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» 2015年08月21日 05時00分 UPDATE

「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(19):プログラムの「盗用」は阻止できるか? (1/2)

東京高等裁判所 IT専門委員として数々のIT訴訟に携わってきた細川義洋氏が、IT訴訟事例を例にとり、トラブルの予防策と対処法を解説する本連載。今回は、プログラムを「パクられた」ゲームソフトメーカーが起こした裁判を解説する。果たしてプログラムに著作権は認められたのか――?

[ITプロセスコンサルタント 細川義洋,@IT]
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「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説

連載目次

 IT訴訟事例を例にとり、トラブルの予防策と対処法を解説する本連載。前回はソフトウエアの設計書が著作物として認められるための条件について解説した

 今回も引き続き著作権について説明する。テーマは「プログラムの著作権」だ。

 前回より解説しているソフトウエアの著作権問題。前回は、ソフトウエア開発において作成される設計書が著作物として認められるためには、そこに「創作性」や「表現上の工夫」が必要であることを述べた

 今回は「プログラムの著作権」について考えてみたい。最初に取り上げるのは、昭和57年に出された古い判決だが、プログラムの著作権について、おそらく裁判所が初めて考え方を示したものであり、その意味で一つの原則と言ってもいい判例である。

プログラムにも著作権が認められる。ただし「原則」として

東京地方裁判所 昭和57年12月6日判決より抜粋して要約

 ある大手ゲームソフトメーカー(以下 原告)が、作成したゲームソフト(コンパイル後の機械語)をテレビゲーム機内蔵のROMに格納して販売していたが、あるゲーム会社(以下 原告)が、このROMを取り出し、別のゲーム機に組み込んで販売した。

 原告は、この行為がプログラムの著作権の侵害に当たると訴えを起こしたが、被告は、プログラムは著作物ではなく、著作権侵害には当たらないと反論した。

 人の作ったソフトウエアを、勝手に自分のマシンに組み込んで販売するなど、著作権以前の問題ではないかと考える読者も多いだろう。しかし昭和50年代は、コンピューターの価値はハードウエアにしか認められず、ソフトウエアはその付け足し程度にしか思われていなかった時代だった。このように、ある意味ソフトウエアを軽視するような風潮が、当時はあったことも事実である。そうした時代にあって、ソフトウエアの価値と、その権利を争ったこの事件は、裁判になること自体が画期的であり、裁判所の判断が、コンピューター業界(今でいうIT業界)から、大変に注目されていたようだ。

 そんな中、裁判所が示した判断は、以下のようなものだった。

東京地方裁判所 昭和57年12月6日判決より抜粋して要約(続き)

 本件プログラムは本件ゲームの内容を本件機械の受像機面上に映し出すことを目的とし、その目的達成のために必要なさまざまな問題を細分化して分析し、そのそれぞれについて解法を発見した上で、その発見された解法に従って作成されたフローチャートに基づき、(中略)さまざまな命令およびその他の情報の組み合わせとして表現されたものであり、当然のことながら右の解法の発見および命令の組み合わせの方法においてプログラム作成者の論理向思考が必要とされ、また最終的に完成されたプログラムはその作成者によって個性的な相違が生じるものであることは明らかであるから、本件プログラムは、その作成者の独自の学術的思想の創作的表現であり、著作権法上保護される著作物に当たると認められる。

 少し長い引用になったが、要約すると、本件プログラムは、開発者が作成者自身の論理的思考を元に作成した個性を持つものであり、独自の学術的思想の創作的表現であるから、著作物に当たるとしている。「解法を自ら発見したこと」「作成者自身による論理的な思考があったこと」あたりがポイントとなったようだ。

ポイントは作成者の「●●」が表れているか否か

 ソフトウエアの著作権について、「プログラムは著作物だが、設計書は著作物と認められない」と、短絡的な意見を聞くことがあるが、私が判例を調べた限り、問題はそれほど単純ではない。それが証拠に、プログラムの著作権が否定された以下のような判決もある。

東京地方裁判所 平成24年12月18日判決より抜粋して要約

 あるソフトウエア開発業者(以下 被告)が、ある企業(以下 原告)に光ディスクへの書き込み、レーベル印刷などの装置の制御ソフトウエアを開発し納入した。

 同委託契約では、納入した成果物の著作権は、原告に移転すると定められていたが、その後、被告が独自に同じ機能を持つソフトを製造し販売したことから、原告は、その製造・販売が原告の著作権を侵害していると警告を行ったが、被告は、委託者(原告)に納入したソフトウエアは著作物に当たらないと反論し、訴訟となった。

 委託契約で、著作権の帰属を委託者(原告)に移したにもかかわらず、受託者(被告)が、それとほぼ同じソフトを開発して販売したというのだから、原告としては、何のための契約かと訴えたくもなるだろう。しかし、被告は、原告に納品したソフト自体、著作物ではないと言っている。これについて東京地裁は、まず、プログラムを著作物と認める要件を、一般論として次ページのように述べている。

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