オラクルが担うクラウドと「バイモーダルIT」、あらためて“POCO”に込めた真意Oracle Cloud Platform Summit Tokyo基調講演レポート(1/2 ページ)

日本オラクルが「Oracle Cloud Platform Summit Tokyo」を開催し、杉原社長らが日本における同社のPaaS/IaaS戦略を説明。新旧のIT需要を両立する「バイモーダルIT」を支えるのは、Oracle Cloud Platformだとアピールした。

» 2016年05月19日 09時00分 公開
[加山恵美@IT]
photo 日本オラクル 取締役 代表執行役社長兼CEOの杉原博茂氏

 日本オラクルは2016年4月26日、クラウドサービスに関するイベント「Oracle Cloud Platform Summit Tokyo」を開催。日本オラクル 代表執行役社長兼CEOの杉原博茂氏らが基調講演に登壇し、今後の日本市場に向けたクラウド戦略を語った。

 同社は、クラウドビジネスにおけるスローガンを「The Power of Cloud by Oracle」とし、その頭文字を取って「POCO(ぽこ)」という愛称で呼んでいる。このPOCOには、製品やサービス、技術によって提供できる「社会貢献」の意図が込められているという。登壇した杉原氏は「日本オラクルは、社会に貢献するナンバーワンクラウドカンパニーを目指している」と、あらためてクラウドを軸にした日本市場に向けたビジョンを示した。

 社会貢献を持ち出したのは、少子高齢化が進み、労働者人口は減る一方とされる、日本のこの先の社会情勢が背景にあると杉原氏。日本の労働生産性は、OECD(経済協力開発機構)主要先進7カ国で最下位。加えて、2020年には人口の約3割が65歳以上の高齢者になるとされ、日本における労働者の生産性向上は喫緊の課題と叫ばれている。

 「私たちの世代は、(高齢になっても)『働いてください』ということかもしれません。あの国民的マンガに出てくるお父さんのように、世田谷区に一軒家を持ち、悠々自適に盆栽を愛でる老後は過ごせないかもしれません。一方、(米オラクル創業者/現CTOである)ラリー・エリソンは、今73歳です。それなのに毎日会議に出てガンガン働いています」(杉原氏)

 エリソン氏のように70歳を超えても精力的に働けるかどうかはさておき、一般的に、成長が課せられながら人員が減った場合、人員を増やすか、1人当たりの生産性を高めて対処するかを考えるだろう。前者は定年後も働き続けてくれる人員の確保や体制の構築、後者は「どう効率化するか」が課題となる。だから日本オラクルにとってクラウドの取り組みは、「日本が抱えるこれらの課題を克服する社会貢献」という大きな側面も持つのだという。

 オラクルの「Oracle Cloud Platform」は、クラウドの分類では、PaaS(Platform as a Service)とIaaS(Infrastructure as a Service)をカバーする。チップからサーバ、OS、開発環境、アプリケーションまでをオラクルが持つ技術で一貫して構成できることで、Oracle Cloud Platformは、「俊敏(Agility)+トータルコスト(TCO)+簡単に使える(Ease of Use)、そして安心、安全が他社にない強み」と杉原氏は強調した。

「デジタルディスラプション」に備えよ

photo 日本オラクル クラウドテクノロジー事業統括 副社長 執行役員の石積尚幸氏

 続いて、同社 クラウドテクノロジー事業統括 副社長の石積尚幸氏が登壇。石積氏の出身地という北海道小樽市の北一硝子の取り組みを例に、「ディスラプション(時代・市場環境に応じた破壊的変革)」とはどういうことかを説明した。

 北一硝子は、石油ランプの製造で起こされた明治時代より続く企業。電化製品の普及とともに、業態をニシン漁業の浮き球(ガラスの丸ブイ)製造へ転換。低コストのプラスチック製浮き球の登場や漁業の衰退で再度事業が斜陽化すると、小樽運河の観光客を見込んだ観光みやげのガラス器販売業を開始。このように幾度の業態変革を迫られながら、現在に至っている。ちなみに、市内に数店あるれんが造りの同社の店舗は小樽の観光名所の1つとして知られている。

 同様に、大きく業態を変革している企業として、デジタルカメラの普及によって、フィルム/カメラ事業から、医薬品や化粧品・総合ヘルスケア事業への変革を進める富士フイルムグループもそうだ。このように、培った技術を生かしながらも、時代の変化に応じて変革し続けるには、「ちょっとしゃがんで、機を見てパッと動けるような柔軟性を持つことが大事です」と石積氏は述べる。

 必要なのは対応力という。企業は新旧2つの“モード”に対応するのが重要と石積氏は述べる。最近では「バイモーダル」という言葉で表される。しかし、ガートナーの調査によると「2017年までにIT部門の75%はバイモーダルな対応力を備えるようになる。ただし、その半数はうまくいかない」という指摘があるように、成否を分けるのは管理の柔軟性があるかどうかにかかっているという。

 オラクルが考えるバイモーダルITの片方は、従来のエンタープライズ需要をカバーし、堅牢性を高める、つまり「コスト効率を高める」ための従来のIT需要だ。もう片方は、イノベーションを生み、流動性のある新しいIT、つまり「競争力の強化を追求する」ことが目的となる。

 石積氏は、「Oracle Database」や「Java」などが前者で、「NoSQL」やスクリプト言語などが後者であり、両者を併用するのに必要なのが「クラウド連携機能」や「運用管理製品」であると説明。オラクルは買収や自社開発により、古い技術から新しい技術まで製品やサービスを包括的にそろえていることを強みとし、そのことが新旧のIT需要を両立する、バイモーダルITを提供できるとする根拠だと語った。

バイモーダルITを支えるとうたう「Oracle Cloud Platform」 バイモーダルITを支えるとうたう「Oracle Cloud Platform」
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