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» 2015年09月14日 10時00分 UPDATE

データを活用する文化を根付かせるために:これからの企業には誰もが手軽にデータを分析、活用できる環境が必要――マイクロソフトが目指すデータプラットフォームとは

データ分析の結果をビジネスに生かすという発想は以前からある。しかし、専門家が現場を見ずに構築した分析システムを持ち込んだのでは、役に立たないこともしばしば。誰もが使える分析ツールを現場が自ら活用して、ビジネスの意思決定に役立てるべき、というのがマイクロソフトの考えだ。

[山口学,@IT]

「データを活用する文化」を企業に根付かせたい

ALT 日本マイクロソフト クラウド&サーバー製品マーケティング部 クラウド&アプリケーションプラットフォーム製品部 エグゼクティブプロダクトマネージャー 北川剛氏

 「データを活用する文化を企業に根付かせたい、というのがマイクロソフトの思いです。最近、世の中から注目されているビッグデータやIoT(Internet of Things:モノのインターネット)も、データに基づく意思決定を始める一つの良いきっかけになると見ています」

 日本マイクロソフトでビッグデータとデータプラットフォームのマーケティングに携わる北川剛氏(クラウド&サーバー製品マーケティング部 クラウド&アプリケーションプラットフォーム製品部 エグゼクティブプロダクトマネージャー)は、こう語る。

 実際、データの分析結果をビジネスの意思決定や経営判断に生かす取り組みは以前から行われていた。データさえそろっていれば、多少時間はかかるにしても、基本統計値を算出することは可能だ。また、メインフレームや大型サーバー用の統計解析ソフトウエアは数十年前から販売されていたし、「Visual Basic」などの手軽な処理系を使って分析システムを自社開発していた企業も多かった。

 その後、1990年代に入ると、データベースから得た分析結果をビジネスの現場で活用する「ビジネスインテリジェンス(Business Intelligence:BI)」に積極的に取り組む企業が増えてくる。2000年代には「MapReduce」や「Hadoop」などの大規模分散処理技術が登場し、大企業でなくても高度なデータ分析を行えるようになった。

 このように、技術的には目覚ましい進展があったものの、「データの分析結果をビジネス現場で活用する」という、BI本来の狙いはいまだに達成されていないという。これには考えられる要因がいくつかあるが、本質的な部分として北川氏が指摘するのは“専門家による専門家のためのデータ分析”になっていることだという。

 よくありがちなのが、データサイエンティストなどの専門家が策定した要件に基づいてITプロがデータ分析システムを構築・運用し、そのシステムから出てきた答を専門家が解釈してリポートにまとめ、それを現場に配って効果的な業務遂行の参考にさせる、というやり方だ。

 専門家の視点ではこれがベストかもしれないが、ビジネス現場からすると、意思決定に当たって必要としている情報がこのようなやり方で手に入るわけはないのである。

 マイクロソフトではこのようなデータ分析環境の現状認識に基づき、数年前から「ビッグデータ(データ活用)の民主化」を強く訴えてきた。“専門家による、専門家のためのシステム”も重要であることは確かだが、もっとビジネス現場で誰もが手軽にデータを分析し、活用できる仕組みも必要――というのである。

 そのために、マイクロソフトでは手軽なデータ分析を実現するためのソリューションとして「Power BI」(Microsoft Excelの法人ユーザー向け)や「Power BI for Office 365」(Excelの法人ユーザー向けのクラウドサービス)を提供してきた。

Power BIの無償化で「ビッグデータの民主化」を推進

 さらに、この“ビッグデータの民主化”施策の第二弾として2015年4月に発表されたのが、Power BIのフリーミアム化である。

 「フリーミアム(Freemium)」は、「基本機能は無料で、高度な機能や特別な機能に別途料金を課す」というビジネスモデルだ。Power BIの場合、基本機能はExcelユーザーでなくても使える無償のWebアプリケーションとなっており、データベース(SQL Server、Access、Oracle Databaseなど)、サーバーソフトウエア(Exchange Server、SharePoint Server、Dynamics CRM)、SaaS(Salesforce.com、Google Analytics)など、さまざまなデータソースに保管されているデータをクラウド側で分析し、グラフや地図へのマッピングなどの形態で可視化することができる(図1図2)。もちろん、Webアプリケーションだけでなく、「Power BI Desktop」というWindowsアプリケーションも提供される。

図1 図1 データ分析をExcelに似たユーザーインターフェースで簡単に行える「Microsoft Power BI」。フリーミアム版も登場した《クリックで拡大します》
図2 図2 Power BIはHTML5をサポートするブラウザーで利用可能であるだけではなく、Windows、iOS、Android用のビューワーアプリも提供され、どの環境でも表現力豊かなレポートを表示できる《クリックで拡大します》

 有償部分となるのは「データへのセキュアなアクセスを保証する認証機能や、1時間ごとなどの短時間で行うデータの更新処理」(北川氏)といった拡張機能だ。また、分析用データを保管するためのディスク容量が増えることによって、クラウド(Microsoft Azure)やオンプレミス用のデータプラットフォーム製品/サービス市場が拡大するという間接的な効果も見込める、と北川氏は説明する。

 企業にとってのPower BIの最大のメリットは、多大なIT投資をすることなく、“民主的な”データ分析をすぐに始められることにある。ユーザーが使うPCを別にすれば、サーバー、ストレージ、ソフトウエアを新たに購入する必要はないからだ。また、経営層に報告する投資対効果(ROI)を気にして最初から大きな目標を狙わなくて済むし、試行している分析方法が見込み違いと分かったら路線を変更したり、撤退したりするのもたやすい。

ビッグデータ分析・処理のための全てのデータプラットフォームを提供

 Power BI(フリーミアム版)は、実際にはマイクロソフトのビッグデータ対応データプラットフォームのフロントシステムを構成するコンポーネントの一つに位置付けられている。

 「マイクロソフトが重点投資領域として考えるITプラットフォームには、処理基盤として使われる“クラウドプラットフォーム”と、データを扱う基盤である“データプラットフォーム”の2種類があります」

 日本マイクロソフトの村松勇介氏(サーバプラットフォームビジネス本部 クラウドアプリケーション ビジネス部 シニアプロダクトマネージャー)は、同社におけるデータプラットフォームのポジショニングをこう説明する。

 「データプラットフォームは、さらに『ホットパス』と『コールドパス』の二つの経路に分けられます。このうち、ホットパスは、IoTやM2M(Machine to Machine)のような“ナマモノ”のデータをそのままの形でリアルタイム・ストリーミング方式によって分析するための仕組みや、予兆保全などの異常検知、アラートなどの業務に活用されます。一方コールドパスは、一定量のデータをリレーショナルデータベースなどの構造化データにいったん溜めこんでからバッチ方式で処理するビッグデータ分析などに使われます(図3)」(村松氏)

図3 図3 IoTやM2M(Machine to Machine)用のホットパスとビッグデータ用のコールドパスを用意。「Microsoft Power BI」はどちらのフロントシステムとしても使える《クリックで拡大します》

 マイクロソフトのデータプラットフォームがこのような構造になっていることから、Power BIを使った“民主的”なデータ分析は、主にコールドパスで行われることになる。典型的な処理手順として村松氏が示したのは、さまざまなデータソースから取得したデータを「Azure Data Lake」(データレイク)に格納し、「Azure Data Factory」(ETLツール)でクレンジングなどの加工を行い、そのアウトプットを「Azure SQL Data Warehouse」(DWHツール)や「Azure SQL Database」に格納して、それぞれの目的に応じて利用する、といった流れだ。

 なお、このコールドパスでは、必ずしも全てのコンポーネントをクラウド側に置く必要はない。「データレイクについては、ペタバイト(PB)クラスの単一ファイルをハンドリングできるAzure Data Lakeの利用を強く勧める」(北川氏)が、個人情報が含まれているなどの理由でデータを企業の外に持ち出すことができない場合などは、Azure SQL Databaseの代わりにオンプレミス版のSQL Serverを使うことも可能だという。

最終形を決めるのは、Power BIで試してから!

 それでは、企業はPower BIとデータプラットフォーム(コールドパス)をどのようにデータ分析に活用できるのか。

 北川氏が勧めるのは、Power BIとMicrosoft Azureを組み合わせて“取りあえずのデータ分析”に使い、うまく活用できる方法やプロセス、粒度がある程度分かってから本格的な分析システムを構築する漸進的な進め方だ。

 「導入の際は、分析ツールありきで製品やサービスを決めるのではなく、『誰が何のためにデータを活用するのか』という原点に立ち返って考えるべきでしょう。専門家が現場を見ずに分析ツールや分析サービスを決めると、とかくオーバースペックになりがちです。現場での意思決定に何が必要か、というところから出発すれば、それほど多くの機能は必要としないはずです」(北川氏)

 しかし、無償サービスのPower BIを現場で使い、取りあえずのデータ分析を実施していると、どのようなデータがどのように分析されることが多いか、が実態として分かってくる。例えば、ドリルダウンの仕方、許される最長応答時間(パフォーマンス)、更新や同期の適切な間隔、使われる頻度が高いグラフやレポートといった項目だ。

 システムの形態についても、DWHを直接参照させるか、データマートを作った方がよいのか、データはクラウドとオンプレミスのどちらに置くか、などはしばらく使ってみないと分からないものである。

 「このような項目を一つ一つ実践を通じて決めながら分析システムの構築を進めていけば、オーバースペックになることなく、しかも抜けや漏れもないコスト最適のシステムになるはずです。ビッグデータなどの分析結果をビジネス現場での意思決定に生かすために、ぜひPower BIを活用していただきたいと思います」(北川氏)

 Power BIは以下のサイトで無料で試すことができます。


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