秀丸・xeyes・iOSシミュレータが動く! Windows 10、Xamarin、Cognitive Servicesの最新機能と活用例――de:code 2016基調講演ITエンジニアの未来ラボ(11)(3/3 ページ)

» 2016年06月10日 05時00分 公開
[柴田克己@IT]
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多様なサービス提供で活用範囲が広がる「Microsoft Azure」

 次のテーマは「クラウドプラットフォーム」だ。マイクロソフトが展開するクラウドサービス「Microsoft Azure」(以下、Azure)について、Guggenheimer氏は「ハイパースケール」「ハイブリッド」「エンタープライズレディ」の3点が「特にユニークである」と解説。その活用範囲も、Azure上で展開するサービスの拡大に合わせ、Xamarinのテスト環境から、BI(ビジネスインテリジェンス)をはじめとするデータビジュアライゼーション、IoT分野へと急速に広がりを見せていると述べた。

 Azureの新サービスに関するデモとして、初めに紹介されたのは「Embedded Power BI」だ。Power BIは、2015年にリリースされたデータ可視化ツールであり、多様なソースから取り込んだデータを、直感的な操作でビジュアライズできる。デスクトップツールとWebアプリの両方で利用でき、無償版も提供されている。

 今回紹介された「Embedded Power BI」は、独自に構築したビジネスアプリケーション内にPower BIベースのレポート機能を組み込める、Azure上のサービス。デモでは「Power BI Embedded Workspace」と呼ばれるリポジトリをPower BIツール上で作成。独自アプリからこのリポジトリに対してアクセスすることで、あらかじめ設定しておいたPower BIレポートを、そのアプリの一部として表示できる様子が示された。Power BIの持つ多彩なビジュアライズコンポーネントを活用できることで、独自アプリのユーザビリティを高められるという。

「Embedded Power BI」のデモ

 次に紹介されたのは「Microsoft Cognitive Services」だ。マイクロソフトではAzure上で、検索や機械学習による画像認識、音声認識、自然言語処理などを実現するAPI群を提供している。現時点でプレビュー版を含めて22のAPIが公開されている。

 基調講演では、アップロードされた画像に対して「ボールを投げている野球選手」や「野原に立つ女性。隣に牛がいる」といった形で適切な注釈を付ける「CaptionBot.AI」と呼ばれるアプリケーションがデモされた。バックエンドでは「Computer Vision API」「Emotion API」「Bing Image Search API」を利用しており、これらを組み合わせることで写真の被写体やその状況を正しく表現することを可能にしているという。

CaptionBot.AI」のデモ

 もう1つは、顔認識を行う「Face API」とハードウェアを組み合わせた「Facial Recognition Door」で、ホームセキュリティなどに応用可能な技術デモとして、Windows IoTチームによって開発されたものだという。あらかじめWebカメラによって登録した人物の顔とドアの前に立っている人物との顔を照合することで、物理的にドアロックを開閉する仕組みになっている。ハードウェア制御についてはRaspberry Pi上のWindows 10を利用。Facial Recognition DoorのコードやドキュメントについてはGitHubで公開しており「関心を持った方はぜひコードを見て、自由に開発を進めてほしい。コントリビューションも大歓迎」(Guggenheimer氏)としていた。

Facial Recognition Door」のデモ


 このように、基調講演の後半は、前半でNadella氏が述べた3つの野心「インテリジェントなクラウドプラットフォームの構築」「生産性とビジネスプロセスの再構築」「さらなるパーソナルコンピューティングの創造」をさらに深掘りするような具体的なデモを並べることで、これらについてさらに印象付けるものとなっていた。

 Guggenheimer氏が基調講演後半の冒頭で「モバイルファースト、クラウドファースト、さらにマルチデバイスが当たり前になり、オープンソースソフトウェア(OSS)がテクノロジートレンドを主導する時代、そして全ての企業がソフトウェア企業となる時代において、市場やコミュニティーにどう関わっていくべきかが、われわれの重大な関心事になっている」と述べていたように、現在は全ての企業に「デジタルトランスフォーメーション」が求められているといえるだろう。そのような時代にITエンジニアはどうやって社会や企業に貢献していくべきなのか。そのヒントの一端は、マイクロソフトが提示する数々のソリューションの中にあるのかもしれない。

 なお基調講演では、さらに「Mesosphere DCOS」の開発者であるアーロン・ウィリアムズ氏、HashiCorp創業者のミッチェル・ハシモト氏、Jenkinsの開発者である川口耕介氏、Chefのバイスプレジデント、ジェームズ・ケーシー氏ら、DevOps&OSSのそうそうたる開発者が登壇し、マイクロソフト シニアテクニカルエバンジェリスト DevOps 牛尾剛氏が紹介する一幕もあったが、彼らの紹介については、この面々によるパネルディスカッションの講演が別途あったため、後日公開の別記事に譲ることとする。本特集「ITエンジニアの未来ラボ」とは別の特集「DevOpsで変わる情シスの未来」で公開予定なので、注意してほしい。

 「ITエンジニアの未来ラボ」の次回は、コミュニティーのキーパーソンへインタビューした記事を掲載予定。マイクロソフトの技術とOSSとの融合が急速に進んでいる昨今、その影響がコミュニティー活動にも波及していることについて聞いたので、お楽しみに。

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