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» 2015年08月25日 05時00分 UPDATE

特集:次期Visual Studioの全貌を探る:Visual Studio 2015のエディションを整理する (1/2)

Visual Studio 2015にはさまざまなエディションがある。本稿では、各エディションの特徴やインストールに当たっての注意点をまとめる。

[かわさきしんじ,Insider.NET編集部]
特集:次期Visual Studioの全貌を探る
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 2015年7月中盤にRTMされたVisual Studio 2015(以下、VS 2015)にはいくつかのエディションが存在している。本稿では、それらを整理する。無償で使用可能なCommunityとExpressの二つは手軽にVS 2015の機能に触れてみたいという人にとっては興味深い存在だが、それなりの制約もあるので、特にこれらに注目しよう。

本稿ではライセンス条項などにも言及しているが、執筆時点の情報に基づくので注意されたい。実際に利用を開始するに当たっては、それぞれの最新の公式情報に当たってほしい。


VS 2015のエディション構成

 まずVS 2015のエディションにどんなものがあるかをまとめる。なお、VS Test Professionalはここでは対象外とする。また以降では、特に「VS 2015」の表記が必要ない場合には「VS 2015」を省略し、「Community」などとエディションのみを表記していく。Professionalエディションについては単に「Pro」と表記する。

エディション 特徴 備考
Enterprise 大規模プロジェクト開発までをカバーする機能を提供 なし
Pro プロの開発者が利用する機能のベースラインを提供 なし
Community Professionalとほぼ同等な機能を提供(ただし、VS 2013とは異なり、機能差はある) 個人開発者の利用は自由だが、組織での利用には制限がある(後述)
Express for Windows Desktop Windowsフォーム/コンソール/WPFアプリ開発用 Windows 8.xのストアアプリ/UWPアプリの開発はできない
Express for Web Webアプリ開発用 なし(後述)
Express for Windows 10 UWPアプリ開発用 Windows 10上でのみ実行可能
VS 2015のエディション
表中のUWPは「Universal Windows Platform」のこと。

 このうち、EnterpriseとProについてはMSDNサブスクリプションが付属した「with MSDN」という製品もある。これらについては「Visual Studio 2015 製品の比較」ページや「MSDN サブスクリプション」ページを参照されたい。

 Enterpriseは、従来のVS 2013 Premium/Ultimateを統合したバージョンで、いわば「全部入り」のVS 2015であり、大規模なエンタープライズアプリ開発までを対象としたエディションだ。

 これに対して、Proは個人開発者や小規模なチームを対象に高度なアプリ開発機能を提供するものだ。あるいは、Communityの対象外となる組織(250台を越えるPCあるいは250人を越えるユーザーを抱える企業など)がVS 2015が提供する高度な機能を必要とする場合には、コストなどの面からこれが筆頭候補になるだろう。

 Communityはマイクロソフトが定める「エンタープライズ」(後述)に当てはまらないユーザー層や、教育/デモ/研究、OSS開発を対象としたエディションであり、無償で使用できるが、使用に当たっては制約がある(後述)。

 Expressはデスクトップアプリ/Webアプリ/UWPアプリ開発に特化した三つのエディションで構成される。2014年秋にVS Community 2013がアナウンスされた当初は、VS 2015ではExpressエディションはリリースされないとされていたが、Communityを使用できるユーザー層がかなり限定されており、これまでに無償でVSを使用していたユーザー層をカバーしきれないことから、VS 2015でもExpressエディションがリリースされたものと思われる。こちらはライセンス条項に従うことで、個人ユーザー/組織ユーザーに関係なく、商用アプリなどの開発に利用できる。

Enterprise/Pro/Community/Expressの違い

 まずはEnterprise/Pro/Community/Expressの機能面での差を図に表しておこう。

Enterprise/Pro/Community/Expressの機能面での差 Enterprise/Pro/Community/Expressの機能面での差

 EnterpriseとProで差があるのは主に以下の点だ。

  • デバッグ関連機能
  • テスト関連機能
  • アーキテクチャとモデリング
  • ラボ管理
  • Team Foundation Server(TFS)/VS Online連携

 例えば、デバッグ関連機能ではIntelliTrace(デバッグ実行時に各種イベントの発生やメソッド呼び出しなどのデバッグ履歴などを記録し、これを分析する機能)や、.NETアプリのメモリダンプ機能(.NETアプリのメモリ使用状況を調査したり、メモリリークが発生している箇所を特定したりできる機能)がProにはない。また、テスト関連機能では、Webベースでロードテストやパフォーマンステストを行う機能や、IntelliTestと呼ばれる、既存コードに対するユニットテストを自動生成する機能もEnterpriseでのみサポートされている。

 これらは大規模なエンタープライズアプリで必要となる、あるいは役立つ機能であり、その有無がEnterpriseとProが対象としている分野の違いを表している。今述べた通り、Enterpriseがエンタープライズ規模のアプリ開発までをサポートするのに対して、Proではそこまでの範囲をカバーしてはいない。

 あるいは、Proが提供するのは「プロの開発者が使用するツールとしてのベースラインの機能」、Enterpriseが提供するのは「大規模プロジェクトに従事するプロの開発者が自分の業務に注力できるようにするための高度な機能」と考えてもよい。

 なお、EnterpriseとProが提供する機能の差異については「Visual Studio 2015 製品の比較」ページを参照してほしい。

 次にProとCommunityの差について見てみよう。VS 2013ではProとCommunityの間では機能に差はなかったのだが、VS 2015では機能に差が付くようになっている。大きいのは次の2点だ。

  • CodeLens
  • TFS連携

 CodeLensとはVS 2015のエディター画面で現在着目しているコードに関連する情報を一気に表示できる機能だ。コードを参照している箇所やコードの編集履歴などを、別のウィンドウを開くことなくテキパキと表示できる。「Visual Studio 2015 製品の比較」ページの「統合開発環境」欄を見ると、この便利な機能がCommunityでは使えなくなっている。VS 2015ではProでも使えるようになったと多くの開発者が喜んだのだが、Communityではそこまでサービスはしてもらえなかったようである。

 TFSとの連携面でも差が付けられている。Communityはあくまでも個人開発者または小規模なチームを対象とするか、あるいは学習/デモ/研究目的での利用、大規模な企業でのOSS開発に焦点を置いているため、組織内にTFSを設置して、Communityと連携させるのは利用シナリオにはないということだろう。VS Onlineとの連携面ではCommunityとProに差はないことからも、「Communityはあくまでもコミュニティで使うものであり、企業内でVS 2015+TFSという形で開発をしたければPro以上を使ってくださいね」というマイクロソフトからのメッセージなのだろう。

 なお、「Pro without MSDN」については「The Visual Studio Blog」の記事「Visual Studio 2015 FAQ」(英語)によれば、「2015年9月1日にはリセラーおよびオンラインのマイクロソフトストアで購入できるようになる」とある(意訳)。日本でどうなるかは不明だが、「Pro without MSDN」を希望している方は9月まで待ってみるのもよいだろう*1。ただし、VS 2013のときのような安価なアップグレード版が出るかは不明だ。また、パッケージ版での販売が終了することから、どのような形で「Pro without MSDN」がリリースされるかは現段階では不明だ。

 最後に、上記のFAQにも書かれているが、VS Onlineのユーザーライセンスで「Professional」を選択した場合にも、Pro(without MSDN)を利用できるので、早期にPro without MSDNを使いたい方はこちらも検討の余地があるかもしれない(ユーザー1人当たり月額45米ドル)。

*1 筆者は待ち望んでいる!


Communityのライセンス条項

 上ではCommunityとProの機能面での差を見た。Proからいくつかの機能が削られているとはいえ、ほぼ同等な機能を無償で利用できるCommunityは非常に魅力的な選択肢だが、実際に使用するにはそれなりの制限がある。以下に、Communityのライセンス条項のうち、使用に関する条件をまとめておこう。

ライセンス 条件
個人ライセンス 無料/有料のアプリの開発にCommunityを使用可能
組織ライセンス オープンソースソフトウエア開発/トレーニング/教育/学術研究/VSの拡張機能開発には人数の制限なしにCommunityを使用可能
非エンタープライズ企業では同時に最大5人までのユーザーがCommunityを使用できる
エンタープライズ企業ではトレーニング/教育/学術研究/VSの拡張機能開発以外の目的ではCommunityを使用できない
Communityのライセンス条項のうち、利用条件に関連する部分を要約したもの
ここでいう「エンタープライズ」とは「250台を越えるPCを所持しているか、250人を越えるユーザーがいる」もしくは「年間収益が100万米ドルを超える」組織またはその関連会社と定義されている。

 Communityのライセンス条項はここから参照できる。ライセンスは「個人ライセンス」と「組織ライセンス」に別れていて、個人ライセンスの場合、つまり個人開発者であれば、Communityを使用して無料/有料のアプリを自由に作成できる。

 組織ライセンスの場合は、組織が「エンタープライズ」か否かと、利用目的によって利用が制限される。ここでいう「エンタープライズ」とは「250台を越えるPCを所持しているか、250人を越えるユーザーがいる」もしくは「年間収益が100万米ドルを超える」組織またはその関連会社と定義されている。

 エンタープライズの条件に合致する場合、その組織ではアプリの開発/テストの目的ではCommunityを使用できない。条件に合致しない場合には、同時に最大5人までのユーザーがアプリの開発/テストの目的でCommunityを使用できる。

 また、オープンソースソフトウエア開発(OSS開発)に関しては、人数の制限なしにCommunityを使用できる。上記のエンタープライズの条件は関係ない。

 また、VSの拡張機能開発、トレーニング/教育、学術研究が目的であれば、やはり上記のエンタープライズの条件には関係なく、人数の制限なしにCommunityを使用可能だ。

 この制約は(特にエンタープライズに関する制約は、それに合致するか否かに関係なく)、企業がそれなりの規模でアプリ開発をする場合にはかなり厳しい(恐らくはそのために、上でも述べた通り、ExpressがVS 2015でもリリースされたのであろう)。

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