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» 2016年01月06日 05時00分 UPDATE

特集:FinTech入門(1):FinTechとは何か? エンジニア、金融業に、不可欠となる技術要件は何か?

「FinTech」が社会一般の注目を集めている。この一大トレンドの中、「決済」をはじめ、あらゆる金融サービスに利便性を求める人々の強いニーズが、今エンジニアたちの創造力を開花させようとしている。

[編集部,@IT]

Web、モバイルの浸透が「ITサービス」の在り方を変えた

 Web、スマートデバイスが深く浸透した現在、Webを介して提供する「ITサービス」が、企業にとって欠かせない顧客窓口となっている。その提供機能やユーザーエクスペリエンスは、収益・ロイヤルティを左右するほどのインパクトを持つため、「いかに素早くニーズをつかんでサービスに落とし込むか」が差別化の大きなカギとなっている。中でも、Eコマースなど多くのサービスにかかわるものとして、 今、最も注目されているのが「決済」をはじめとする「金融サービス」だろう。

 こうした中で、「FinTech」が社会一般から大きな期待を寄せられている。周知の通り、FinTechとは「金融におけるIT技術の活用」を意味する、「Finance」と「Technology」を掛け合わせた造語だ。もちろん、金融業におけるIT活用は今に始まったことではない。だが、金融業にとってもサービス開発・企画のスピード・柔軟性が差別化のカギとなっている他、パブリッククラウドの浸透など、サービスを低コストで迅速に開発・提供できる環境も年々整いつつある。

 これを受けて、「スマートフォンでカード決済ができる」「SNS経由で決済ができる」など、「いかにテクノロジを使いこなして“既存の枠組みにとらわれないサービス”をスピーディに開発できるか」が、勝敗を分かつ一大要件となっている。以前から存在していたサービスを「いかに省力化・効率化するか」ではなく、「いかに顕在・潜在ニーズに応えて、迅速に収益・ブランド向上につなげるか」といった、よりアクティブな意味合いを持つことが、「FinTech」と従来の「金融におけるIT活用」との大きな違いと言えるだろう。

 そしてこのことが、高度な開発スキルを持つスタートアップやベンチャーに活躍の場をもたらしている。一般に、銀行などの金融業では、重厚長大なシステムを長期間かけて開発するウォーターフォールのスタイルが主流。しかし「差別化のスピード」が勝敗を分かつ世界では、ビジネス部門や市場の反応を受けながら迅速・柔軟に開発を進めるアジャイルのスタイルが求められる。加えて現在は、コンシューマのITリテラシ向上とともに、「Uber」「Airbnb」のような、従来は考えもつかなかったサービスが次々と生まれては受け入れられていく時代だ。

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 こうした中では、「全く新しいサービスを作る」「既存のサービスを組み合わせて新しいものを作る」といった、まさしくスタートアップが得意とするスピーディかつ柔軟なサービス企画・開発力がモノをいう。すなわち、「従来型の金融業者ができること」と「今求められていること」にギャップが生まれており、このギャップ自体が、スタートアップやベンチャーにとっての大きなビジネスチャンスとなっているのだ。

 2015年11月25日、アクセンチュアが発表した調査「Fintech Investment in Asia-Pacific set to at least quadruple in 2015」によると、アジア太平洋地域でのFinTech投資は、2015年1〜9月の9カ月間で約35億ドルに達し、2014年の約8.8億ドルから急増。日本国内でも、同期間で約4400万ドルに達している。

ALT 日本国内でも大きな盛り上がりを見せているFintech投資《クリックで拡大》

 分野別では「決済業務」が40%、「融資業務」が24%と続き、従来は「銀行が独占していた領域」での投資が大半を占めているという。

参考リンク:FinTechの投資が拡大(@IT)

FinTechで開花する、ITエンジニアたちの無限の可能性

 2016年、FinTechトレンドは一層加速すると見られている。この背景にあるのは、市場ニーズを収集・分析して新たなサービス創出を狙うIoTや、企業同士がAPIを通じて自社サービスを連携させる「API公開」の活発化だ。分散型記帳や仮想通貨の仕組みなど、暗号化された金融資産取引を支えるブロックチェーン技術の活用も、サービス開発に大きな可能性を開くと言われている。

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 社外一般にビジネスアイデアを求める「ハッカソン」を銀行が主催するなど、金融業者自らFinTechに乗り出していることも見逃せない。「うちはソフトウェア企業だ」という認識を持つ金融業者も増えつつあり、DevOpsによって月6万デプロイという頻度でモバイルサービスを改善し続けているオランダのINGバンクのような例もあるほどだ。

ALT 三菱東京UFJ銀行がハッカソンを主催してITサービスのアイデアを募集した事例。金融機関におけるサービス開発への認識は国内でも急速に変わりつつある

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 では今、金融業者にはどのような可能性があり、サービス開発に携わるITエンジニアには、どのような技術力が求められているのだろうか? ――本特集「FinTech入門」では、注目されている各種テクノロジを分かりやすく解説。「ITでビジネスチャンスをモノにする」方法を、事例も交えて分かりやすく掘り下げていく。ぜひ参考にしてほしい。

特集:FinTech入門――2016年以降の金融ビジネスを拡張する技術

「Finance(金融)」と「Technology(技術)」を足した造語である「FinTech」。その旗印の下、IT技術によって金融に関わるさまざまな業務や処理を利便化し、ビジネスの拡大を図る動きが国内金融業界から大きな注目を浴びている。大手銀行からスタートアップまで「FinTech」という言葉を用い、新しいビジネスを展開するニュースが相次いでいる。言葉が氾濫する一方で、必要な技術について理解し、どのように生かすべきか戦略を立てられている企業は、まだ多くないのではないだろうか。本特集では金融業界がFinTechでビジネスを拡大するために必要な技術要件を浮き彫りにし、一つ一つ解説していく。




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