「ウオーターフォールかアジャイルか」ではなく「目的に最適かどうか」、“本質を見極める視点”が勝負を分ける――グロースエクスパートナーズ特集:アジャイル時代のSIビジネス(3)(1/3 ページ)

クラウドの浸透などを背景に、「SIビジネスが崩壊する」と言われて久しい。だが顕在化しない“崩壊”に、かえって有効な手立てを打てず不安だけを募らせているSIerも少なくないようだ。本特集ではSIビジネスの地殻変動を直視し、有効なアクションに変えたSIerにインタビュー。SI本来の在り方と行く末を占う。

» 2016年03月16日 05時00分 公開
[斎藤公二/構成:編集部/@IT]

 ビジネス展開に一層のスピードと柔軟性が求められている今、それを支えるシステム開発・運用についてもクラウドネイティブな技術、新しい技術が注目を集めている。だが言うまでもなく、最新の技術を使えば全てを解決できるわけでもなければ、技術そのものが課題を解決してくれるわけでもない。技術を選び、使いこなし、正しく適用する、すなわち人の力があって初めて、技術は意味を持つ。また、それがSIer本来の能力、役割ではなかったか――。

 今回は、グロースエクスパートナーズ 執行役員 アーキテクチャ事業本部長 兼 ビジネスソリューション事業副本部長の鈴木雄介氏にインタビュー。SIerにとって「本当に大切なこと」を聞いた。

「ITの戦略的活用」で企業に歴然とした差

 「顧客と共に成長して行くパートナー」を意味するグロースエクスパートナーズは2008年に設立。システムコンサルティング、システムインテグレーション、Webマーケティングなどのクリエイティブプロデュースを主事業として、大規模なエンタープライズ企業を中心に、製造、流通、金融、医療、通信といった各業種に顧客を持つ。「持続可能な革新をもたらすICTサービス提供」を目指し、ウオーターフォールに象徴される伝統的なSI手法にも対応しながら、顧客企業のビジネス目的に応じて必要なプラクティスや技術があれば進んで取り入れる、柔軟な開発体制を1つの特徴としている。

 同社執行役員 アーキテクチャ事業本部長 兼 ビジネスソリューション事業副本部長を務める傍ら、日本Javaユーザーグループ会長、日本Springユーザーグループ幹事などのコミュニティ活動でも知られる鈴木雄介氏は、「SIビジネス崩壊」などと指摘されている近年の状況について、次のように話す。

ALT グロースエクスパートナーズ 執行役員 アーキテクチャ事業本部長 兼 ビジネスソリューション事業副本部長 鈴木雄介氏

 「SIはソフトウェアの開発力を外部に持つという、日本企業における歴史的経緯の下に生まれた業種です。受託開発というビジネスモデルやSIという概念をなくす必要はありませんし、なくなることもないと思います。まだ非効率なところも少なくありませんが、今置かれた状況の中で、顧客企業のビジネス目的を支援する上では何をどう効率化すべきなのか、より良いシステム提供を目指して、日々取り組み続けられるか否かが重要だと考えます」

 IT投資の回復傾向も受けて、現在は同社も含め、増収を続けるSIerは多いが、好況がこのまま継続するとは見ていない。「今の好況はリプレースのタイミングと景気の追い風を受けているだけであり、需要が一巡する来年から再来年にかけては、期待するほど需要は伸びない状況になっていく」と考えるためだ。ただ、リプレース・改修案件が中心的な中でも、ユーザー企業のニーズは着実に変わりつつあるという。

ALT グロースエクスパートナーズのサービス一覧

 「速く、安くというニーズは昔から同じですし、既存システムの改修要望も依然として多いです。しかし大きく変わってきたのは、“ITを戦略的に使う”ことができる企業と、それが苦手という企業の差が歴然とし始めていることです。実際に、多くの経営者の方がそうした課題認識を抱いていると思います」

 この「ITの戦略的な活用」とは、「売上への寄与」や「コスト効率向上」といった目的に対して、「ITには何を任せ、人は何をやるべきかをきちんと考え、実行すること」だという。エンタープライズでは、ビジネスの全てをITだけで回せるわけではなく、人が手をかけなければ、サービスとして、ビジネスプロセスとして完結しない場合が多い。よって、ビジネス目的を達成するためには、単にシステムを導入するのではなく、ビジネスプロセスにしっかりと埋め込む必要があるわけだ。

 「実際、単に『システムを開発して納品してほしい』ではなく、『企業として変わっていくために、パートナーとして協力してもらえないか』という形で、数多くのご依頼をいただいています。エンタープライズは人がいないとビジネスが成り立ちません。そこを顧客企業と共に考えながら、いかにより良いビジネスプロセスに変えていくか。ここを担えることがSIerという仕事の面白いところです」

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