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» 2015年12月25日 10時00分 UPDATE

最大の価値は“ユーザーの選択肢”:“クラウドの選択肢をフルオープンに”――マイクロソフトとレッドハットの提携がもたらすものとは

企業向けクラウドに関して包括的な提携を結ぶことを発表したマイクロソフトとレッドハット。ソフトウエアの開発と提供ではライバルと目されてきた両社の提携は、クラウドを中心としてソフトウエア業界が大きく変化していることをあらためて印象付けた。両社の提携はユーザーにどのようなメリットをもたらすのか――@IT編集長の内野宏信が、マイクロソフトの新井氏とレッドハットの藤田氏に話を聞いた。

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提携はユーザーのニーズに応えるための“自然な流れ”

@IT編集長 内野宏信(以下、内野) 今回、マイクロソフトとレッドハットが“包括的な提携を結んだ”ことは業界においても大きなトピックであり、今後のソフトウエアの開発・運用の在り方を大きく変える可能性を持った提携だと思います。あらためて今回の提携の背景を教えていただけますか。

新井真一郎氏(以下、新井氏) クラウドが企業に浸透したことで、クラウドをどのように活用すればよいのかが見えてきたことが大きな背景にあります。多くの企業にとっては、ビジネスにスピードやスケーラビリティ、経済性が求められるシステムにはクラウド、それらの要素があまり求められないシステムにはオンプレミス、といった適材適所での使い分けが現実的になってきました。ただし、そうした“ハイブリッドなクラウド環境”には、さまざまな課題があります。それらを解決したいという思いから、レッドハットと包括的な提携を結ぶことになりました。

ALT 企業がクラウドサービスを利用する理由《クリックで拡大します》

内野 マイクロソフト、レッドハットの両社が考えているハイブリッドクラウドの課題とは、具体的にはどのようなものでしょうか。

ALT 日本マイクロソフト マーケティング&オペレーションズ クラウド&エンタープライズビジネス本部 OSSエバンジェリスト 新井真一郎氏

新井氏 既存のデータセンターとパブリッククラウドを、いかにうまく組み合わせるかという課題です。それができなければ、運用コストが上昇し、非効率になります。さらに、クラウドの大きなメリットであるスビードやスケーラビリティ、経済性を享受することができません。マイクロソフトのテクノロジや製品だけで、そうした課題を解決することが難しくなってきています。特に、エンタープライズのLinuxやオープンソースソフトウエア(OSS)のエリアについては、そこで実績を持ったベンダーとの協業がなければ実現できません。

藤田稜氏(以下、藤田氏) そうですね。レッドハットも長年「マイクロソフトと組めれば、ずいぶん楽になるのに」と思ってきました。

 例えば、多くの企業の情報システムでは、クライアントPCはWindows、サーバーはRed Hat Enterprise Linux(以下、RHEL)で構築するというケースも増えています。また、業務アプリケーションに関しても、WebアプリケーションサーバーにJBossを使いながら、ファイル共有にはWindows Server、ID認証にはActive Directoryを利用するといったことも多くなりました。こうしたシステムを効率良く運用するために、レッドハットとマイクロソフトが協力できればどんなによいか、と思うことが何度もありました。

内野 実際、多くの企業において、ITシステムはヘテロジニアスな環境であり、クラウドが普及したことでますますシステムの複雑化が進んでいますよね。

藤田氏 その通りです。お客さまのニーズに応えるため、Active Directory互換の認証機能を開発したり、SMB(Server Message Block)互換のファイル共有プロトコルをオープンソースでも実装したりといった取り組みを続けてきました。ただ、そのようにして複雑化したシステムでトラブルが発生すると、どのベンダーがサポートするかが問題になります。レッドハット側で技術的な原因を把握していても、公式にはサポートができないため、「それはマイクロソフトに聞いてください」と言わざるをえません。これは、お客さまにとっては決してよいことではありません。

新井氏 同じことはマイクロソフトでも感じていました。実は、Microsoft Azure上で、RHELを動かしているお客さまがかなりいました。動作はするのですが、マイクロソフトではMicrosoft Azure上でのRHELを公式にはサポートしていませんでした。何らのトラブルがあったときには「それはレッドハットに聞いてください」となります。こうした歯がゆい思いを両社がしていたと思います。

ALT 企業がクラウドサービスに求めていること《クリックで拡大します》

内野 今回の包括的な提携により、ハイブリッドクラウド環境の活用でユーザーが抱えてきた課題を解決し、ユーザーのニーズに応えられるようになったということですね。

新井氏 はい、そう思います。お客さまがクラウドを使う理由は何か、どのような問題が起こっているのか、何を提供したらよいのかを時間をかけて両社で検討してきました。ようやく今回のような広範囲にわたる提携を結ぶに至りました。

藤田氏 事実、最近は競合しているようで競合していない、むしろ、ヘテロジニアス化が進むシステムの中で、お互いを補うような関係が続いていました。これまでのお互いの関係を見ると、この提携は非常に自然な流れだったと思います。

クラウドの選択肢をオープンにするための協業

内野 今回の提携は単にMicrosoft Azure上でレッドハットのソフトウエアが正式にサポートされるということだけではなく、ミドルウエアや運用管理ツールまでに及ぶ幅広い協業になると聞いています。提携内容の詳細を教えていただけますか。

新井氏 今回の提携では、大きく次の5つの取り組みで協業することを発表しました。

(1)レッドハットの認定クラウド&サービスプロバイダープログラム(Certified Cloud & Service Provider Program:CCSP)にマイクロソフトが参加

(2)Microsoft Azure上でのレッドハット製品の提供とサポート。Microsoft WindowsがRed Hat Enterprise Linux OpenStack PlatformとRed Hat Enterprise Virtualizationでサポート

(3)オンプレミスの企業環境とMicrosoft Azureで稼働するレッドハット製品を含んだ、ハイブリッドクラウドの統合サポートサービス

(4)Red Hat CloudFormsで実装するオープンハイブリッドクラウドのための管理ツールの統合

(5)Red Hat Enterprise Linux、Atomic Host、OpenShiftにおけるMicrosoft.NETの統合

 大きな柱となるのは、マイクロソフトとレッドハットがOSやミドルウエア、運用管理などの領域で展開する各製品について、サポートまで含めて提供するということです。これを実現するために、まず、レッドハットが提供するクラウド認証プログラムであるCCSPにマイクロソフトが参加します。その結果として、Microsoft Azure上でRHEL、Docker環境を構築するAtomic Host、PaaS環境を構築するOpenShift、ミドルウエアのJBossやSoftware Defined StorageのGluster Storageなど、多岐にわたる製品がサポートされることになりました。

藤田氏 逆に、レッドハットはオンプレミス環境やプライベートクラウド環境向けに提供しているRed Hat Enterprise Linux OpenStack PlatformやRHELのKVM(Kernel-based Virtual Machine)環境でWindowsのサポートを行い、Windowsをオンプレミス環境でこれまでよりスムーズに利用できるようにします。

 もともと、前段階として、お互いのハイパーバイザー(KVMとHyper-V)上でOSを相互に乗り入れるための認証リスト(Red Hat Hardware Certification List:HCL)を整備したり、マイクロソフトの認証プログラム(Server Virtualization Validation Program:SVVP)にも参加したりしていました。ただ、Microsoft Azure上でRHELが動くというだけでは、お客さまが安心して利用できるまでには至っていませんでした。そこで、サポートやソリューションの提供までを含めて協業できるようにしたのです。

新井氏 ソリューションの提供でカギになるのは、.NETやOpenShiftです。この点も今回の提携の大きな柱の一つになります。.NETは2015年4月にオープンソース化を発表し、エンタープライズのLinux環境での利用が可能になりました。つまり、OpenShiftのPaaS上で.NETで開発されたアプリケーションが稼働するようになるということです。実際、.NETを使っていたお客さまからは「Linux上で.NETを使ってみたかった。いつからサポートされますか」という声を多くいただいていました。

藤田氏 .NETについてはレッドハットのサポートにとって、良い意味で苦労のしがいがあるところですね。オープンソース化された.NET Coreから取り組むことになると思いますが、今まで触れてこなかった部分でもあるので、急ピッチで対応を進めています。

ALT @IT編集長 内野宏信

内野 今回の提携では、レッドハットのCloudFormsなどの管理ツールも対象になっていますね。マイクロソフトにはSystem Centerという運用管理ツールがあります。お互いの製品やテクノロジをそれぞれのツールで統合的に管理できるようになるということでしょうか。

新井氏 それも大きな柱の一つです。マイクロソフトのクラウド統合管理ツールには、System CenterとOperations Management Suite(OMS)があります。System CenterやOMS、レッドハットのCloudFormsから、オンプレミス、パブリッククラウド、プライベートクラウドなどを組み合わせたハイブリッドクラウド環境を統合的に管理できるようになります。

 そうすると、OSとしてのRHELとWindows、その上で動くJBossやGluster、開発言語としての.NET、PHP、Python、PerlなどのOSS、その実行環境としてのOpenShiftやDocker、それらを統合管理するSystem CenterやOMS、CloudFormsという全てのスタックが相互に利用できるようになります。“クラウドの選択肢をフルオープンにした”ということができます。

藤田氏 そうですね。今回の提携による最大の価値は“お客さまの選択肢”だと思います。お客さまは、好きなものを自由に選択して利用できるようになります。

提携がもたらすユーザーへのメリットとは

内野 “選択肢”が増えることによって、ユーザー企業はどんなメリットを享受できるようになるのでしょうか。

新井氏 まずは、これまで難しかった環境をサポートできる点です。先ほどヘテロジニアスな環境という話が出ましたが、実際にお客さまに話を聞くと、RHELとWindowsを組み合わせた業務システムがかなりあって、それを今後どこに乗せていくかで悩まれているケースが多くありました。クラウドに持って行こうとしても、これまでのMicrosoft Azureではお役に立てなかったり、逆にオンプレミス環境でもOpenStackのKVMで動くWindowsをサポートできなかったりといったことがありました。今回の提携では、お客さまがやりたいと望んでいたことを妨げていた障壁が取り払われることになります。マルチ、ミックス、ヘテロな環境を自由自在に選んで、使っていただけることは大きなメリットになります。

ALT レッドハット グローバルサービス本部 プラットフォームソリューション統括部 ソリューションアーキテクト部 部長 藤田稜氏

藤田氏 スムーズなクラウド移行の支援もかなり進んでいます。例えば、RHEL 6/7には、Microsoft Azureのクラウド環境に最適化したドライバーがカーネルレベルで組み込まれています。このため、Microsoft Azure上でRHELをインストール後に、追加でドライバーをインストールするといった作業は一切必要なくなります。RHELをMicrosoft Azureに展開すると、しっかりとパフォーマンスが出る環境を整えることができます。もちろん、既存のRHEL 6をMicrosoft Azure上に移行する場合も同様です。

 これは以前では考えられなかった状況です。LinuxのカーネルにHyper-Vのドライバーが入っている。そのオープンなソースコードをコミットしたのは、マイクロソフト自身なのですから。お客さまもドラスティックに環境が変化してきていることをご理解いただけると思っています。

新井氏 クラウドへの移行支援という点では、時間課金モデルの提供や、持ち込みライセンスへの対応も大きなメリットになると思います。お客さまからは、開発やテスト環境で時間課金モデルを利用したいという要望をいただいていました。開発やテストフェーズでバグが出たので環境を戻したいという場合、ライセンスがなかったために戻せなかったというケースもあるそうです。時間課金なら複数の環境をすぐに用意できるので、そうしたケースに対応しやすくなります。時間課金モデルは、今後数カ月以内に提供できる見込みです。

 ライセンスの持ち込みについては、オンプレミス環境向けに事前に購入していたサブスクリプションをそのままクラウドに持っていくことができるものです。企業の事情によって、年払いの方が予算を計上しやすかったり、レッドハットの既存のサービスをクラウドで継続して使いたいといったニーズがあります。既存のサブスクリプションをそのまま持ち込めるので、効率良くクラウドへ移行することが可能です。

内野 実際のユースケースとしてはどのようなものがありますか。

新井氏 実際に聞いてみると、レッドハット製品であれば、Microsoft Azure環境でのJBossへの対応ニーズがとても強いという印象を受けました。JBoss EAP(Enterprise Application Platform)とともに、データ仮想化(Data Virtualization)やビジネスルール管理(BRMS)などのソリューションを利用していて、それらをクラウド上でActive Directoryの認証サービスと組み合わせたいといったケースです。

藤田氏 その辺りが、まさに“選択肢”としてメリットになるところだと思います。Active Directoryの管理は、Active Directoryを理解している管理者がこれまでオンプレミスでやってきた。ただし、それをクラウドに持っていこうとすると、LinuxベースのActive Directory互換環境を構築して管理しないといけない。学習を含めて目に見えないコストはとても大きかったと思います。

 対して、クラウド上でActive Directoryが使えるとなると、認証情報は「Azure Active Directory」で、アプリケーションサーバーはJBossでという選択肢が出てきます。従来は「サポートできない構成です」で終わっていたものが、JBossからActive Directoryで認証させたり、Azure上のSQL DatabaseとJBossを簡単に接続したりできるようになります。これまで蓄積してきたActive DirectoryやSQL Serverのノウハウをそのまま生かすことができるのです。これは大きいです。単なるIaaSへの移行でなく、ソリューションとして使えるようになるのです。

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クラウドでのシステムインテグレーションが日本独自の価値を生む

内野 技術的な障壁がなくなり、いつでも好きな製品を選択できるようになってくると、今度は、クラウド自体の信頼性やクラウド上でのシステムインテグレーションをどう行っていくかがカギになりそうです。

新井氏 クラウドの信頼性については、いま世界中で力を入れて取り組んでいるところです。マイクロソフトのデータセンターは世界中に100箇所以上ありますが、過去45日間で100万(CPU)コアをデプロイするなど、今でも急ピッチで拡張し続けています。データセンターへの安全な接続という点では、閉域網サービスのAzure ExpressRouteを提供したり、各種セキュリティ情報の開示に務めたりしています。

 例えば、マイクロソフトに対して政府からのデータ開示要求は、2015年の前半だけで日本で382件ありましたが、該当の法的プロセスに従う必要があり、結果として一件も開示していません。また、マイクロソフトは、広告やデータマイニングのためにデータをスキャンしないことも断言している数少ないベンダーの一つです。当然のことながら、データは多重保存、暗号化保存されており、運用管理メンバーですら顧客データを触ることがありません。

 こうしたことから、海外へのビジネス進出を考えているお客さまから高い評価を得ています。日本国内についても、東日本と西日本の2箇所データセンター拠点を提供していることが特徴です。国内からデータを出さずに、遅延のない地理的冗長を構成できることが評価されています。

ALT 2015年1月〜6月の日本における政府からマイクロソフトに対するデータ開示要求への対応状況(http://www.microsoft.com/about/corporatecitizenship/en-us/transparencyhub/lerr/)《クリックで拡大します》
ALT Microsoft Azureでは、専用線接続(閉域網サービス)の「Azure ExpressRoute」による安全な接続を提供。さらに、東日本と西日本の2箇所データセンター拠点で遅延のない地理的冗長を構成できる《クリックで拡大します》

藤田氏 レッドハットでもシステムのインテグレーションについては、プロフェッショナルサービスとして、コンサルティングから実装、システムの最適化までを提供しています。クラウドについても、クラウドインテグレーションとして、鋭意準備を進めているところです。Microsoft Azure上でのRHELやJBossのサポートをはじめとして、お客さまにとって大きな後押しになります。

 そこでキーになってくるのは、ソリューションを開発したり、システムを具体的に実装したりしていただけるパートナー企業の存在です。パートナーが提供するさまざまなソリューションがMicrosoft Azure上でも利用できるようになることで、お客さまがよりクラウドの価値を引き出すことができるようになると思います。特に、オープンソース中心のパートナーは、今回の提携によってビジネスの場が広がるのではないかと思います。

内野 新しいビジネスモデルを模索するSIerは少なくありません。その意味では、ベンダーやユーザーだけでなく、パートナーの在り方も大きく変わる機会になるかもしれません。

新井氏 今回の提携で大枠は出来上がったと思っています。クラウドの良さを理解していただき、新しいソリューションや新しいクラウドのインテグレーションの在り方を積極的に提供していただきたいと思っています。

藤田氏 その意味では、“1+1が2ではない”提携だと考えています。パートナー企業にも参加していただくことで、“1+1以上の価値”が出てきます。これは日本独自の取り組みとしても、興味深い事例になってくるはずです。

新井氏 “世界一オープンなクラウドを目指す会社”と、“世界一オープンな会社”がタッグを組んだ。そのオープンな土台の上で、クラウドインテグレーターとともにお客さまを支援していければと考えています。

内野 本日はどうもありがとうございました。

◆マイクロソフトとレッドハットが共同セミナーを開催

 マイクロソフトとレッドハットは、昨年11月、お客様のハイブリッドクラウド環境の活用をご支援する枠組みとして、戦略的なパートナーシップを発表しました。

 本セミナーでは、具体的な協業内容や活用例を、マイクロソフト、レッドハット、そしてソリューションを提供する国内パートナー企業よりご紹介します。

  • 開催日:2016年2月18日(木)
  • 会 場:秋葉原コンベンションホール

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提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2016年2月18日

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