「無知の知を自覚する場」、アンカンファレンスって何だITエンジニアの未来ラボ(7)

アンカンファレンスイベント「Japan ComCamp meets de:code」が2016年5月23日に開催される。アンカンファレンスとはそもそも何か、ITエンジニアが参加するメリットをイベントの主催者に聞いた。

» 2016年05月20日 05時00分 公開
[唐沢正和ヒューマン・データ・ラボラトリ]

 2016年5月23日にさまざまなコミュニティーが集結するアンカンファレンスイベント「Japan ComCamp meets de:code」が開催される。これは、2016年5月24日、25日に開催される日本マイクロソフトのエンジニア向けカンファレンス「de:code 2016」の前日に、同じ開場で開催されるイベントだ。本稿では、主催者にその背景や狙い、アンカンファレンスとはそもそも何か、ITエンジニアが参加するメリットを聞いた。

左から、Japan Azure Users Groupの冨田順氏、SQLTOの大和屋貴仁氏、日本マイクロソフト デベロッパー&エバンジェリズム統括本部 マーケティング部 Senior Audience Evangelism Manager 熊本愛華氏、同社 デベロッパーエクスペリエンス&エバンジェリズム統括本部 エマージングテクノロジー推進部 部長 砂金信一郎氏

 「Japan ComCamp meets de:code」は、コミュニティーに所属しているメンバーや開発に興味がある人であれば、誰でも無料で参加できるアンカンファレンスイベント。日本マイクロソフトからさまざまな最新技術情報が紹介されるde:code 2016に対して、前日に開催されるJapan ComCamp meets de:codeは、参加者が全員で作り上げる参加型のイベントとなる。

そもそもアンカンファレンスとは、何か

シグマコンサルティング CTO 冨田順氏

 では、そもそもアンカンファレンスとはどのようなイベントなのだろうか。主催者であり、コミュニティー「Japan Azure Users Group(JAZUG)」に所属しているシグマコンサルティングの冨田順氏は、「アンカンファレンスは、参加者自らがスピーカーとなり、自分の話したい内容を発表するイベント。スピーカーも発表内容も当日、その場で決まるので、誰がどんなことを発表するのかは、会場に行くまで分からない。スピーカーは、事前にホワイトボードなどに話す内容のタイトルのみを、空き時間の枠に付せんで貼り付けておくので、参加者は、タイトルを見て内容が気になったものを見にいく。今回のイベントでは、スピーカーの持ち時間は15分で、計24スロットを用意する」と説明する。

 今回、de:code 2016の前日にアンカンファレンスを開催する背景について、日本マイクロソフトの砂金信一郎氏は、「当社では、エンジニアのコミュニティー活動を積極的に支援しているが、その中で地方を含む多くのエンジニアが集まるde:code 2016に合わせて、コミュニティー主導による交流イベントが開催できないかと考えた。堅苦しいイベントではなく、コミュニティーならではの“やんちゃな精神”で、エンジニア個人として自由に発言できる場として、アンカンファレンスを開催することになった」としている。

アンカンファレンスの受付ボードの例(記事「機械学習時代がやってくる――いいソフトウェアとマルウェアの違いは?」より引用)

アンカンファレンスで話すことの何がメリットなのか

 主催者でコミュニティー「SQLTO」に所属するgloopsの大和屋貴仁氏は、「参加者は、発表の場に自由に出入りすることができ、会場ではお酒も振る舞われる。そのため、もしスピーチが失敗してしまってもダメージは少ないはず。特に、スピーチデビューしたい若手エンジニアにとっては、とても良い機会になる。失敗を恐れることなく、世代交代を促進する意気込みで、ぜひチャレンジしてほしい」と、今回のアンカンファレンスを通じてコミュニティーから新たな人材を発掘していきたい考えを示した。

 de:code 2016の前日に開催されるというタイミングもポイントだ。「参加者を増やしたい思いで、航空券やホテルとセット販売を企画したこともあり、de:code 2016には全国各地のコミュニティーからエンジニアが集結する。前日開催であれば、こうした地方のエンジニアも参加しやすく、交流の幅をさらに広げることができる」と話すのは、日本マイクロソフトの熊本愛華氏。「de:code 2016が、マイクロソフトから最先端の技術情報を受け取る場であるのに対して、コミュニティーは、既存の技術による新たな活用法や応用例をエンジニア自らが発信し、共有する場となる。米国のように、知識習得やスキル向上のための活動として、コミュニティー活動を本業務の一環に取り入れられるような支援もしていきたい」。

 「そもそもエンジニアは、自分の世界に入りがちなので、世の中の『普通』が何なのか理解できていない人も多い」と冨田氏。大和屋氏も「アンカンファレンスに参加して、年齢や性別、キャリアを問わず交流することで、エンジニアとしての知見を深めることができると考えている」と、アンカンファレンスに参加するメリットを訴えた。

「最高の“1人ぼっち”対策は、思い切ってスピーカーになること」

gloops システム統括部 インフラグループ 兼 情報システムグループ マネジャー 大和屋貴仁氏

 一方で、こうしたイベントに参加してみたくても、「コミュニケーションが苦手で“1人ぼっち”になってしまうのがイヤ」という人も少なくないはずだ。冨田氏は、「最高の“1人ぼっち”対策は、思い切ってスピーカーになること」と指摘する。「何を話せばよいのか分からないという人は、自分が今まで経験したことや、開発したものを振り返ってほしい。必ず、誰かのために役に立つ情報が眠っていると思う。スピーカーとして参加すれば、見てくれる人は必ずいるので“1人ぼっち”の心配はなくなる」とアドバイスしてくれた。

 「今でこそイベント全体を仕切っている冨田さんや大和屋さんは大手SIerの出身。コミュニティーへの参加がきっかけとなって、その後のキャリアを大きく変え、Microsoft MVPとして活躍してくれている。日本のIT業界では『会社の看板を背負うと自由に発言できない』とためらう人が多いことも理解しているが、アンカンファレンスにエンジニア個人として参加して、交流して、発表してみてほしい。きっと新しい視点で技術や仕事と関われるようになる」と砂金氏は2人の過去を振り返る。

 「アンカンファレンスでは、多種多様なテーマを持ったエンジニアが自分の声でスピーチを行う。そこには必ず新しい発見があり、まだまだ知らないことが多い自分に気付かされる瞬間がある。それだけでも、アンカンファレンスに参加する価値は大きい」(大和屋氏)。冨田氏は「“無知の知”を自覚する場としても、アンカンファレンスに参加してみてはいかがだろうか」と勧めていた。

 なお、実際のアンカンファレンスの様子が、どのようなものかについては、イベントのレポート記事を掲載予定なので、楽しみにしていてほしい。

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