EMCのバイアス氏が、同社のオープンソース戦略を説明ビジネスモデルはさまざまな選択肢を模索

米EMCのテクノロジー担当バイスプレジデント、ランディ・バイアス(Randy Bias)氏は2015年10月21日、東京都内でプレス・アナリストに向け同社のオープンソース戦略を説明した。同社にとってオープンソースは、第3のプラットフォームの時代の主役だという。

» 2015年10月23日 07時49分 公開
[三木 泉@IT]

 米EMCのテクノロジー担当バイスプレジデント、ランディ・バイアス(Randy Bias)氏は2015年10月21日、東京都内でプレス・アナリストに向け同社のオープンソース戦略を説明した。バイアス氏は同社のエマージング・テクノロジー部門に属し、OpenStackをはじめとしたオープンソース関連の活動を行っている。

 米EMCはオープンソースへの取り組みを強めている。OpenStack Foundationには2012年に参加、その後2014年10月にOpenStack製品ベンダーのCloudscalingを買収して以来、同ファウンデーションとの関わりはさらに強くなっている。バイアス氏自身、CloudscalingのCEOを務めていた人物で、OpenStack Foundationの創立に関わり、現在も理事会メンバーの一人だ。EMCはストレージ関連でも、2015年になってSoftware Defined Storageコントローラーを「CoprHD」としてオープンソース化した。バイアス氏はEMC World 2015の講演で、さらに他の製品をオープンソース化する可能性に言及していた。

米EMCのテクノロジー担当バイスプレジデント、ランディ・バイアス氏

 バイアス氏は、EMCのオープンソースへの取り組みは、いわゆる「第3のプラットフォーム」への流れに強く後押しされていることを説明した。

 同氏によると、第3のプラットフォームに分類される製品群は、現在の伸びを続ければ、2018年あるいはそれ以前に、IT市場の約半分を占めるようになるという。EMCは第2のプラットフォームの時代における主要IT企業だが、「第3のプラットフォームが本格的に開花するまでに、このプラットフォームにおけるリーダー的存在となる」ことを目指し、努力を続けているという。成功するかどうかは未知数だ。だが「競合他社で、これだけ努力している企業はあるだろうか」とバイアス氏は問いかける。

 第3のプラットフォームに関する同社の戦略の柱は、「Software Defined Storage(SDS)とSoftware Defined Data Centerを追求する」「DevOpsおよびアプリケーション開発者との関わりを強める」「オープンソースソフトウエアおよび汎用ハードウエアを活用して、ロックインを防ぐ」「パブリッククラウドと積極的に協業し、クラウド上でストレージ製品が良好に動作するよう図っていく」「オープンソースは最重要と考える」「ハイブリッドクラウドを実現する」。

 第3のプラットフォームは、第2のプラットフォームと完全にアーキテクチャが異なるという点を、バイアス氏は強調した。「第3のプラットフォームでは、可用性を担保するのはアプリケーションだ。グーグルは、日常的に同社のサーバーのうち15パーセントが落ちているというが、サービスが止まることはない」「第2のプラットフォームでは(サーバーを)ペットのように扱い、病気になれば看病して治そうとするが、第3のプラットフォームでは農場(の家畜)のように、新しい牛を連れてくればいい」。OpenStackの世界では、「pets vs. cattle」という上述の議論がよくなされるが、バイアス氏が生みの親だという。

 アーキテクチャ以外の違いとして、第3のプラットフォーム製品は、事業部門やソフトウエア開発者が利用の主役であり、これらの人々が導入の推進役になっていくケースが多い。また、第2のプラットフォームは運用に80%、革新に20%のコスト比率だが、第3のプラットフォームで運用に掛かるコストは20%で、革新に80%のコストを割くことができる」とも話している。

オープンソースは主役、だが複雑であってはならない

 EMCはオープンソースを、第3のプラットフォームの時代の主役として位置付けているという。オープンソースはコードだけの話ではなく、コミュニティであり、文化であり、ガバナンスでもあると、バイアス氏は強調する。

 だが、一般企業は、オープンソースについて、サポートなどの点で課題を感じている。それ以前に、例えばOpenStackは複雑だ。このため重要なのがターンキーソリューション。「第3のプラットフォームの世界においても、ロックインを避けられ、ターンキーの形で容易に使えるようにすることが、非常に大きなメリットを生む」と、バイアス氏は話した。

 では、オープンソースベースの製品について、EMCはどのようなビジネスモデルを採ろうとしているのか。レッドハットのように、オープンソースの製品にクローズドソースの部分を付加せず、ライセンスとサポートを提供するというモデルと比べると、どう異なるのだろうか。これについて聞くと、バイアス氏は、「レッドハットのモデルは、数あるオープンソースのビジネスモデルの一つに過ぎない」と答えた。SDSコントローラーで、オープンソースのCoprHDと商用製品の「EMC ViPR」を並列的に展開しているように、EMCではさまざまな選択肢を試しているという。

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