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» 2016年08月22日 15時00分 UPDATE

クラウド導入へ踏み出せない企業のために:ミッションクリティカルシステムのAWS移行、3つの課題と対策

AWS(Amazon Web Services)をはじめとするクラウドサービスの発展・浸透を受けて、基幹系システムのクラウド移行を検討する企業が増加している。だがクラウド上で、基幹系システムのような“決して止まってはならないシステム”の運用性と可用性を担保するためには、さまざまな技術とノウハウが求められる。人とコストなど限られたリソースの中でも、安全かつスムーズに基幹系システムをクラウドへ移行するためにはどうすればよいのだろうか?

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どうすればクラウド環境の業務システムで安定したサービスを提供できるのか

 近年、ERP(Enterprise Resources Planning)をはじめとする基幹系の業務システムをクラウドへ移行する動きが出始めている。こうした業務システムは、クラウド上であっても安定したサービスの提供が利用者から求められる。そのためには、定刻通り確実にシステムを運行させるためのジョブスケジューリング制御による運用性の確保と、クラウド基盤上での可用性の確保が必要である。だが、クラウド環境では、オンプレミス環境で行ってきたこうした手法がそのまま適用できないことがほとんどだ。

 例えばAWSに代表されるクラウドサービスでは、オンプレミス環境で一般的なシステムをHAクラスタ構成にして可用性を確保することが難しい。そのため、オンプレミス環境に適用したものとは異なる技術、ノウハウで冗長化を図る必要がある。また、ジョブスケジューリングのための基盤の仕組みも、RESTful APIの利用やオートスケール対応などオンプレミス環境とは異なる手法を使うことが求められる。

 では、既存システムのクラウド移行に当たり、どうすればオンプレミス環境のシステムと同様なサービス提供ができるのか――クラウド移行を進める多くのユーザー企業が直面するこうした悩みに対し、AWS上でオンプレミス環境と同等の運用性と可用性を担保する仕組みを提供しているのが日立製作所とNECだ。

 周知の通り、日立製作所は、統合システム運用管理「JP1」を1994年から展開し、19年連続国内売上シェアNo.1(テクノ・システム・リサーチ調査 他)を継続中だ。ジョブ管理「JP1/Automatic Job Management System 3」は多くの企業が導入している。

ALT 日立製作所 ソフトウェア・サービス開発本部システム管理ソフト設計部 部長 石田貴一氏

 一方、NECは高可用性クラスタリングソフト「CLUSTERPRO(クラスタープロ)」を長年提供し、日本を含むアジア・パシフィックで6年連続シェアNo.1*という実績を持っている(*出典:IDC White Paper「多様化するプラットフォームの高可用性を実現するクラスタリングソリューション〜先進的なベストプラクティスから見える将来〜」Sponsored by NEC,Nov 2015)

 日立製作所 ソフトウェア・サービス開発本部システム管理ソフト設計部 部長の石田貴一(いしだたかいち)氏は、「JP1ではAWSをはじめとするクラウドのプラットフォームへの標準対応を進めており、最新のJP1 Version 11では、オートスケール時でもジョブ制御と監視を継続できるなど、AWS対応を強化しています」と語る。

 NEC クラウドプラットフォーム事業部シニアマネージャーの一二三淳志(ひふみあつし)氏は、パブリッククラウド環境におけるシステムの可用性担保について、次のように話す。

ALT NEC クラウドプラットフォーム事業部シニアマネージャー 一二三淳志氏

 「クラウド基盤を提供しているベンダーは最高で99.99%のSLA(Service Level Agreement)を策定しています(※)。ただし、これはあくまでクラウド“基盤”に対するもの。基盤の上で動かすシステムについては、利用者側が可用性を担保する仕組みを構築する必要があります。その意味で、クラウド上でのHAクラスタリングソフトが果たす役割は非常に大きいと考えます」(一二三氏)
(※AWSではEC2を99.95%以上使用できるようにすべく構築されている)

 では両社はどのような協力体制を取っているのだろうか? この点について、石田氏は「業務システムの一部として、CLUSTERPROでクラスタリングしたいという声を多くいただき、2007年2月からお互いに正式サポートを開始しました。以降、継続して両社のパートナーシップの下、最新版の評価、サポート、技術検証を実施しています。今後も、両社によるクラウド環境上での評価を強化することで、ユーザーの声に応えていきたいと考えています」と、両社の密接な関係を語る。いわば運用管理ソフトとHAクラスタリングソフトのトップブランド同士がタッグを組むことで、基幹系システムのクラウド移行を強力にバックアップしようというわけだ。

AWS環境でのHAクラスタ構成、3つの課題とその解決

 では、AWS環境でのHAクラスタ構成にはどんな課題があるのか。1つ目は、「クラウド基盤の可用性」だ。一般的にシステムの可用性を高めるためには、サーバ、インスタンスを複数用意する。AWSの場合はアベイラビリティーゾーン(AZ)という概念があり、シングルAZではインスタンスを増やしても、AZ障害でシステム全体が停止する可能性がある。

 つまり、HAクラスタを実現する場合、ユーザー側では、マルチAZ間で業務データを連携しておき、片方のAZが停止する事態が起こったとき、もう一方のAZにフェイルオーバーして業務を継続できるようにしておくことが不可欠となるのだ。

 2つ目は、「障害が起こったときの切り替え方法」だ。オンプレミス環境ではサーバに障害が発生した場合、待機系のサーバにフェイルオーバーすることで業務継続を実現する。待機系サーバへのフェイルオーバーは接続用の仮想IPを切り替えることで実現するが、AWSのVPC(Virtual Private Cloud)環境ではブロードキャストがサポートされないため、ARP(Address Resolution Protocol)を利用した仮想IPの制御ができない。そのため、マルチAZ間にシステムを冗長化した上で、仮想IPと同等の効果があるAWSに特化した切り替え方法が必要になる。

ALT 図1 AWS環境でHA構成を作る際の3つの課題

 具体的には、グローバルIPアドレス(Elastic IP)をアクティブなサーバに付け替える方法や、VPCのRoute Tableを書き換える方法などがある。これらはAWSのAPIをCLUSTERPROから動的に制御することで実現している。

 3つ目は、「システムを冗長化する際、どのようにしてアプリケーションのデータを引き継ぐか」ということだ。オンプレミス環境であれば共有ストレージによるデータの共有が一般的であるが、AWS環境では、共有ストレージに相当するサービスが現時点では存在しない。そこで、CLUSTERPROのミラーリング機能によりデータを共有することでこの課題に対処する。

 「こうした3つの課題にきちんと対応するためには、CLUSTERPROに関する技術と経験だけではなく、AWSに関する技術と経験も必要です」(一二三氏)

 「日常業務を行いながら、そうした技術を習得することはなかなか難しい。そこでNECと日立製作所が培ってきた技術、ノウハウを基に、ユーザーがAWS上でJP1のHAクラスタ構成を簡単に組めるベストプラクティスを提供しようと考えたのです」(石田氏)

AWS上でHAクラスタ構成を組むためのベストプラクティスとは

 そのベストプラクティスとなるのが以下のシステム構成だ。「マルチAZのシステム構成」「AWS上での経路の切り替え」「ミラーリングによるリアルタイムでのデータ共有」という、AWS環境でHAクラスタ構成を組む際の3つの課題解決策を実装する仕組みだ。

 CLUSTERPROでは、VPCの外部にサービスを提供することを想定した「Elastic IP制御によるHAクラスタ」と、社内向けサーバなどVPC内部にサービスを提供する場合を想定した「Virtual IP(以下、VIP)制御によるHAクラスタ」の2つの方式を用意している。このうち、一般的な企業で多く使われる「VIP制御によるHAクラスタ」の場合、AWS用の仮想IPリソースを利用し、フェイルオーバーのタイミングでRouteTableを変更する(AWSのAPIを利用してVIPへのルーティングをスタンバイ側のインスタンスに切り替える)ことで冗長性を担保する。

ALT 図2 VPC内部にサービスを提供する場合を想定した「VIP制御によるHAクラスタ」構成。フェイルオーバーのタイミングでRouteTableの変更をCLUSTERPROで制御

 これにJP1を適用すると以下の構成イメージとなる。

ALT 図3 オンプレミス環境と同様のHAクラスタ構成をAWS上でも構築し、オンプレミス側のJP/AJS3でジョブを制御

  システム全体はJP1/Automatic Job Management System 3(JP1/AJS3)のジョブ制御によって運用しており、運用管理用のシステム、および各業務システムはマルチAZのHAクラスタ構成をとる。 JP1/AJS3マネージャとJP1/AJS3エージェントはCLUSTERPROでクラスタ化されており、一方のインスタンスで障害が発生してもCLUSTERPROがそれを検知してフェイルオーバーすることで、業務を継続できるようにしている。また、EBS(Amazon Elastic Block Store)に保存されたデータはインスタンス間でリアルタイムに同期されているため、古いデータで業務が引き継がれてしまうような心配もない。

 事例としては、図3に示した基幹系の業務システムをJP1/AJS3によりジョブ制御する構成や、JP1の監視系製品を含む構成など、ユーザーの要件に柔軟に対応し、実績を積み上げている。

JP1×CLUSTERPRO「評価キット」の提供開始と今後の取り組み

 日立製作所とNECは、より簡単にこのベストプラクティスを利用してもらえるようJP1とCLUSTERPROの評価版と構築手順書をセットにしたEBSスナップショットの提供開始を決定。2016年8月22日から、「評価キット」として無償提供する。

 「システムの実行環境がオンプレミスからAWSに変わっても業務が変わらないこと、エラーが起きてもこれまでと同様の手順で復旧できることを、実際に試してみることが大切です。構築手順書と両社製品の評価版をセットした『評価キット』は、高可用性が求められるシステムのAWS上での安定運用と、安定したジョブ運用を求めているユーザーのニーズにあった仕組みを簡単に構築できるようにしています」(石田氏)

 評価キットの提供に当たり、両社技術センターの担当エンジニアが連携し、密に検証を重ねてきたという。検証項目は、「管理情報がすみやかにミラーリングされるか」「指定されたジョブがエラーや遅延なく実行できるか」「その結果を適切に管理できるか」など数十項目に及ぶ。一二三氏は、両社がタッグを組む意義を次のように語る。

 「プラットフォームが多様化する中、お互いの知見と技術を直接持ち寄り、今まで通りの使い方を提供していくことで、ユーザーはより安心して製品を利用できるようになります。すでに提供している製品機能を改善できるだけではなく、新しい機能や取り組みを生み出すきっかけにもなります。今回、提供開始する評価キットにとどまらず、今後も“より安心して、簡単にシステムを導入いただくための仕組み”を開発・提供していきたいと思います」

ALT クラウド移行に悩む企業にとって、非常に心強い両社のタッグ

 一方、石田氏は、両社の取り組みによりAWSの新サービスに対応するスピードが速まることを挙げる。

 「AWSはさまざまなサービスを次々とリリースしており、AWS上で稼働させるアプリケーションのバリエーションも増えています。例えばAmazon EFSは、容量が自動増減する柔軟なファイルストレージサービス。その特性を生かしたアプリケーションや業務システムも順次AWSに対応していくことになるでしょう。JP1とCLUSTERPROは、そうしたサービスにもいち早く対応することで、新しい業務システムの運用性、可用性の担保に貢献していきたいと考えています」(石田氏)

 AWSにおいては、用途に応じたさまざまなサンプル構成を多様なベンダーが提供しており、ユーザーはシステムの目的に応じた最適な構成を選択しやすい環境が整っている。評価キットもそうしたサンプル構成の1つとして有効利用できるものだ。なお、評価キットで検証したシステムは、ライセンスを購入することでそのまま本番稼働に移行できる。

 業務システムのクラウド移行にはトラブルがつきもの。特にコスト削減を狙ってクラウド移行を考えているものの、ミッションクリティカルなシステムの場合、トラブル要因は極力排除することが前提となる。日立製作所とNECの“No.1タッグ”は、クラウド移行を検討している多くの企業にとって、心強い味方になるのではないだろうか。

JP1×CLUSTERPRO「評価キット」

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提供:株式会社日立製作所
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2016年9月30日

JP1×CLUSTERPRO「評価キット」

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