定ですか」に対する答えを見ると、「今すぐ移行する」が「17%」、「動作検証などをして1年間の無償アップグレード期間に移行する」が「34%」、「動作検証なども含めて中長期的に検討する」が「31%」など、おおよそ半数の方が1年以内に移行する予定だと思います。この結果を見て、田中さん、どうでしょう。

パネリスト紹介: 田中達彦氏 パネリスト紹介: 田中達彦氏
田中氏のプロフィールについては既出のため省略

田中: 1年以内に半数の方が移行してくれれば大成功だと思います。というのは、全世界には今、15億台のWindowsデバイスがあって、そのうちの10億台を2、3年でWindows 10にするぞといっているわけです。もし本当に半分の方が移行してくれれば、7.5億台が最初の1年でWindows 10になるわけです。それは大きいと思います。それから、「中長期的に」という方も3割いらっしゃいますが、そういう方々も、様子を1年間見ていただいて、「いけそうだ」と思ったら1年以内にインストールしてくださると思っています。とすると、「8割」ですね!

―― ほんとかな?

田中: (笑) Windows 8.xのストアアプリはホントに使ってもらえませんでしたが、今度のWindowsストアは音楽や映画も入手できるようになります。また、UWPアプリも他のデスクトップアプリと同じように使えるので、Windows 8と比べて、移行に対する障壁は低くなっていると思っています。

川竹: 私はコンシューマー向けの世界の人間で、そこはとても大事なことなので、聞いてもよいですか。どれくらいの人がWindows 10にいくのかという話。世界全体では2、3年で10億台。では、日本国内ではどうでしょう。何か、資料を出されていたりしますか。

田中: 社内的にはありますが、ここではいえません。でも、決して少ない数ではありません。

川竹: そこは非常に期待しています。新しいWindowsが出ると、新しいパソコンを買いにくる方が増えます。そこで、パッケージソフトの販売機会も増えますし、新しいバージョンのソフトウエアが必要になる人もいます。Windows 10のシェアがどれくらいになるか。それが新しいものを作ろうという意思決定につながるので、そこには期待しています。

山本: 後はWindows 10 Mobile。Windows Phoneがどれくらい日本で売れるかなと。MADOSMAを買った方はいらっしゃいますか。(参加者の挙手を求めて)おお、結構いますね。freetelからももうじきに出ますし。これがどれくらい売れるかですね。

一色: Windowsストアについても。自分の場合、MacではアプリはMac App Storeからしかインストールしていません。アップデートも自動。人気のアプリも分かる。ウイルスも怖くない。いいことずくめです。これと同じような状況をWindows 10で作り出せるかどうかが、Windows 10とUWPが普及するポイントかなと思っています。とはいえ、Windows 10は長期的にはメインストリームになって、アプリもストアからインストールするようになると思います。

既存アプリとWindows 10

パネリスト紹介: ソースネクスト 川竹一氏 パネリスト紹介: ソースネクスト 川竹一氏
コンシューマー向けソフトウエアメーカー、ソースネクストの技術戦略室 執行役員。
代表的製品は、ウイルスセキュリティZERO、筆王、いきなりPDF、超字幕など。
本セッションでは、コンシューマー向けソフトウエアの企画・開発、技術選択の視点から発言する。

川竹: 私たちは製品としては百数十タイトルあるので、これをWindows 10に対応させなければいけません。自分が使っているソフトウエア/ハードウエアが全て新しい環境で動くかどうかを気にする人がいます。メーカーとしては、先にきちんと「大丈夫ですよ」といってあげる必要があります。そこで全部テストをして、対応表を作り、公式ホームページで公開しています。ユーザーにはメッセージやメールで「ここに対応表があるので見てください」と情報を逐次配信しています。

―― 実際にテストして、動かなかったものもありますか。

川竹: おおむね動いています。動いていないものについては「対応しましょう」とか「新バージョンは対応しているので、これはよしとしよう」というのを決めています。

―― 山本さんはストアアプリを作ってらっしゃいますよね。ストアアプリ開発者の観点から「ここは気を付けた方がよい」というのはありますか。

山本: 先ほどのセッションでもデータベースアクセスへの直接接続ができないと言いましたが、Windowsランタイムはできないことが多いんです。できないことが多いので、それに慣れるまでは苦労します。話が少し脱線しちゃいますが、これから私はWPFアプリを開発して、Project Centennialを使い、ストアに出してみようと思っています。ストアアプリを使っていない人に聞くと、「あれって全画面でしょ。そんなの使えないよ」となりますが、ストアにWPFアプリがあったらどうよ? ということで、ちょっとやってみようかなと思っています。

田中: Windows 8.xでは、ストアアプリは従来のデスクトップアプリと見た目も使い方も大きく違ってために違和感を持たれて、なかなか普及しませんでした。Windows 10では、タブレットモードがオフ(通常のモード)のときには、UWPアプリもウィンドウ表示されて、これまでのアプリと見分けが付かなくなりますし、山本さんがおっしゃったように、WPFアプリもProject Centennialでストアに出せるようになります。ユーザーからしてみれば、アプリを入手するときに最初に見る場所がストアになるのではないでしょうか。その点では(一色氏が言及した)Macの世界に近づくのではないかと思っています。

一色: 僕は社内の業務アプリも作っているのですが、そこではIEのブラウザーコントロールをかなりディープに使っています。そういうのはWindows 10ではどうなりますか。特にWindows 10ではEdgeが出てくるじゃないですか。

田中: 今までの.NET FrameworkのWebコントロールやWindows 8.xのストアアプリのWebViewコントロールが使用するレンダリングエンジンが何になるかというと、IEのものが使われます。つまり、従来と同じレンダリングエンジンを使って表示されます。では、Edgeがどこで使われるかというと、Windows 10のUWPアプリです。UWPアプリでWebViewを使うと、そのレンダリングエンジンはEdgeのものになります。今までのアプリの動作はWindows 10上でも基本的には同じです。ただし、テストはやはりしていただきたいと思います。

UWPの理想と現実

―― 業務アプリを開発する上で、UWPを使うとよいところはありますか。

パネリスト紹介: 山本康彦氏 パネリスト紹介: 山本康彦氏
山本氏のプロフィールについては既出のため省略。

山本: それはやはり「Windowsが腐らない」ことでしょう。それから、セキュアなシステムを作りやすい。「クラウド型」のアーキテクチャが強制されるので、セキュアなシステムにしやすくなります。それからUWPアプリ自体がセキュアです。APIもセキュアですし、配布方法もセキュアです。Windows 10 Enterpriseエディションにはデバイスガードという仕組みも投入されます。これはデバイスを完全にロックダウンしてしまって、デジタル署名で登録してあるアプリ以外は絶対に動かせないという強力なセキュリティ対策機能です。そして、デバイスガードでロックダウンしたものでも、UWPアプリならデフォルトで実行できます。ストアで正式なデジタル署名を付加するので対応しやすいです。セキュアなシステムを作っていく上でも、UWPアプリは有効かなと思っています。

田中: Windows 10ではエンタープライズ機能が拡充されています。それを使いやすいというのもUWPのメリットです。Windows 10には、エンタープライズデータプロテクションという機能があります。これは、「これはうちの企業で使いますよ」と指定したアプリから、それ以外のアプリへのコピー&ペーストができないようにするものです。つまり、社内の機密情報や個人情報を他のアプリにコピペして外に持ち出せなくなります。企業としてはWindows 10にしない理由がないくらいに、いろいろな機能拡張を行っています。

一色: 今回のパネリストの皆さんは、「UWPに移行しない選択肢はない」という感じの勢いで、「移行すべきではない」という否定派がいないために議論が盛り上がらない面もありますね。今日のセッションとここまでのディスカッションを聞いて、新規の案件だったらUWPアプリにしてみようと思った方はいらっしゃいますか。

場内: 沈黙

一色: あ〜〜〜〜、ほとんどいないですね、残念ながら

川竹: 私はゼロかと思っていました。

場内: 笑

―― そこを何とかしていかないとですね。田中さん。「新規案件をUWPで」というのはほぼ皆無でしたが、既存のアプリをUWP BridgesでUWP化してみたいという方はどのくらいいらっしゃいますか。こっちの方が多いかな。既存の業務アプリをProject CentennialでUWP化して、Windows Store for Businessで配布するとClickOnceを使わなくて済むようになるってことはありますか。

田中: シナリオとしては考えられます。ClickOnceはWindowsフォームアプリやWPFアプリに対応していますが、UWPアプリはClickOnceで配布できません。配布形態として、今までのアプリをそのままの形でWindows 10に持っていくのであればClickOnceを使っていただくと。Windowsストアに何らかのメリットを感じていただいて、UWPに移行するのであれば、Windowsストアからアップデートすることになります。

山本: Project Centennialで既存アプリをUWP化することにはもう一つメリットがあります。米国で開催された技術者向けカンファレンス「Build 2015」での説明によれば、Project Centennialで既存アプリをラップすると、レジストリへのアクセスとシステムDLLへのアクセスが仮想化されます。アプリからはレジストリに書き込んでいるつもりでも、実際にはインストールフォルダーにあるテキストファイルに書き込みが行われます。また、システムDLLをインストールしたつもりでも、実際にはそれらのファイルはインストールフォルダーに置かれます。これのよいところは、先ほどからいっていますがWindowsが腐らなくなることです。同じWPFアプリでも、Project Centennialでパッケージングすると、パッケージがインストールされたフォルダーに閉じ込められる。これもメリットではないかと感じています。

パネリスト紹介: Build Insider編集長 一色政彦氏 パネリスト紹介: Build Insider編集長 一色政彦氏
2014年まで@IT/Insider.NETの編集長を担当し、2015年から本稿の筆者であるかわさき氏にバトンタッチした。現在は、「既存資産からの移行」という視点を外して、スタートアップ企業のように「ゼロベースで技術を取り扱う」という方針で、Web開発や各種デバイス開発の最新技術情報を発信する「Build Insider」の編集長をしている。今回の議論参加でも、現在の担当サイトの特徴を生かした“スタートアップ企業の目線”で発言した。

一色: 今、“ClickOnce”の話が出ましたが、約10年前に詳しい解説記事を執筆したことがあるので話をさせてください。僕が最初にWindowsでアプリを配布/展開しようとしたときには、インストーラー開発ツールの「InstallShield」を使っていました(ちなみに現在はMSIがよく使われている)。その後、2003年に今の会社(デジタルアドバンテージ)に入って、アプリのインストーラーを作ったら、社内で使うものは勝手にダウンロードするからとか、レジストリに何を書くのか信用できないからという理由で「共有フォルダーに置いてくれ」といわれました。そんなことがあって、インストーラーという配布形式は難しいなと思っていたところに出たのがClickOnceです。2005年ごろにアップデート技術がたくさん登場しましたが、この10年で最終的に生き残ったのはClickOnceでしたね。でも僕は、ClickOnceは割と早いうちに卒業しました。2008年くらいにGoogle Chromeが出てきましたが、「アップデート版のインストールをユーザーには事前に知らせてくれない」というのは僕にとっては衝撃的でした。ClickOnceみたいに「インストールしてよいか」を聞いてくれなくて大丈夫かなと思いましたが、クレームは全くない。じゃあ、この方式で大丈夫だろうということで、社内のアプリは自動更新プログラムを作って、自動的に無通知でアップデートするようにしました。その結果、問題は一切起きていません。ということで、こういった自動更新の仕組みがすでに存在するならば、UWPに移行してストアにアプリの更新を管理してもらうよりも、むしろ便利だと感じています。ただ、先ほどのセッションで説明された「ストアアプリの自動更新オプションをユーザーが選択できる機能(具体的には「一定期間延期」の話)」はニーズがあるかもとも思いました。こういった「配布をどうするか」が、実は「業務アプリをUWPにするかどうか」の重要な決定ポイントになると考えています。

UWP、使う? 使わない?

―― ぶっちゃけ、マイクロソフトとしてはUWPに移ってほしいのでしょうか。

田中: そうしていただきたいところですが、すでに作っているアプリもありますし、何が何でもUWPにしてくれということではありません。ユーザーシナリオによって、使用するテクノロジは選択されてよいでしょう。ユーザーが使うのがデスクトップPCやノートPCだけで、今後も機能追加もあまりないし、Windows 10固有の機能も使う予定はなく、すでにWindowsフォームやWPFで作られていて、今ちゃんと動いているのであれば、そのままの形で動作確認してから、使い続けてもらえればと思います。そこは無理にUWPにする必要はありません。ただ、将来的にWindows 10の機能を使ったり、一部をクラウドに持っていったりする場合には、WindowsフォームやWPFでは対応できないこともあります。将来的にアプリを拡張する計画があれば、UWPを検討してほしいですね。

山本: UWPではできないデスクトップアプリのジャンルはあります。田中さんのセッションで出たサンプルアプリ(ウィンドウ枠や背景を透明化するアプリ。1ページ目の画面キャプチャーを参照)などはまだUWPではできません。そういうものはWPFでやりますね。で、実業務の現場でUWPにしますか? となったら、「いや、ちょっと待て!」というと思います。

田中: Windows 8.1でマイクロソフトが相談を受ける案件では、実は業務アプリをストアアプリで作られている方が圧倒的に多いんです。法人需要でタブレットがあって、タッチ対応やタブレットに合ったUIを作るにはWPFやWindowsフォームではどうしても作りにくい。そういうわけで、実はストアアプリで作られているケースが多いのです。そういうものはストアにも出てきませんし、あまり知られていません。でも、ストアアプリの需要はかなりあります。そういうことを考えると、Windows 10をタブレットで使う場合にはUWP以外の選択肢はないかなと思っています。

―― Windows 10 Desktopだけではなく、タブレットやWindows 10 Mobileまで考えると、そっちにいくしかないかなということですかね。

山本: そうですね。これからはUWPでしか動かないデバイスが増えてくるはずです。そういうデバイスを導入するぞという話が出てきたら、UWPアプリをやるしかないかなと。逆に言うと、そういう話がないときに無理にUWPを始めて、デスマーチをやるのも馬鹿馬鹿しいですよね。

―― ソースネクストさんでは、最近、ストアアプリを出したということですが。

川竹: 超字幕というアプリのストアアプリ版を出しました。もともとのバージョンではXAMLでUIを書いていたので、移行は比較的楽でした。もちろん、Windows 10には移行していくと思っていますが、その速度が重要です。母集合の数によって、どのプラットフォームに出していくのかが決まりますから。それにAndroidやiOSでも使いたいという要求も出てきます。だから、上の方はAPIドリブンで作っておいて、要求が高いものになるとか、○○バージョンを作ってくださいという話が出てきたら、クライアントはそれぞれにリッチなものを作っていくというやり方が多いです。今は「このデバイスでしか使えません」というのはコンシューマーでは少なくて、マスに提供するにはどういう方法がよいかを最初に検討します。なので、Windows 10がどんどん増えてくれれば、「これ(UWP)で作ろう」となると思います。

移行の時期とそのために必要なこと

―― UWPを新規案件で採用するとしたら、いつくらいの時期になるでしょうか。

山本: 私個人はすでにUWPに移っていますが、業務アプリに移行するのがいつかといったら、Windows 10がどれだけ普及するのか、Windows 7と8.1がいつ消えるかによるでしょう。その辺りがデスクトップアプリの移行時期になると思います。それから、皆さんの組織やお客さんでUWPアプリの導入があるのかないのかで変わってくると思います。

田中: Windows 10は7月29日から提供開始です。スタートダッシュを掛けてアプリを提供していきたいという場合には、7月29日以降に各PCメーカーからWindows 10対応PCがドーンと出る時期がきます。その時期にはテレビコマーシャルも各社ガンガンやるでしょうし、マイクロソフトも力を入れます。その頃までにUWPアプリを作っていただくのがよいと思います。

―― 山本さんのセッションの内容ともかぶってしまいますが、UWPをやろうというにはWPFをやっておくべき?

山本: そうですね。XAMLで絵を描くのはポトペタ感覚で始めて、XAMLを直書きするところまではガンガンやればできちゃいます。難しいのはデータバインディング。データバインディングでデータを画面に表示するのはものすごく奥が深いです。これはWPFプロジェクトを二つ三つやっていただくと習得できるかなというところでしょうか。

―― Windowsフォームベースでアプリを作っていた方はいろいろと覚えることがあるということでしょうか。そういう人が、いきなりUWPはダメ?

山本: まずはWPFに移行していただきたいですね。そこでXAMLとデータバインディングを身に付ける。その後、UWPにいくときに、async/awaitとアーキテクチャ変換を覚えると。このように山が二つ三つあります。これらをいっぺんに飛び越えようとしたら、大変なので、少しずつ進んでいっていただけたらと思います。

―― 田中さんもそう思いますか。

田中: いきなりUWPでもいいと思います。ただ、Windowsフォームをやっている方が多いのであれば、何らかの形でXAMLに触れていただけたらと思います。

まとめ

―― 最後、皆さんから一言ずつお願いします。

一色: 先ほど話した自動更新のテクノロジが使われているのであれば、WindowsフォームでもWPFでもUWPでも、何を使ってもよいと思っています。マイクロソフトはこれまで下位互換性を重視して、サポート期限が切れるまでずっと使える状態を維持してきました。それはWindows 95からWindows XPまではよいことでした。でも、IE 6の問題が出ました。ずっとXPとIE 6が使われていて、Webの人がカンカンに怒って、マイクロソフトは結構嫌われてしまいましたよね。それで、Windows 10では――「Evergreen(エバーグリーン)」といっていますが――Edgeは常に最新のものしか使えなくなります。Windows 10自体も基本的にはその方向です。で、業務アプリもこれからはEvergreenがスタンダードになると僕は予想しています。実際、アプリ開発でも「Evergreen」にするための環境がそろいつつあります。例えば、NuGetによる更新や、Gitによるソースコード管理、自動ビルド、自動テスト、継続的インテグレーションに継続的なデプロイ。DockerやPowerShell DSCを使えば、運用環境まで自動化できます。全てを自動化して、いかに業務アプリを常に「Evergreen」なものとし続けるか。Windows 10時代に業務アプリ開発をするに当たっては、それが一番大切になってくると思います。

川竹: 今日は業務アプリの話を聞かせてもらいましたが、「常に最新バージョンを提供する」というポリシーにOS自体が変わり、仕事で使われているものがどんどん便利になって、生産性がどんどん上がっていくのは、とてもよい変化の機会だと思います。そこに飛び込んでいく方が増えると、全体としてマイクロソフトさんを中心に面白くなると思っています。

山本: SIの開発者の立場からいうと「無理せずにWPFから順番にステップアップしていきましょう」となります。もう一つ、SIで仕事もしているけど、土日はプログラミングが趣味だよという方はこの機会にぜひUWPアプリを作って出してください。今はまだやっている人が少ないので、今なら有名になれるチャンスが転がっていると思います。

モデレーター: Insider.NET/業務アプリInsider編集長 かわさきしんじ モデレーター: Insider.NET/業務アプリInsider編集長 かわさきしんじ
元はIT系書籍の編集者(やめたわけじゃあないですよ)。某出版社在籍時にはVisual Basic/C#などの書籍も手掛けていた。というわけで、.NETとの付き合いはそれなりに長いのではあるが……。顔と態度と腹はデカいが、心と懐は小さいのが特徴。

田中: Windows 10の世界は速いか遅いかは別にして必ずくる波だと思っています。マイクロソフトとしては、その波が早くくるように仕掛けをしていきます。そこで、皆さんにお願いしたいことは、今作っているアプリ、今使っているアプリがWindows 10で確実に動作するかを検証してその対応をしていただきたいと思います。それから長年使っているアプリを改修する際に、今までのアーキテクチャをそのまま使ってよいのか、それとも変えるべきかを考えていただいた上で、クライアントテクノロジを選んでいただければよいかなと思っています。

―― 最後にまとめると、「変わるか変わらないかは皆さんにお任せする」というひどい丸投げの仕方で終わりたいと思います。

 登壇者のUWPへの意気込みと、参加者のUWPに興味はあるけれど様子見かなというスタンスの差が如実に表れる結果となってしまった。なお、パネルディスカッションの詳細については、以下に示すセッション動画を参照していただきたい。

パネルディスカッションのストリーミングのアーカイブ


 Windows 10がRTMとなり、Visual Studio 2015も登場した。田中氏が述べたように今動いているものを無理やりにUWPアプリ化する必要はなくとも、いずれWindows 10の波がやってくることは確実だ。そのときにどんなアプリを作っていくかは皆さんしだいである。その一方で一色氏が指摘した「Evergreen」という考え方もある。これから皆さんが開発するアプリの一つ一つが業務アプリが変わるのか変わらないのかを決めることになるだろう(マイクロソフトは技術やフレームワークを提供はできても、どの技術を選択するかは開発者の手にゆだねられている)。形態はどうあれ、皆さんがこれからもよきアプリを開発し続けるものと期待しながら本稿を終わることにしよう。

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