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» 2016年07月05日 05時00分 UPDATE

導入用途や目的を改めて考える:OpenStackを導入する国内企業のIT現場は、今何を目指しているか (1/2)

公表されている例はまだ少数だが、日本の一般企業におけるOpenStack採用は、意外なスピードで進んでいる。では、一般企業はOpenStackに何を求めるのか。これを追ってみた。

[三木 泉,@IT]

 「ネット企業を除けば、日本におけるOpenStackの普及はまだまだだ」と思っている読者は多いかもしれない。だが実際には、公共機関や一般企業で、OpenStackの本格利用を開始した例が増えている。採用を決定済みで、導入作業が進みつつある例を含めれば、さらに多い。公表されているものが極端に少ないだけだ。

 では、既にOpenStackを導入したか、導入を進めている国内の一般企業は、どのような用途や目的を持っているのか。本記事では、アイティメディア @IT編集部と日本OpenStackユーザ会が、2016年3月3日に開催したOpenStackセミナー、「@IT×日本OpenStackユーザ会 企業のためのOpenStack実践編」における講演やディスカッションの内容を踏まえ、下記にまとめてお伝えする。

 OpenStackというと、「クラウドネイティブな」「新しいアーキテクチャの」、つまりアプリケーション側で可用性を担保できるアプリケーションでなければ動かしてはいけないという考え方を述べる人々が多かった。一方、当初多くの一般企業はOpenStackを「VMware vSphereの置き換え」として検討し、ここに大きなギャップがあるとされてきた。

 だが、例えば元日本OpenStackユーザ会会長である、伊藤忠テクノソリューションズCTC)クラウドイノベーションセンター エキスパートエンジニアの中島倫明氏は、「(以前、)OpenStackにクラウドネイティブは必須だと思っていたが、そうではなかった」と上記セミナーで語っている。同氏は続けて、こうした技術的な問題は大きなことではないことが分かってきたとしている。

 「OpenStackは従来型のアプリケーションにしか適さないのか」という問題は、大まかにいって「Amazon Web Services(AWS)は従来型のアプリケーションに適さないのか」という問いに等しい。

 AWSは一般企業のあらゆるアプリケーションに対応する取り組みを進めており、特にセキュリティやガバナンスについては充実したサービスを提供するに至っている。だが、根本的に変わらないのはハードウェア(物理サーバ)の故障やメンテナンスへの対応だ。AWSでは、ヴイエムウェアのvMotionに相当する、ライブマイグレーション機能は用意されていない。これは、スケールするサービスを提供するための、意図的な判断だと考えられる。従って、物理サーバあるいはハイパーバイザーのメンテナンスは、仮想インスタンスを停止して実施することになる。

 HAクラスタリングについても同様だ。単一顧客の仮想インスタンスが同一リージョンに存在しているとしても、どれくらい離れているか確定できないこともあり、事実上利用できない。従って、仮想インスタンスの稼働している物理サーバがダウンすれば、従来型のアプリケーションはダウンする。再起動で復旧を図るしかない。

 それでも、従来型のアプリケーションを書き換えることなく、AWSに載せる企業は増えている。これはユーザー企業が、アプリケーションの可用性についての考え方を変えているということでもある。実際に、AWSのユーザー企業の中には、「社内向けの業務システムなので、多少のダウンタイムがあっても構わない」と話す人がいる。

 OpenStackでも、スケールするサービスの運用という観点から、ライブマイグレーションやHAクラスタリングは推奨されてこなかった。だが、重要なのは、従来型アプリケーションの「可用性」をどこまで厳格に考えるかということにある。従来型アプリケーションをAWSにそのまま移行して問題がないと考える企業であれば、OpenStackへの移行を躊躇する必要はない。

 しかも、OpenStackでは、共有ストレージボリュームを使った仮想インスタンスのライブマイグレーション機能は提供されている。仮想マシンのHAについても、OpenStackコミュニティ内で複数の取り組みが進められているし、商用のクラスタリングソリューションも存在する。比較的小規模なプライベートクラウドであれば、これらを利用することは可能だ。

 それでも心配な場合は、VMware vSphere上にOpenStackをかぶせて使う「OpenStack on VMware」と呼ばれる方法がある。この場合、仮想化環境の管理はvCenter経由で実行できるため、vSphereの可用性機能などは全て活用可能だ。

 上記は、より根本的な問題を含んでいる。これまで多くの国内企業では、社内の業務システムについて、「一瞬でもダウンしてはならない」と考え、特にハードウェアに対する多額の投資を続け、調達に手間を掛けてきた。だが、「一瞬でもダウンしてはならない」ことを、本当に求められているのだろうか。汎用サーバや、これを活用したパブリッククラウドが、圧倒的な価格性能比を示す新たな選択肢となっている今、「一瞬」、あるいは年間30分程度のダウンタイムを避けたいがため、インフラに例えば数億円を投資し続けることの経済的合理性をどう考えるかが、問われているともいえる。。

キリンはシステム基盤の構築・テスト自動化でOpenStackを使う

キリンビジネスシステムの門田晴裕氏

 キリンはOpenStack on VMwareを採用している企業の一社だ。同社は飲料事業で、約1000台に上るサーバのOpenStackへの移行を2015年に開始した。最終的には、約2000サーバを移行する予定だ。だが、キリンビジネスシステム 情報技術統轄部 インフラ技術管理グループ 部長の門田晴裕氏は、上記セミナーで、OpenStackやオープンソースを使うことが目的ではないと語った。

 キリンでは、ITコストの削減が明確な経営課題になっており、2015年からの中期経営計画では、10%のITコスト削減目標が示された。これを達成するためには「非連続的な考え方が必要だった」と門田氏は話す。

 同社ではこれまでのM&Aなどの結果、同一の役割を果たす業務システムが社内に複数存在する状況が続いてきた。そこでまず、3カ所存在していたデータセンターを1カ所に集約することで運用コストを圧縮。また、2015年時点で、社内のサーバ約2000台のうち半数が、2、3年のうちにサポート切れになることをきっかけとして、OpenStackへこれらを順次移行するプロジェクトを開始した。

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