以上のような環境になく、去年の自分と今年の自分を比較してみて、「同じくらいの仕事力だ」(=明らかな進歩はしていない)と思うようになったら、何がしかコーチの比率を持つべきだ。そうしないと、ほぼ間違いなく組織から見た自分の人材価値は低下する。
「選手」よりも「コーチ」の方に「やりがい」を感じる場合もあるだろう。こういう人は、上司や経営者に掛け合って、コーチとしての貢献を評価してもらう道を選んでもいい。
一方で、全盛期の選手層を次々育てていく必要を感じている会社も多い。そうした会社では後輩を育てることにある程度の評価を与えることが一般的だ。読者がこうした会社にお勤めなら、後輩社員を育てることの貢献を検討に入れると良い。
大きな組織では、選手をやりながらマネジャーに昇進し、かつコーチ役を演じることもある。この場合、年齢の近い後輩のコーチ役になると、良い結果がもたらされるだろう。一般的に人にものを教える場合、年齢の差があまり大きくない方がうまくいくからだ。
また、上司は部下に後輩の教育を命じる場合、順次新しい内容を教えさせるように仕向ける。すると、教える側も鍛えられる。
30代半ばくらいからは、選手を続けながらコーチとしての比率を少しずつ増やし、選手とコーチの最適な比率を探すことが大切だ。
いささか理想論に聞こえるかもしれないが、人にものを教えることは、自分の知識やスキルを伸ばし、確実なものにするために非常に有効だ。選手をやりながらコーチの役割を意識的に手掛けると、結果的に選手寿命を延ばすこともしばしばある。「選手か、コーチか」ではなく、「選手も、コーチも」だ。
山崎 元
経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員
58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役、獨協大学経済学部特任教授。
2014年4月より、株式会社VSNのエンジニア採用Webサイトで『経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」』を連載中。
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