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» 2016年06月24日 05時00分 UPDATE

あなたの知らないハイパーコンバージドインフラの世界(3):ニュータニックスは、ヴイエムウェア、AWSと協力しながら、挑戦する道を歩む (1/2)

ニュータニックスは、ハイパーコンバージドインフラを舞台として、ヴイエムウェアの競合になろうとしている。将来は、Amazon Web Servicesへの挑戦も考えている。今回は、同社が現在何を提供し、今後何をやろうとしているのか、ヴイエムウェアにどう対抗しようとしているのかを具体的に紹介する。

[三木 泉,@IT]

 やはりニュータニックスは、ハイパーコンバージドインフラの市場において、ますます独特な存在になりつつある。同社はハイパーコンバージドインフラを舞台として、ヴイエムウェアの競合になろうとしている。ここでは2016年6月21〜23日(米国時間)に同社が開催した年次カンファレンス「Nutanix .NEXT Conference 2016」における取材から、同社がユーザー組織に対し、現在何を提供し、今後何をやろうとしているのか、ヴイエムウェアにどう対抗しようとしているのかを具体的に紹介する。

 「ハイパーコンバージドインフラ」は、例えばオールフラッシュストレージのような、一般的なITインフラ製品市場とは異なる。

 「社内のITインフラには(パブリッククラウドのプレッシャーもあって)スピード感と運用コストの軽減が求められているため、個別要素を組み合わせて構築するのでなく、購入して利用するようにしたい」。一般企業におけるこうしたニーズが高まろうとしていることを、ITインフラ製品ベンダーは敏感に嗅ぎ取っており、自社製品の提供形態としてハイパーコンバージドインフラに力を入れている。主要なITインフラベンダー(特にサーバ製品ベンダー)が軒並みハイパーコンバージドインフラ製品を提供しているのは、これがただの製品分野ではなく、企業が今後ITインフラ製品を調達する際の、主な手法の1つになりつつあるからだ。

 ニュータニックスは、ハイパーコンバージドインフラ専業の新興企業だ。その同社にとっても、ハイパーコンバージドインフラは手段であり、目的は企業のための新たなITインフラソフトウェアプラットフォームの提供だ。これは同社が、企業のITインフラソフトウェアにおいて、現在圧倒的なシェアを握っているヴイエムウェアの対抗馬になろうとしていることを意味する。また、ニュータニックスの幹部は、ヴイエムウェアを超えた世界を目指しているとも語る。

 ニュータニックスは、とうやってヴイエムウェアの対抗馬になろうとしているのだろうか。ヴイエムウェアを超えた世界をどう作ろうとしているのか。これを、下記に7つの視点で紹介する。

開発スピードと、顧客のバージョンアップサイクル

 ニュータニックスのハイパーコンバージドインフラ製品である「Nutanix Enterprise Cloud Platform(以下ではNutanixと表記する)」は、「企業のオンプレミスITインフラ運用をクラウド化するものだ」と同社はいう。これは他のハイパーコンバージドインフラ製品も変わらない。だが、他社との違いの1つとして、「新機能を高速なスピードで開発しており、パブリッククラウドのように、ユーザーがほぼ自動的にこれを活用できるようになっている」と、同社は主張する。

 製品提供開始以来、ソフトウェアのバージョンアップは5年間で8回行われている。最新のリリースであるバージョン4.6は、2016年に入ってからリリースされた。次期バージョン4.7は、2016年7月に提供予定。こうしてNutanixのユーザーは、(ソフトウェアのエディションにもよるが、)Amazon Web Services(AWS)、Google Cloud Platform、Microsoft Azureといったパブリッククラウドのように、使える機能が次々に増えていくことになる。また、ソフトウェアのバージョンアップで、フラッシュのI/O性能が4倍に向上したという。

最新バージョンである4.6では、リリース後100日間の間に43%のユーザーがアップデートを実施

 クラウドサービスなら、新バージョン、新機能が自動的に適用される。ユーザーは何もする必要がない。一方、オンプレミスで稼働する製品はそうはいかない。ユーザー側でアップデートの作業が必要になる。

 それでもNutanixの最新バージョンである4.6では、リリース後100日間の間に43%のユーザーがアップデートを実施したという。これを可能にしているのは、同社が「ワンクリックアップデート」と呼ぶ機能。管理ツールの画面を1回押すだけで、アップデートがダウンタイムなしで実行される。この容易さが、新バージョンへの移行を促進し、結果としてクラウドサービスのように、新機能や性能向上のメリットを半自動的にユーザーへ提供できていると、ニュータニックスは言う。

 ワンクリックアップデートでは、ハイパーバイザ、ストレージコントローラ、さらにはサーバファームウェアの更新も一括して実行できる。ハードウェアとソフトウェアが統合されているハイパーコンバージドインフラのメリットを分かりやすく示しているともいえ、「こうした製品は他にない」と喜ぶサーバ管理者の声を、同社は紹介している。

KVMベースのハイパーバイザを企業での運用に耐えるものに

 ニュータニックスはVMware vSphereを用いたハイパーコンバージドインフラ製品としてデビュー、その後Hyper-Vを追加サポートした。2015年には、KVMベースのハイパーバイザである「Acropolis Hypervisor(AHV)」を発表。それ以降はESXi、Hyper-Vへの対応強化を続ける一方、AHV関連の機能を充実させてきた。

 AHVでは、ライブマイグレーションや自動HA(他ノードにおける仮想マシンの自動再起動)、VMware vSphereでは「DRS(Dynamic Resource Scheduler)」と呼ばれる仮想マシンの自動再配置機能を提供するなど、企業が仮想化環境に求める機能要件をカバーしている。

 ニュータニックスは「ハイパーバイザはもはや陳腐化した」といい、VMware ESXiを無償で提供しながらも、事実上vCenter、すなわちVMware vSphere経由で利用するしかないようにしているヴイエムウェアを、「オープンでない」と批判する。そして、仮想化のコストを減らせるAHVの利用を、ユーザーに働き掛けている。

 現在では、「Nutanixクラスターの15%がAHVで動いている」と、ニュータニックスのチーフ・プロダクト&デベロップメント・オフィサーであるSunil Potti(スニル・ポッティ)氏は話している。

 一方、一般企業がOpenStackの採用を考える理由が、仮想化のコストを支払いたくないということにあるなら、AHVを使ったNutanixは、そのニーズに応えられる可能性がある。OpenStackを利用するコストや労力が不要で、しかも従来型のアプリケーションに求められる可用性機能を備えており、運用も楽なため、一般企業にとっては、通常のOpenStackディストリビューションを採用するよりもいいという判断が成り立ち得る。

 AHVはオープンソースのハイパーバイザだが、運用フレームワークはニュータニックス独自の仕組みだということは否定できない。そこでオープンな運用自動化のためにOpenStackを採用したいという企業は、今回の発表で、OpenStackからNutanixを制御できるようになった。

 だが、AHVを強力に推進しながらも、一方でニュータニックスはESXi/vSphereやHyper-Vへの対応を強化し続けている。それが市場の現実だからだ。

 特にESXi/vSphereについては、一般企業におけるITインフラのデファクトスタンダードだということは疑いがない。このことを出発点としない戦略はあり得ない。逆にニュータニックスは、「vSphereを使う一般企業のITインフラ担当者が困っていることを、vSphereを使いながら解決できる」、つまり「vSphereをもっと効率的に、簡単に使える」ということを売り物に、企業から信頼を得ようとしている。

マルチハイパーバイザ対応にどんな意味があるか

 AHVをESXiやHyper-Vと混在で動かし、一括運用できることは、従来型のアプリケーション、新しいアプリケーション双方の運用をクラウド化するものであり、「AWSのようなパブリッククラウドにはまねできない」とニュータニックスは主張する。

 一般的な考え方からすれば、ESXi上で従来型のアプリケーションを動かし、AHV上で新しいアプリケーションを動かすという役割分担になる。だが、Nutanixでは、各企業の運用担当者の考え方次第で、どんな組み合わせも可能であり、そこにも自由があるとする。

 AHVで全てのアプリケーションを動かすという判断もできる。AHVの場合、KVMをベースとしていながらvSphereのような機能を提供しており、AWSのように、アプリケーション側で可用性を確保する必要がないからだという。

 ある企業のIT担当幹部は、Oracle Databaseのライセンスコストを抑えるために、AHVを活用しようとしていると話す。

 オラクルのOracle Databaseのライセンス体系は、仮想化環境では、製品が稼働する可能性のある全てのサーバのCPUコアについて課金するようになっている。すると、大規模な仮想化環境を運用している企業は、この仮想化環境を構成する全てのCPUコアを対象に課金されることになり、コストが跳ね上がってしまう。そこでこの企業では、同社のESXiベースの環境と混在する形で、Oracle Database専用にAHV環境を構築し、この環境を構成するCPUだけを課金するような取り決めを、オラクルと締結すべく、作業を進めているという。

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