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» 2016年03月01日 05時00分 UPDATE

IT資格Watch!(7):特定分野のスキルはもはや差別化の材料にならない――シスコがエキスパートレベル資格「CCIE」を改訂する理由

シスコは、同社の認定資格のエキスパートレベルに位置する「CCIE(Cisco Certified Internetwork Expert)」の改訂を2015年11月27日に発表した。新制度の施行が約5カ月後に迫った今、CCIE改訂の概要とその狙いをあらためて整理する。

[田尻浩規,@IT]

 シスコは、同社の認定資格のエキスパートレベル認定プログラム「CCIE(Cisco Certified Internetwork Expert)」の改訂を2015年11月27日に発表した。新制度は、2016年7月25日以降施行される。現在有効なCCIE資格保有者がすぐに新制度の試験を受験する必要はないが、移行後にCCIEの新規取得や更新を行う場合は、新制度の下での受験が必要となる。

 同社は公式発表の中で、この改訂の背景について「柔軟な利用方法に対応するためのITの急速な変化」や「ビジネスに新たな価値をもたらすデータやアルゴリズム」により、「IT担当者は変化の激しい新しい環境のニーズに対応する必要性が生じている」と説明しているが、その具体的な狙いは何なのだろうか。本稿では、新制度の施行が約5カ月後に迫った今、CCIE改訂の概要をあらためて整理するとともに、改訂の背景についてシスコ 製品戦略マネージャ アントネッラ・コルノ(Antonella Corno)氏に聞く(参考リンク)。

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CCIE改訂の概要

 今回の改訂内容についてあらためて整理すると、大きく、以下の三つの変更点が挙げられる。

  • 筆記試験のドメイン(試験項目)に、「最新テクノロジー」を追加
    CCIEは「筆記試験」と「ラボ試験」の二部構成となっているが、そのうち筆記試験の新たなドメイン(試験項目)として「クラウド」「ネットワーク プログラマビリティ」「Internet of Things(IoT)」からなる「最新テクノロジー」が追加される。最新テクノロジードメインの配点割合は10%で、残りの90%は従来通りの「コア テクノロジー」ドメインとなる。また、最新テクノロジードメインは、今後のテクノロジートレンドの変化に対応する形で、およそ1年スパンで更新される予定。

  • 筆記試験とラボ試験のドメインを一本化(「CCIE Data Center」から順次適用)
    従来のCCIEでは筆記試験とラボ試験それぞれで全く異なる試験項目が準備されていたが、改訂後バージョンでは、筆記試験、ラボ試験でドメインが一本化され、試験内容が統合される(下図)。この新たな試験形式は、はじめに「CCIE Data Center」に2016年7月25日以降適用され、他の領域のCCIE試験に対しても、その後の改訂時に順次適用される予定。
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  • ラボ試験での「デュアル モニタ デスクトップ」の提供
    試験のフレームワーク変更により、ラボ試験は今までより「複雑になり、試験中に大きな画面が必要となる」(シスコ)。これに合わせて、ラボ試験においては受験者向けに「デュアル モニタ デスクトップ」が用意されるようになる。

 これら3点の改訂事項の背景にはどのような狙いがあるだろうか。

改訂の背景と狙い、受験者への影響

c4.jpg シスコ 製品戦略マネージャ アントネッラ・コルノ(Antonella Corno)氏

 コルノ氏によれば、今回の改訂で「最新テクノロジー」を筆記試験の項目として追加した理由は、「ITエキスパートに求められるスキルセットの変化」であるという。その背景には、近年のITにおける大きなトレンドの変化、「端的に表すなら『デジタル化』がある」(コルノ氏)。

 過去数年間で、ITトレンドの中心はインフラからアプリケーションへと移動してきており、インフラだけにフォーカスした試験内容では、こうした変化にエンジニアが対応する上で十分ではないとコルノ氏は言う。また、インフラからビジネスまでに至るシステム構成の「非サイロ化」が進行している現在、「エキスパートには、全ての領域に関する知識が求められる」のだという。

 最新テクノロジーの中でも特に「クラウド」「ネットワーク プログラマビリティ」「Internet of Things(IoT)」の三つを選択したのは、外部の専門家へのインタビューや、デザインワークショップなどのプロセスを経て、各技術分野の重要性の見積もりを行った結果であり、「10%」という配点比率も、このプロセスの中で決定されたものだ。

 また、はじめにエキスパートレベルの資格から改訂を始めるのは、彼らがしばしば顧客など、業界内外からトレンドに関する「質問をされたり」「意見を求められたり」することがあるからだという。例えば、「IoTが弊社に与えるインパクトはどの程度のものなのでしょうか?」といった顧客からの質問に対して、エキスパートレベルのエンジニアたちが満足のいく回答を行うためには、「誰よりも早くトレンドに追い付いておく必要がある。実務レベルの深いスキルはなくても、最低限トレンドに関する全体観程度は備えておくべきだ」(コルノ氏)。筆記試験のみに新項目を追加するのも同じ理由による。コルノ氏によれば、もはや特定分野のスキル・知識はエキスパートにとって差別化の材料にはならないのだという。

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 また、本改訂が資格受験者に与える影響について聞いたところ、「はっきり言って、試験は難しくなる」とのことだ。というのも、「われわれを取り巻くITの環境が複雑化してきているのは事実であり、試験もそれを反映する他ないからだ」(コルノ氏)。ただし、受験者に対しては学習のための「DevNet」のようなツール提供、支援を行っていく。筆記試験とラボ試験を一本化したのも、受験者が「試験のため学習をする」ような事態を避け、「実務スキルを磨くことが、筆記試験・ラボ試験両方の合格につながるようにする」ためだ。

 今後の展望、改訂の予定については、2〜3年に一度、全体的な改訂を実施するとともに、「新しいテクノロジー」ドメインを1年程度のスパンで改訂していく。これは、新しいテクノロジーは「メインストリーム」に定着するか、「捨て去られる」か、急速に移り変わっていくからだ。「本試験の合格を目指すことで、自然と最新のテクノロジーを理解できることが受験者にとっての最大のメリットだ」(コルノ氏)。

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