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» 2016年01月15日 05時00分 UPDATE

ものになるモノ、ならないモノ(69):今ならランキング上位が狙える? Apple TVアプリ開発のススメ (1/2)

2015年9月に発売された第4世代「Apple TV」。実際にアプリ開発を行ってみた筆者が、ユーザー/開発者それぞれの視点から率直な感想を語る。

[山崎潤一郎,@IT]
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アップルらしくないUX・UI

 「Apple TV(第4世代)」を使うたびに、「失望」という言葉が頭の中を漂う。ユーザーとしての失望、アプリ開発者としての失望。二つの失望に向き合いながら、「ユーザーとして、開発者として、自分の選択(Apple TVの購入やアプリの開発)は正しかったのだろうか」と、自問するのだ。

第4世代のApple TV。HDMIケーブルでテレビと接続する。tvOSとA8チップ搭載でキビキビと動作するものの、リモコンを介したUX・UIは工夫の余地あり。今後の進化に期待したい

 とまあ、やけに肩に力の入った書き出しで始めてしまったが、今回のコラムではアップルが2015年10月末に出荷を開始した第4世代の「Apple TV」を取り上げる。いきなり「失望」という言葉を連発してしまったわけだが、実際のところ、アップルらしくないユーザー体験(UX)やユーザーインタフェース(UI)に面食らっているというのが正直なところだ。早い話が、とっても使いにくいデバイスなのだ。

 「テレビというデバイスの性格上、リモコン経由の使用感はこんなものか」という諦めに似た思いもある。だが、やはり根底には「アップルならリモコン操作もなんとかしてくれるに違いない」という期待があったのだ。だからこそ、期待と現実の落差に今しゅんとなっている。

 日本製テレビに付属しているリモコンと比較すれば、付属の「Siri Remote」ではとてもアップルらしいUXを体感できるのだが、リモコンによるUX・UIの追求を放棄してSiriに頼り切っている感もあり、安易な方向に逃げている印象が拭えない。Siriに非対応のサードパーティー製アプリ(Netflixなど)での検索時の文字入力はリモコンで行う必要があり、不便極まりない。スワイプ(フリック)ジェスチャーによる文字入力は、通常の十字キーよりもストレスがたまる。

付属のリモコンでのスワイプ(フリック)ジェスチャーによる文字入力は、通常の十字キーによる入力よりストレスがたまる

 ただ、iOSアプリの「Remote」が第4世代のApple TVに対応したので、iOS端末のユーザーに限っていえば、文字入力のストレスはかなり和らいだと思う。しかし、アップルにはこれで満足してほしくない。「Remote」を単なるリモコンアプリに終始させるのではなく、iOS端末をセカンドスクリーン化するためのさらなる進化を期待したいものだ。例えば、ひかりTVの「りもこんプラス」などは、単なるリモコンの枠を超えて、とても気持ち良いUX・UIを実現している。

ランキング1位でこのダウンロード数?

 一方、アプリ開発者視点で見ても「アップルよ、何を考えているのだ?」「Apple TVアプリは、ビジネスになるのだろうか?」といった疑問が首をもたげてくる。手前みそで恐縮だが、筆者がApple TV向けに開発したアプリ『全6時間ノンストップ環境クラシック - 癒やしの101曲』が、有料アプリランキングで1位を獲得した。ただ、ここでは1位になったことを自慢したいわけではない。1位を得たことで、Apple TVアプリの現在の「市場規模」という現実を思い知るところとなったのだ。

ランキングで1位になった筆者のアプリ『全6時間ノンストップ環境クラシック - 癒やしの101曲』。しかしダウンロードの実数は、驚くほど少ない

 守秘義務違反に問われ、iTunes ConnectアカウントをBANされてはたまらないので詳細な数字は控えるが、ランキング1位という輝かしい成績にしては、ダウンロード数は想像を絶するほど少ない。2桁台後半、3桁には届かずといった程度、と言えばご想像いただけるだろうか。2〜3日にわたり1位をキープしていたにもかかわらず、開発者向けの管理ページで報告される目を覆いたくなるようなダウンロード数は、Apple TV向けアプリストア全体のパイがまだまだ小さいことの証左なのだろう。

 実際のアプリの流通量としては、2015年12月9日付のappfigures blogの記事の中で、全2624タイトルのアプリが登録され、毎週447タイトルの新しいアプリが登場、との報告がなされている。この数字をiPhone向けアプリストア「App Store」のオープン当初と比較してみよう。

 iPhone向けApp Storeは、2008年の7月11日にオープン。その約2カ月後の9月9日には、アプリの総ダウンロード数が1億本を超えている(参考リンク)。ただ、興味深いのは、その9月9日の時点でアプリの総数は「3000種類以上」(リリースより)とあることだ。なんとアプリの総数という点では、現状のApple TVアプリの状況と大きく変わらないではないか。つまり、当時のiPhone向けApp Storeでは、開始から2カ月の短期間で1アプリ当たり平均3万3000ダウンロードという、思わずバンサイしたくなるような数字が踊っていたわけだ。

 ただ、当然ながら3000タイトル全てが満遍なくダウンロードされるはずはないので、ダウンロードはランキング上位に集中していただろう。実際、当時を思い返してみると、日本発の大ヒットアプリでランキング1位を記録した「PocketGuitar」は、2008年秋の時点で50万ダウンロードに達していたと記憶している。PocketGuitarの場合は日本だけでなくグローバルに販売していたので、ドメスティックな筆者のアプリと単純に比較することはできないのだが、それにしても、こうやって数字を突き合わせて比較してみると、現状のApple TVアプリ市場の規模の小ささが浮き彫りになる。

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