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» 2016年02月03日 05時00分 UPDATE

Tech Basics/Keyword:IBM Watson(ワトソン)

Watsonは、IBMが開発した人工知能システム。自然言語の質問に対して、大量のデータから最も最適となる解答を提示してくれるという。すでに医療分野や法律、顧客サポートなどで活用されている。

[小林章彦,デジタルアドバンテージ]
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 「それはワトソンに聞いてください」、探偵ホームズのセリフではない。顧客窓口や医療現場などで、すでにこうした会話が行われているかもしれない。

 これまで担当者の知識や経験、勘などに頼っていた回答を、IBMの人工知能システム「IBM Watson(ワトソン)」(以下、Watson)」が代わりに答えてくれる、そんな時代が来ている。ちなみにWatsonの名称は、名探偵ホームズの相棒ではなく、IBMの初代社長「Thomas John Watson(トーマス・J・ワトソン)」に由来する。

 IBMは、Watsonを人工知能システムではなく、コンピュータが学習、思考し、情報源となる大量のデータから解答の候補を抽出、分析できるシステム「コグニティブコンピューティングシステム」(Cognitive Computing System)であるとしている。「Cognitive」とは「経験的知識に基づく」とか「認識による」「認知的」という意味である。

 Watsonは、DeepQAと呼ばれる質問応答のフレームワークを基に構築されている。DeepQAは、自然言語による質問文が入力されると、文脈を含めて質問の趣旨を理解し、さまざまな情報源から関連性のある情報の検索と解析を行う。そして複数の解答候補の「確かさ」を検証し、解答とともに確信度をリストとして提供する。

DeepQAのフレームワーク DeepQAのフレームワーク
クイズ番組「Jeopardy!(ジョパディ!)」で使われたWatsonについての日本IBMの解説中の図を基に作成した(出展:「Watson:クイズ番組に挑戦する質問応答システム」)。

 このようにWatsonは、大きく分けると、自然言語処理、推論エンジン、知識ベースで構成されている。自然言語処理によって質問文の自然言語を理解・処理するのが特徴だ(音声認識機能は実装されていないため、質問はテキストで入力する必要がある)。推論エンジンによって、質問から仮説の生成とその評価を行い、知識ベースから関連性のある情報の検索、解析などが行われる。なお知識ベースには、質問応答集やマニュアル、過去の回答履歴など、あらかじめ回答を導くために必要となる情報を蓄えておく必要がある。

 回答は、単に検索結果を一つだけ提示するのではなく、これまでの学習データや統計モデルなどに基づいて、確信度とともに複数の提示が行われる。ただ「Jeopardy!」ではクイズ番組ということもあり、最も確信度が高い回答だけが提示された。

クイズ番組「Jeopardy!(ジョパディ!)」に挑戦

 Watsonは、2011年2月16日に米国のクイズ番組「Jeopardy!」に挑戦して、クイズ王二人に勝利したことで有名になった。その時のシステムは、2880個のPOWER7プロセッサを搭載したPower Systems 750で構成され、OSにはLinuxが採用されていた。インターネットに接続しておらず、事前に本や百科事典などを2億ページ分のテキストデータを読み込んで挑んだということだ。

 その後、Watsonはミシュランガイドで2ツ星を獲得したシェフをパートナーとして、独創的なレシピを生み出すといったことも行っている。

商用事例が増えつつあるWatson

 Watsonはすでに英語圏において実用サービスとして利用されており、事例として銀行や医療などが公開されている。

 オーストラリア・ニュージーランドの「ANZ Global Wealth(ANZ)」ではWatsonを利用することで、財務アドバイスの報告書を素早く顧客が入手できるようになったという。シンガポールの銀行「DBS」でも、Watsonを使用して富裕層向け資産運用部門で活用すると発表している。

 また米国やカナダでは、過去の医療データや論文などをデータベースに格納し、Watsonを使って実際の患者の医療データから最適な治療方針や薬などを、担当医にアドバイスするといった活用が試されている。南アフリカの医療保険会社「Metropolitan Health」では、顧客向けの医療相談サービスにWatsonを利用しているという。

 この他、法律に関する質問への回答を支援するシステムなどがWatsonを使って実現されている。

日本語のサポートも開始したWatson

 当初、Watsonは英語のみをサポートしていたが、2015年2月10日に日本IBMとソフトバンクがWatsonに関して戦略的提携を発表、日本語をサポートするため共同でWatsonの自然言語処理機能や日本語学習、日本語対応のAPIの開発などを行っている。

 すでに三井住友銀行がサポート窓口でWatsonを利用することを明らかにしている他、東京大学医科学研究所がWatsonを活用したがん研究を開始するなどしている。またソフトバンクのロボット「Pepper」向けのWatsonを開発し、提供を行う計画も発表している。

Watsonはクラウドサービスで利用可能

 Watsonは、IBMのクラウド開発環境「IBM Bluemix」で利用することが可能だ。分析したいデータをアップロードした上で、質問を入力すると、Watsonが質問の意味を理解してデータを検索、回答を提示する。

 また企業がサポート窓口などでWatsonを利用したい場合、利用申し込み後、ヒアリング、要件設定、開発などを行い、平均6カ月でサービスを開始できるという。

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