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» 2015年11月30日 10時00分 UPDATE

エンジニアが、新たなサービスの可能性を検証:電力系クラウドサービス事業者たちが地域を越えてつながり合う理由

クラウドサービスでは、米国の事業者が目立つ。これらの事業者は、多くの場合自社で完結する世界を目指している。顧客にとってみれば、これは「ベンダーロックイン」ともいえる。そうした動きばかりが目立つ中で、ケイ・オプティコム、東北インテリジェント通信などの電力系電気通信事業者は,全国規模でデータセンターがつながり合うクラウドインフラおよび技術の探求を強めている。それはなぜなのか。

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 電力系電気通信事業者といえば、各電力会社の担当地域において、ネットワークサービスおよびデータセンターサービスを展開している事業者だ。データセンターサービスでは、コロケーションサービスやレンタルサーバーサービスに加え、クラウドサービス事業を展開している事業者もある。北海道から沖縄までネットワークインフラがいつでも接続できるようになっている。

 ケイ・オプティコム、東北インテリジェント通信、北海道総合通信網、中部テレコミュニケーション、北陸通信ネットワーク、エネルギア・コミュニケーションズ、および九州通信ネットワークは,相互につながり合うクラウドサービスの運営を目指した取り組みを進めている。2014年には、「VMware vSphere」の機能であるvSphere vMotionにより、仮想マシンを稼働したまま相互間で移動する実証実験を行った。さらに2015年夏には、最新の「vCloud Director for Service Providers(以下、vCloud Director)」を用いて、多地域間のライブマイグレーションやDRの実証実験を実施した。その背景には何があるのか。

気が付けば、VMware vSphereが共通項だった

im_ait_vmwncc01.jpg ケイ・オプティコムの野口貴史氏

 電力系電気通信事業者間では、エンジニア同士が情報交換することは以前からあったという。新たにクラウドサービスを準備していたケイ・オプティコムは、事業者の間ではクラウド後発組だったため、「新しく始めるにはどうしたらいいだろうと、先にやっている会社に個別に相談していました」と技術本部の野口貴史氏は言う。そのうち、同じような課題を持つ企業が集まって定期的に情報交換を行うのがいいだろうということになり、「クラウド情報交換会」が発足した。2012年のことだ。

im_ait_vmwncc02.jpg 東北インテリジェント通信の高橋文男氏

 まず各社の設備やどのような技術を使っているかをヒアリングしたところ、全社の共通項としてVMware vSphereが浮かび上がった。サービスを提供している場合もあれば、社内環境として使っている場合もあったが、どこもVMware vSphereを使っている。それなら、この技術を軸にして何か面白いことができるのではないか、と考えた。

 野口氏は、「主に技術部隊が集まったので、『技術的な検証を通して交流を深めることで、新たなものが生み出せるのでは』と考えました」と語る。また、東北インテリジェント通信の高橋文男氏は、「各社ともクラウドをやるマンパワーは限られていますが、つながることでそれをカバーできるのでは」と思ったという。

 各社ともネットワークサービスが強みだったことから、最初はレイヤー2延伸を生かすことから取り組んだ。2014年には、vSphere vMotionで仮想マシンを日本一周させるテストも行った。これは、サービスのためというよりも技術的な視点で何ができるかを確認するためのもので、北海道から沖縄まで順に仮想マシンのライブマイグレーションを実施した。

東日本大震災で明らかになった新たな課題

 2011年の東日本大震災以降、電力系電気通信事業者は新たな顧客ニーズに直面することになった。広域にわたる災害復旧(DR)だ。

 例えば重要な顧客である官公庁における入札条件が、2011年の東日本大震災以降、変化をみせている。「DRサイトは数百キロメートル以上離れていることが望ましい」「異なる電力会社の管内に置くことが望ましい」といった条件が入ってくることがある。すると、各地域事業者だけでは対応できない。他地域のデータセンターへのコロケーションで個別対応するケースもあるというが、各地域の電力系電気通信事業者が組織的に連係してバックアップやDRを提供できれば、こうしたニーズへの対応が格段にやりやすくなる。

 もちろん、実際にこうしたサービスを提供する場合には、最終的には相互連携に関する組織レベルでのビジネス判断を要する。だが、それ以前に、複数のデータセンター事業者にまたがって、仮想マシンを日常的にライブマイグレーションしたり、レプリケーション(複製)して、万が一の場合には複製先の仮想マシンを立ち上げたりといったプロセスをシステマチックに実行するというのは、技術的に簡単な話ではない。

 しかし、幸いにも、VMware vSphere、これと組み合わせて利用できるネットワーク仮想化製品「VMware NSX」、そしてクラウド管理基盤ソフトvCloud Directorの最新の機能で、こうしたサービスの実現性をまず機能面で検証してみるというシナリオが、大いに現実味を帯びてきた。

 VMware vSphereでは、2011年のバージョン5で、vSphere Replicationという機能が加わったため、DRのためのデータのレプリケーションで、同じベンダーのストレージを対向で使う必要がすでになくなっている。より根本的な問題は、異なる事業者間の運用するデータセンターをまたぐ形で、単一顧客の仮想ネットワークセグメントが構成・利用できるかということだった。

 これまでも、単一のvCenter Server(以下、vCenter)の配下にあるデータセンター間ならレイヤー2延伸(別のデータセンターへの仮想ネットワークセグメントの乗り入れ)が可能だったが、各事業者はそれぞれ、自らvCenterを運用している。ここで解決の糸口の一つとなったのは、VMware NSXの最新バージョンの新機能として加わった、vCenterをまたがる仮想ネットワークセグメントの構成機能であり、これを活用できるようにしたvCloud Directorの新しい機能だった。

 クラウド情報交換会では、今年1月から実証実験に向けたプロジェクトを開始した。そして、7月からvCloud DirectorおよびVMware NSXを用いたクラウド検証用フィールド環境を各社で構築し、最新のvCloud Directorを用いて、多地域間のライブマイグレーションやDRの実証実験を行った。検証環境は、大阪のケイ・オプティコムと広島のエネルギア・コミュニケーションズがセンター設備の役割となり、各社がそこに繋ぎ込むという構成だ。また、データセンター間の連係だけでなく、顧客側オンプレミス環境からの接続とDRも検証するため、各社オンプレミス環境も構築して、役割を決めてテストした。

ty_pict1.jpg 多地域間ライブマイグレーション/DR実証実験の構成(クリックすると拡大)

 各社ともネットワーク技術には長けていたこともあり、NSXによるL2延伸についてはスムーズだった。一方、ライブマイグレーションやDRについては、一部新機能を利用するケースがあり、手探りに近い状態でもあった。ヴイエムウェアのエンジニアと一緒に長時間にわたって作業したこともあったという。それでも、「作業で疲れ切っていましたが、オンプレミス環境から他地域のDRサイトにレプリケーションが成功した時にはわっと盛り上がった」(野口氏)。最先端技術への取り組みが大事だと感じた瞬間だ。

DRサービスの全国連係へ向けて

 今回の実証実験は、まずは連係が可能かどうかを試したものだが、これから容量限界やパフォーマンスについて更なる検証を重ねていく予定だ。そういう取り組みを進めるうえでも、今回の実証実験で技術面の課題やそれに対するトライアル、解決のノウハウを蓄積できたことは非常によかったという。

 ヴイエムウェアの山崎崇史氏によれば、今回の実証実験で利用しているvCloud Directorの基盤は、同社が提供している企業向けパブリッククラウド「VMware vCloud Air(以下、vCloud Air)」で使用しているものと基本的に同じだ。同じVMwareベースのクラウドでも、vCenterとvSphereだけで構成している場合は通常のIaaSになるが、vCloud Directorで提供するということはvCloud Airと同様の柔軟性・ハイブリッド性に富んだマルチテナントクラウドサービスにできるという。ヴイエムウェアはvCloud Airを始めた時点から一貫して、同サービスで実証された技術を、迅速に「VMware vCloud Air Network」(vCAN)パートナーへ提供していく取り組みを続けている。今回の実証実験へのヴイエムウェアの協力も、この方針に基づくものだ。

 ヴイエムウェアは、vCloud AirとvCANパートナー、そしてvCANパートナーのサービスが融合し、顧客が自社のニーズに最適な場所、内容、提供品質のクラウドサービスを臨機応変に組み合わせ、これをあたかもひとつのクラウドであるかのように使える世界を目指している。今回の電力系NCCの技術者たちによる実証実験は、この点でヴイエムウェアにとっても重要な一歩だったといえる。

 今回の取り組みについて、ケイ・オプティコムの野口氏は、「電力系電気通信事業者各社がそれぞれの地域のお客様にしっかりサービスを提供するためには、他地域へのDRを提供できた方がいい。それが技術的に可能だと実証できたことに大きな意味があります。もちろんサービス化するには、事業体が異なるという難しい問題があります。ただ、技術的に可能だと実証し、各社間で情報交換をやっていくことで、実現の可能性を高めていくことができるでしょう」と述べた。また東北インテリジェント通信の高橋氏は、「どうしてもメガクラウドと比べられてしまうなかで、我々が選んでもらうためにはどうしたらいいのかということの、一つの答えともいえます」とした。

 さらに、ケイ・オプティコムの坂東俊英氏は、「サービスができたとして、実際に運用すると、課題やお客様の新たな要望が出てくると思います。それをこのような取り組みであぶり出し、ヴイエムウェアにフィードバックすることで、電力系NCC以外のデータセンター間の連携や、技術の発展にも寄与できるのではという期待もあります。それにより進歩した技術が、再びこちらに返ってきて、新たなサービスが作れるような循環ができればいい」と語る。新しく面白い、世の中に役立つものを作ることに、エンジニアは動機付けられる。クラウド情報交換会のメンバーは、自社内の他の業務を続けながら兼任で実証実験を行ってきた。「大変な作業で疲労困憊したなかでも、うまくいった時は異なる会社の人たちが大声を上げて喜び合っているのを見ると、業務の枠を超えてエンジニアとしてモチベートされるものが、今回の取り組みにはありました」と野口氏は述懐する。

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提供:ヴイエムウェア株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2016年1月15日

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