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» 2015年12月14日 08時00分 UPDATE

人工知能開発成果の公開で悪用を抑制:イーロン・マスク氏、Y-Combinatorのサム・アルトマン氏らが設立したOpenAIとは

米テスラモーターズやSpaceXのイーロン・マスク氏、著名なベンチャーキャピタル企業であるY Combinatorのサム・アルトマン氏などが、2015年12月11日(米国時間)、人工知能(AI)関連技術の開発を行う非営利企業、OpenAIを設立したと明らかにした。最終的な目的は、人工知能関連技術が特定の企業あるいは組織に独占されることで、悪用される危険性を減らすことにあるようだ。

[三木 泉,@IT]

 米テスラモーターズの会長兼CEOで、SpaceXのCEO兼CTOなどとしても知られるイーロン・マスク(Elon Musk)氏、シード段階のベンチャーキャピタルとして著名なY Combinatorのプレジデントであるサム・アルトマン(Sam Altman)氏らは2015年12月11日(米国時間)、人工知能(AI)関連技術の開発を行う非営利企業、OpenAIを設立したことを明らかにした。

im_ait_openai01.jpg イーロン・マスク氏(同氏のGoogle+ページより)

 マスク氏とアルトマン氏は共同で会長を務める。リサーチディレクターには、米グーグルのリサーチサイエンティストだったイルヤ・サツキヴァー(ilya Sutskever)氏が就任した。CTOは、インターネット決済のStripeでCTOを務めていたグレッグ・ブロックマン(Greg Brockman)氏が務める。スタッフについては、グーグル出身者など、人工知能/ニューラルネットワークの研究で知られるエンジニアの名が挙げられている。アドバイザーには、パーソナルコンピューターおよびオブジェクト指向プログラミングの生みの親の一人であるアラン・ケイ(Alan Kay)氏の名も見られる。

OpenAIは何をやろうとしているのか

 OpenAIは、人工知能を人間のレベルに近づけるための研究および技術開発を、特定の事業やその他の目的にとらわれることなく行い、その結果を公開していく。OpenAIのシンプルなWebサイト上のブログポストによると、「研究者は自身の成果を論文、ブログポスト、コードなどの形で公開することを強く推奨される。知的財産権(もしあれば)は世界と共有する。多数の組織の人々と協力し合い、さらに企業と協力して、新技術の開発や導入を進めていく」という。

 このブログポストでは、OpenAIの目標を、「金銭的なリターンを生み出す必要性に制約されることなく、人間性に対して最も恩恵を与えると思われる方法で、デジタルなインテリジェンスを進化させること」と表現している。「AIは人間の意思の延長であるべきで、自由を重んじる立場から、より広く、平等な形で安全に広がっていかなければならない」という。

 背景として、特に近年におけるディープラーニングの進化を強調。現在のAIシステムは機能範囲が限定されているが、そのうちあらゆる知能的なタスクにおいて、人間のレベルに到達することも考えられるとする。こうした人間レベルのAIは社会に計り知れない恩恵をもたらすが、一方で誤った使われ方をされれば、どれほどの害を与えるかも想像できないとしている。

 ジャーナリストのスティーブン・レヴィ(Steven Levy)氏は、OpenAI設立の狙いにつき、マスク氏とアルトマン氏にインタビューした素晴らしい記事を書いている。

 この中でマスク氏は、自身がAIの危険性について懸念を持ってきたことを述べ、AIが良い形で進化する確率を高めるためにはどうすればいいかについて、アルトマン氏などと議論するうちに、「非営利企業の設立はおそらく良いことだろうという結論に達した」と話している。

 レヴィ氏が、「私がDr.イーブル(注:世界征服を目指す悪の組織の支配者の例え)だとして、それ(OpenAIの公開する研究成果)を使ったとしたら、あなたたちは私に力を貸したことにならないのか」と聞くと、アルトマン氏は次のように答えている。

 「その点については、いくつかの考え方がある。人間は、ほとんどの人間が善良であるという事実によって、Dr.イーブルから自分たちを守れる。そして人間性という集合的な力には、悪の要素を含むこともあり得る。そうであるならば、他の何よりも10億倍強力なAIが一つだけ存在するよりも、おびただしい数のAIが存在したほうが、悪の存在が時折出てきたとしても止められる。もし、(圧倒的に強力な)一つのAIが道から外れたり、Dr.イーブルの手に渡ったりしたとしたら、対抗できる存在は何もない。そうなれば私たちはとてもまずい立場に陥る」

PayPal創業者やAWS、Y-Combinatorなどがスポンサーに

 OpenAIのスポンサーとしては、マスク氏、アルトマン氏、ブロックマン氏のほか、PayPalの共同創立者などとして知られ、現在はY-Combinatorのパートナーの一人でもあるピーター・シエル(Peter Thiel)氏、LinkedIn共同創業者のリード・ホフマン(Reid Hoffman)氏、Y-Combinatorパートナーのジェシカ・リビングストン(Jessica Livingston)氏、そしてAmazon Web Services(AWS)、Infosys、Y-Combinatorが10月に設立したばかりの研究開発組織YC Researchが名を連ねている。

 OpenAIは上記のスポンサーから合計10億ドル相当のコミットメントを得ているが、今後長い年月にわたり、そのうちのわずかしか使わないだろうとしている。AWSは同社のクラウドサービスを無償で使わせるという形で協力するようだ。前述のインタビューで、マスク氏とアルトマン氏は、テスラおよびSpaceX 、そしてY-Combinatorが支援するスタートアップ企業から、どのようなデータが提供できるかを検討すると答えている。

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