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» 2015年12月17日 05時00分 UPDATE

特集:IoT時代のビジネス&IT戦略(4):IoT時代の企業がサービス開発で求められる3つの姿勢 (1/2)

社会一般から大きな注目を集めているIoT(Internet of Things)。だが、その具体像はまだ浸透しているとはいえない。今回取り上げるのは、データの分析結果を「現実世界へフィードバック」するために必要となる「サービス開発」だ。今回は、IoTサービスを開発するに当たって、どのような取り組みが求められるのかを具体的に考えていく。

[斎藤公二,インサイト]

 特集第2回の「IoTの循環プロセスを形成する4つのステップとは」では、IoTを支える考え方の一つとして「さまざまなモノや人からデータを収集・処理し、その結果を現実へフィードバックする一連のプロセスによって、ビジネスや社会に価値をもたらすもの」といった定義があることを紹介した。この定義における一連のプロセスは、「現実世界」「データ」「分析・学習」「現実世界へフィードバック」の4ステップに分けることができる。

 そのうち今回取り上げるのは、データの分析結果を「現実世界へフィードバック」するために必要となる「サービス開発」だ。サービスを開発するに当たって、どのような取り組みが求められるのか。MQTT(MQ Telemetry Transport)などのプロトコルの策定に関わるとともに、IoT関連ソリューションを提供している日本IBMのソフトウェア事業本部Analytics事業部第四テクニカル・セールス IoT Technical Leadの鈴木徹氏に話を聞いた。

IoT時代の企業に求められる3つの姿勢

iotnyumon4_1.jpg 日本IBM ソフトウェア事業本部Analytics事業部第四テクニカル・セールス IoT Technical Lead 鈴木徹氏

 「IoTにおけるサービス開発には、大きく3つのポイントが求められると考えています。一つは、デジタル技術に対する姿勢です。新しい技術にアンテナを張り、可能性と脅威を探るために絶えず実験を繰り返す“デジタル工房”のような取り組みが求められます。二つ目は、企業や部門を越えたエコシステムの加速です。自社だけではなく他社も巻き込んだ水平分業型への変化が求められます。三つ目は、Fail-Fastで進化させるアプローチです。モノリシックな開発アプローチから小さな失敗と検証を繰り返すアジャイル開発型のアプローチが求められます

 鈴木氏は、IoT時代のサービス開発の要件をこのように解説する。

 「デジタル工房」とは、つまりトレンド技術への実験室というべき取り組みだ。デジタルで自社サービスが実現できないかを探り、これからの可能性や脅威を予測して社内へ提言を行っていく。その際にはオープンに外部と連携し、顧客から高品質なフィードバックを得る。社内からは、ビジネスの現場をよく知るLOB(Line of Business)利用者と経営課題として取り組む経営層の参加が欠かせない。

 こうした取り組みを進める中で重要になってくるのが、二つ目の企業や部門を越えたエコシステムだ。トレンドが激しく変わる中では、自作技術のみでは対応することは不可能だ。そこで、役割や責任を分担して分業することになるが、ポイントは、これまでのような“上下関係”を持った提携関係ではなく、対等で相補的な立場でのパートナーシップだという。

 そのエコシステムで求められるのが、Fail-Fastの開発アプローチだ。開発するサービスごとに、ビジネスオーナーやリーダーを含め3人程度の少人数のチームを編成し、リリース後にチームを解散するのではなく、ずっと作り続けていく。失敗を建設的なものとして評価し、どんどん改善していくアプローチになるという。

 「もちろん、垂直統合型のエコシステムやモノリシックなアプローチは必要ですが、それに加えて、APIでつながるような水平分業型のエコシステムや、新たに取り組むマイクロサービスなアプローチとうまくバランスをとりながら、企業全体としての施策を推進していくことが大切です」(鈴木氏)

Uberの参入(Uberization)に見る経営者の危機感

 IBMのグローバル調査によると、こうした姿勢が必要になることに対する経営層の理解は確実に進んでいるという(参考記事:調査リポート 世界のCIO、CFOらの声:多くの経営者らが“Uberization”による破壊的イノベーションや業界再編への懸念を示唆――米IBM調査)。

 例えば、2015年に発表した「Global C-suite Study」では、「競合の台頭がどこから起こるか」という趣旨の質問に対し、「業界内での競合の台頭」が2013年の39%から29%へと10%減ったのに対し、「他業界からの競合の台頭」は43%から54%へと26%も増加した。また、イノベーションが起こる場所についても、「自社内のイノベーションの実現」が14%減ったのに対し、「外部を活用したイノベーションの実現」は7%増加し、「パートナーネットワークが拡大する」との回答も70%に達した。

 「Uberの参入がタクシー業界やレンタカー業界に大打撃を与えたように、経営者はアウトサイダーが自社の領域に入ってくることを恐れています。そういった中、今まで以上に、提携先との関係性を深め、隣接業界の企業と連携していくことを模索し始めました。一緒に顧客の声に耳を傾け、ソリューションを作り、イノベーションを実現することが欠かせなくなったのです」(鈴木氏)

 他業界を恐れているだけでは、デジタル企業によって既存秩序が破壊されてしまう。実際、タクシー業界におけるUberだけではなく、ホテル業界におけるAirbnb、ケーブルテレビ業界におけるhuluやNetflix、金融業界におけるPayPalやSquare、金型加工業界における3Dプリンターなど、既存秩序の破壊は着実に起こっている。

 ただ、一方でデジタル企業による破壊的イノベーションをチャンスに変えた企業もある。例えば、フィルム販売店の中には、デジタルカメラの登場を受けて、ビジネスモデルをフィルム販売と現像から写真に付随するサービス業へと転換し、業容を拡大させたケースもある。

 「そんな中、“Uberization”で経営破綻するくらいなら、自らUberizationを起こそう。『UberられるよりUberろう』という考え方を提唱しています。そこで、求められるようになったのが、先に上げた3つの取り組みです」(鈴木氏)

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