流通の課題を解決するためにITで新たなビジネスを創出するオイシックスがSIパートナーに求めるものとは特集:Biz.REVO〜開発現場よ、ビジネス視点を取り戻せ〜(6)(1/2 ページ)

ITでビジネスを拡大した先駆者といえるオイシックスのシステム本部 本部長にシステムを拡大する際の体制面の課題やパートナーとなるSIerを選定するポイント、協業する際に重視する点などについて聞いた。

» 2015年10月30日 05時00分 公開
[吉村哲樹@IT]

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市場環境変化が速い近年、ニーズの変化に迅速・柔軟に応えることが求められている。特に、ほとんどのビジネスをITが支えている今、変化に応じていかに早くシステムを業務に最適化させるかが、大きな鍵を握っている。では自社の業務プロセスに最適なシステムを迅速に作るためにはどうすれば良いのか?――ユーザー企業やSIerの肉声から、変化に応じて「ITをサービスとして提供できる」「経営に寄与する」開発スタイルを探る。

本特集、第4回の「新しいツールに飛び付きがちな技術者よ、ビジネスマンとしての基本を軽んずべからず」では、開発者がビジネス視点を持つことの重要性や、ビジネス視点を持つために必要な心掛けなどをお伝えし、第5回の「ロジカルシンキングは必須。変化に強い技術者になるには」では、ビジネス視点を持った開発者像に少しでも近づくには具体的に何をすればいいのか? SI企業の育成施策の事例を聞いた。

今回は、ITでビジネスを拡大した先駆者といえるオイシックスのシステム本部 本部長にシステムを拡大する際の体制面の課題やパートナーとなるSIerを選定するポイント、協業する際に重視する点などについて聞いた。


ビジネスとシステム開発が一体となり成長してきたオイシックス

 市場環境の変化が一層激しさを増しつつある今日、ビジネスを着実に成長させていくために、企業は顧客の好みやニーズの変化にいち早く応えていく必要がある。そのとき重要な鍵を握るのが、ITシステムのアジリティ(敏捷性)だ。今やほとんどの企業において、主要なビジネスプロセスはITシステムによって支えられている。従って市場の変化にビジネスが即応できるか否かは、いかにシステムを迅速・柔軟に開発できるかにかかっていると言える。

 このことにいち早く気付き、システムの開発力を武器にビジネスを急成長させてきたのが、食品のEC事業を手掛けるオイシックスだ。同社では特別栽培農産物や無添加加工食品など、安全性に特別に配慮した食品類を商品としてそろえ、食の安全に敏感な消費者から高い支持を得ている。近年は、ECだけではなくリアル店舗を出店。他社の食品宅配事業や食品EC事業のバックヤード業務を請け負うフルフィルメント(※)事業なども広く手掛けている。

※情報マネジメント用語辞典:フルフィルメント

オイシックスの事業系統図(オイシックスの事業内容のページから引用)

 そんな同社がEC事業をスタートさせたのは、2000年のこと。日本ではようやくインターネットが一般消費者の間で普及し始めたころだ。オイシックスはすでにこのころから、国内におけるEC事業者の草分け的存在として、今日に至るまで順調にビジネスを成長させている。これを裏で支えてきたのが、ITシステムへの積極的な投資だ。同社 執行役員 システム本部 本部長 山下寛人氏によれば、同社のビジネスは「何をするにもITが必要不可欠」だという。

 「例えば、一般的なスーパーマーケットで店舗や店員に当たる部分を、弊社は全てシステムで賄っている。キャンペーンやセールを実行する場合も、全てシステムで対応する。とにかく何をやるにせよシステムが前提となるため、ビジネスとシステム開発は常に一体となって動いている」

 創業後しばらくの間は、まだビジネス規模が小さかったこともあり、自社システムの開発と運用は全て内製で賄っていた同社だが、ビジネスの急成長とともに開発・運用の作業量も急増。社内の要員だけではカバーできなくなってきたため、徐々に社外の開発パートナー企業に作業を委託するようになった。現在同社でシステムの開発・運用に携わる人員の数は、社内外合わせて約50人。うち15人ほどがオイシックスの社員で、残りをパートナー企業の人員が占める。加えて、ベトナムに10人規模のオフショアチームを置き、一部の作業を委託している。

 なお、パートナー企業の要員も基本的にはオイシックス社内に常駐し、社員と机を並べて日々の開発・運用作業に当たっているという。

 「これまでの個人的な経験から、パートナーに常駐してもらった方が、開発がうまくいくことが多かったため、このような体制を採っている。しかし今後は、ますますシステム開発の規模が拡大することが予想されるため、下流の開発工程はリモートで行うことも考えている」

「実績」「Javaスキル」「企業規模」の観点から開発パートナー企業を選定

 このように、オイシックスのシステム開発・運用体制は、開発パートナー企業に依存する部分が大きい。現在では4社のパートナー企業のエンジニアが同社内に常駐し、社員と共に日々の作業に当たっている。パートナー企業への発注形態も案件やプロジェクト単位ではなく、四半期ごとの工数ベースで行っており、社内で新たなプロジェクトが始まるごとに適宜人員がアサインされる。

 この4社の開発パートナー企業の一角を占めるのが、オープンストリームだ。山下氏はオープンストリームをパートナーに選んだ理由を、次のように話す。

オイシックス 執行役員 システム本部 本部長 山下寛人氏

 「かつては、フリーランス技術者の寄せ集めに近いような形で社外の人員を確保していたが、一定の品質や規模を担保するのが難しいと感じていた。そこで、実績があり、ある程度の規模もある企業と協業したいと考え、複数の候補を比較検討した。その結果、システム開発部 部長の普川が前職で実績があり、また豆蔵グループの一員でJavaの開発力が期待できるオープンストリームさんを選んだ。企業規模が弊社と釣り合う点も、重要な選定ポイントの一つだった」

 オイシックスでは、スマートデバイス向けアプリ以外は、ほぼ全てのシステムをJavaで開発していたため、Javaの技術力は重要な選定ポイントだったという。また何千人、何万人という規模の要員を抱える超大手SI企業では、社員数200名に満たない自社の要望にどこまで柔軟に応えてくれるか不安もあったという。「大き過ぎず小さ過ぎず、こちらの規模に見合う規模のパートナー企業を選びたかった」

 現在オープンストリームからは11人のエンジニアがオイシックスに常駐し、さまざまなプロジェクトに携わっている。外注エンジニアというと、下流の開発工程だけを担うというイメージも強いかもしれないが、オープンストリームのエンジニアは上流の設計フェーズから関わることが多いという。

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