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» 2015年08月28日 05時00分 UPDATE

伝統的な大企業でも、変化に対応できなければ必ず破綻する:米HPE、「DevOpsで“やるべきこと”は、はっきりしている」 (1/2)

2013年ごろから注目を集めているものの、いまだ理解が十分に浸透しているとは言いにくい「DevOps」。だが昨今は、市場変化の激しさを受けて実践に乗り出す企業が着実に増えつつある。米HPE(ヒューレット・パッカード・エンタープライズ)で多数のコンサルティングを手掛けているカン・タン(Kan Tang)氏に、今あらためてDevOps実践の要件を聞いた。

[構成:編集部/協力:斎藤公二,@IT]

 国内での取り組みはまだ限定的だが、欧米の企業ではDevOpsをシステム開発・運用に適用する動きが活発化している。Webサービスなどフロント系システムだけではなく、バックエンドシステム開発・改善にDevOpsを適用している例もある。国内の状況との違いは何か、取り組む上では何に注視すべきなのか。米HPE(ヒューレット・パッカード・エンタープライズ)のソフトウェア プロフェッショナル サービス部門で、ワールドワイド ストラテジー&ソリューション チーフテクノロジストを務めるカン・タン(Kan Tang)氏に話を聞いた。

「何をやるべきかは、はっきりしている」

 周知の通り、国内では「DevOps」という言葉がいまだ明確に受け止められていない傾向が強い。開発と運用をつなぐといった組織論や、自動化ツール、開発ライフサイクルの管理手法など、人によって解釈が異なる。DevOpsに対する関心は高いものの、「何を目的とし、どの領域に、どう適用すべきか」に対する見解は、まだ十分に理解されているとは言いにくい状況だろう。

ALT 米HPE ソフトウェア プロフェッショナル サービス部門で、ワールドワイド ストラテジー&ソリューション チーフテクノロジストのカン・タン(Kan Tang)氏

 こうした状況に対し、カン・タン(Kan Tang)氏は、「DevOpsの定義が一つではないことは、目をつむって象の肌に触れるようなものではないでしょうか。それが動物なのか、壁なのか、人によって捉え方が変わってくるような状況に似ているのもかもしれません」とコメントする。

 ただし、「DevOpsとは、ビジネスゴールを達成するために、ビジネスサイドを含めたさまざまな人たちと協業し、ソフトウエアをアイデアの段階からプロダクション環境まで、速やかにデリバリするための仕組みや実践方法のこと。この基本的な考え方は決して変わりません」と強調する。

 また、昨今はDevOpsの実践を支援するオープンスタンダードな手法や、それを支える商用ツール、オープンソースソフトウエア(以下、OSS)も充実しており、それらを正しく適用することで、「すでに多くの企業がDevOpsを実践できるフェーズに入っている」という。

 「まずは目的と適用領域を明確に理解した上で、実現のための手法とツールを正しく理解・適用することが大切。“何をやるべきか”ははっきりしています」

 では「DevOpsを適用すべき領域」とは何か? この問いに対し、タン氏は 「Core IT」と「Fluid IT」という二つの領域を挙げる。

ALT ITの二つの領域

 「ビジネス環境の変化が激しくなっている今、従来型のITだけでは変化に対応することが難しくなっています。これを受けて、米ガートナーは、高信頼で安定稼働が求められるITを『Core IT』、変化に対応するためのITを『Fluid IT』という二つに分けていますが、われわれもこの考えに沿って、DevOpsを、まずはFluid IT分野に適用していくことを提案しています」(タン氏)

 Fluid ITで求められるのは、市場にいち早くシステムを投入する「スピード」、環境変化にフレキシブルに対応する「柔軟性」、その日のうちにアップデートできるリリースの「頻度」だ。DevOpsは、まさしくこの3点の実現に適している。

 「ビジネス環境が激しく変化する中、IT側でも変化に対応していかなければなりません。特に今、企業は新しいビジネスを即座に立ち上げたり、顧客とのエンゲージメントを向上させたりする取り組みに注力することが求められています。では、そのために開発・運用はどのように機能すればよいのか?――そこで求められるのが『開発のスピード』、変化に対応できる『柔軟性』、リリースの『頻度』であり、これを実現する一つの答えとしてDevOpsがあるのです」

「IT4IT」が定義する4つのバリューストリーム

 ただ一般に、開発部門はスピードを重視しても、運用部門は安定を重視する。Fluid ITに属するシステムをスピーディに開発しようとしても、この矛盾する課題に直面する。タン氏は「この矛盾の解決に役立つのが『IT4IT』のフレームワークや、継続的インテグレーション、継続的デリバリなどのツール群です」と解説する。

 「IT4IT」とは、業界団体のThe Open Groupが策定している「ITによるビジネス支援のためのフレームワーク」だ。ベンダー中立でオープンスタンダードな規格を策定しており、米HPEはコントリビューターの一社となっている。そのIT4ITでは、ビジネス価値を生み出すITバリューチェーンを構成するものとして、以下の四つのバリューストリーム(キーコンポーネント)を定義している。

ALT 「IT4IT」が定義する4つのバリューストリーム

参考リンク:The Open Group「IT4IT」

 「Strategy to Portfolio」は、ビジネスの優先順位に応じて必要なITを選択・適用する「戦略」。 「Requirement to Deploy」は、ビジネスが「何を」「いつ」求めているかといった「ビジネス要件」。「Request to Fulfill」は、要件に必要な「ITの調達」。「Detect to Corrent」は、フィードバックを得て「改善していくこと」を意味する。重要なのは、4つのバリューストリームが全て連携して一つのバリューチェーンを構成していることだ。

ALT ITバリューチェーンを構成する4つのバリューストリームを、エンドツーエンドで連携させることが重要

 米HPEでは、この4つのバリューストリームを実現する上で、以上の図のように、それぞれどのような取り組みが必要かをマッピングしている。「Continuous Integration and Testing (継続的インテグレーション&テスト)」「Continuous Delivery and Development (継続的デリバリ&デプロイメント)」「Continuous Operations (継続的運用)」「Continuous Assessment (継続的アセスメント)」といった具合に、各取り組みに「継続的(Continuous)」という言葉を使っている点がポイントだ。

 つまり、ITバリューチェーンを構成する4つのバリューストリームを、エンドツーエンドで連携させることで、「ビジネスの要請を受けて開発、テスト、リリース、運用し、再び開発に改善要求をフィードバックする」という一連のフィードバックループを継続的に回すことを意味している。

ALT DevOpsの在り方と、それに必要な取り組み、その実現を支える具体的な製品のポートフォリオ

 ただ国内では、DevOpsを実践する上で、継続的インテグレーションや継続的デリバリ、テスト自動化などを支援するツールが注目されてきた。だがタン氏は、「4つのバリューストリーム全体にわたって“継続性”を組み込んでいくことが大切。部分的にツールを導入するのではなく、戦略立案から施策のフィードバックまで、全ての領域を連携させなければDevOpsは成立しません。これが弊社の考え方です」と解説する。ビジネスニーズの変化に応じてスピーディに改善を続ける上では、各種自動化ツール以前に、以上のようなフィードバックループを回せる「仕組み」が不可欠というわけだ。

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