レッドハットのホワイトハーストCEOに、OpenStack、Ceph、Ansibleについて聞いた一般企業のOpenStack採用は

レッドハットは11月4日、東京都内でRed Hat forum 2015を開催した。来日した米レッドハットのCEO、ジム・ホワイトハースト氏は、プレス向けの説明会で同社の戦略を説明するとともに質問を受け付けた。筆者は、同社にとってのOpenStackの戦略的な意味、およびCephのInktank、Ansibleを買収した狙いについて聞いた。

» 2015年11月09日 08時43分 公開
[三木 泉@IT]

 レッドハットは11月4日、東京都内でRed Hat forum 2015を開催した。来日した米レッドハットのCEO、ジム・ホワイトハースト氏は、プレス向けの説明会で同社の戦略を説明するとともに質問を受け付けた。筆者は、同社にとってのOpenStackの戦略的な意味、およびCephのInktank、Ansibleを買収した狙いについて聞いた。

 ホワイトハースト氏はこの場における説明で、多くの一般企業がクラウドネイティブな世界に取り組まざるを得なくなってきており、このためにソフトウエア、そしてオープンソースを選択する動きが強まっていると話した。オープンソースを選ぶ第一の理由がセキュリティだとする調査結果を引用し、安いからオープンソースを選ぶ時代ではなくなっていると強調した。

米レッドハットCEO、ジム・ホワイトハースト氏

 レッドハットはあらゆる企業における「第3のプラットフォーム」あるいは「モード2」への取り組みを、完全にオープンソースに基づいて、包括的に支援できるとホワイトハースト氏は話した。ただし同社が他と最も異なるのは、「第2のプラットフォーム」あるいは「モード1」と、「第3のプラットフォーム」あるいは「モード2」の、双方のニーズを満たせる点にあるとした。同氏は証券取引所をはじめとした金融機関や通信事業者などのミッションクリティカルなアプリケーションを、同社のOSをはじめとした製品が担ってきたと、改めて説明している。

 説明の過程で、ホワイトハースト氏は、レッドハットの取り組む市場分野を、調査会社などによる2018年の市場予測で表現するスライドを示した。

OpenStackのレッドハットにとっての戦略的な意味

 そこで筆者は、「このスライドではOpenStackを含むインフラストラクチャー管理製品の予測市場規模が、(レッドハットの取り組む分野)全体の10パーセントに満たないものとして表現されているが、多数の『モード1』企業を顧客に持つレッドハットにとって、OpenStackはどのような戦略的意味を持つのか」と聞いた。ホワイトハースト氏の答えはこうだ。

 「過去数年、OpenStackは多少の問題を抱えてきた。オープンソースプロジェクトであり、大きな関心を集めたために、多くのベンダーは乗り遅れてはならないと考えた。特に(OpenStack専業の)スタートアップ企業は、率直に言って機が熟する前に製品を市場へ送り出した。OpenStack(自体)にインストーラと呼べるようなものが備わったのはほんの一年前だ。商用ソフトウエアだったとしたら、最近まで一般提供(GA)されてはいなかっただろう。だが、今では当社のRed Hat Enterpise Linux OpenStack Platform(RHELOSP)バージョン7は、多くの組織で実運用が始まっている。つまり、時間は掛かったが、とうとう本格利用されるまでに至った。

 あなたは重要な点(注:レッドハットがモード1のアプリケーションを多く動かす企業を多数顧客として抱えていること)を指摘している。OpenStackはスケールアウト型のインフラ基盤だ。レッドハットや他の企業が、フェイルオーバーなどの信頼性機能をある程度組み入れようとしてきたが、OpenStackは元々、ステートレスな、クラウドネイティブ・アプリケーションのために作られた。

 従って、企業でよく見られるのは、ステートフルなアプリケーションには従来型の仮想化を活用し、次世代アプリケーションについてはOpenStackを用いるということだ。

 ただし、多くの企業は現時点で、スケールアウト型のアプリケーションを多数運用しているわけではない。今、構築しようとしている段階だ。そこで、多くの企業は当初、小規模にOpenStackを立ち上げ、アプリケーションが増えるとともに、その規模を拡大しようとしている。企業は、柔軟性の観点から、新しいアプリケーションがステートレスで、スケールアウト型でなければならないことを理解している。

 当社の大規模な事例顧客の一社であるAMADEUS(旅行関連取引事業会社)は、まさにこうした計画を持っている。次世代アーキテクチャでコンテナアプリケーション環境を運用し、新しいアプリケーションは全てそこへ持ち込まれる。一方、同社は多数の従来型アプリケーションを、従来型のステートフルな仮想化基盤であるRed Hat Enterprise Virtualization上で動かし続けようとしている」

Inktank、Ansibleを買収した理由

 筆者は、ストレージソフトウエアのCeph(の開発主体であるInktank)およびIT自動化のAnsibleの買収についても質問した。これらはオープンソースベースのプロジェクトではあるが、他の同様なオープンソースプロジェクトと競合する存在でもある。レッドハットはこうした分野で、特定の技術を推進するということなのか、と聞いた。ホワイトハースト氏の答えは次の通り。

 「『オープンソース』という言葉の使い方には注意したい。AnsibleとInktankは『オープン・コア』モデルだ。Ansibleを使いやすいものにしている管理プラットフォーム『Tower』は独自(プロプライエタリ)コードだ。Cephの管理プラットフォームである『Calamari』も独自コードだ。当社はどちらについてもオープンソース化しようとしている。これらの買収は、私たちがオープンソースにすべきだと考える独自の知的財産権を購入するコストを伴っている。つまり、私たちが関心を持っている分野で、完全にオープンソースの選択肢が得られるようにするため、2社を買収した。

 AnsibleとInktank双方に当てはまるもう一つの理由は、複数の技術のなかから選択を行っているということだ。Cephの場合は、特にOpenStackを利用する顧客の非常に多くが、ストレージに使っている。私たちは必ずしも、何が「正しい」技術かを把握できているとは思わないが、Cephが最も人気の高い技術であることは分かっている。そこで、管理プラットフォームを含め、Cephの全てがオープンであり続けられるようにし、一方で、この技術に対する投資のレベルを高められるように、(買収を)決めた。

 Ansibleもこれに似ている。特に多くのOpenStack導入顧客がこれを使っている。まあ、これは意見の分かれるところで、Ansibleには確かにいくつか競合する技術がある。だが、私たちがAnsibleの人気が今後さらに高まるだろうと考えた理由の一つは、エージェントが要らないという点にある。今後、数百に上るかもしれないコンテナアプリケーションに関する自動化を支援する技術が非常に重要になる。そのときには(コンテナの)軽量さを維持するために、エージェントレスであることが求められる。

 そこで私たちは、顧客が利用しているものに基づき、Ansibleはスケールアウトインフラにおいてアプリケーションに関する自動化を進めるために最良の技術であると判断し、これを複数の技術のなかから選択した」

 では、これらが、何らかの形でRHELOSPに関する推奨製品のような存在になっていくのかと聞くと、ホワイトハースト氏はこれを否定した。

 「ライフサイクルが同期するようなサポートの提供は、当然ながらやっていく。だが強調したいのは、他の選択肢よりも当社の製品が使いやすくなるように、特殊なAPIやその他の対策を講じることはないということだ。(例えば)CephのOpenStackとの関係は、他のストレージコンポーネントと変わらない。私たちは「RedStack」(注:レッドハット独自の、閉じた垂直統合的な仕組みという意味)を作ろうとしているのではない」

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