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» 2016年09月27日 05時00分 UPDATE

特集:テクノロジーが支援する1億総ワークスタイル変革時代(3):サイボウズ フェロー 野水克也氏に聞く、IoTとワークシェアリングの幸せな関係 (1/3)

小さな需要と小さな供給を効率よくマッチングできるようになれば、労働力減少にも対応できる。そのマッチングを実現するキモの1つがIoTだ。

[文 唐沢正和(ヒューマン・データ・ラボラトリ), 聞き手:@IT編集部,@IT]

「ワークスタイル変革」が求められる3つの“事情”

 昨今、時間や場所に制約された従来の働き方を変えていく「ワークスタイル変革」が声高に叫ばれている。では、なぜ今、ワークスタイル変革が必要とされているのか。

サイボウズ フェロー 野水克也氏

 サイボウズ フェローの野水克也氏は、その背景には3つの理由があると指摘する。

 「1つ目の理由は“国家的な事情”です。少子高齢化が急速に進んでいる日本は、このままだと労働人口が減っていき、10年後には確実に働き手が足りなくなります。その場合、海外からの移民を受け入れるしか労働力を確保する道はなくなります。そうならないためにも、国としてワークスタイル変革を推進して、何としても『働き手』と『働く機会』を増やしていく必要があるわけです」

 2つ目の理由として、野水氏が挙げたのは“企業的な事情”だ。

 「現在、企業では労働効率が低下しつつあります。高齢化と産業の高度化が進み、労働集約型の仕事をしていても収益向上につながらないという産業構造の変化もあります。そのため、『労働集約型』から『付加価値型』へのビジネスシフトが求められています。労働効率が低下している中で、他にはない価値を生み出すビジネスをするには、多様なワークスタイルで働く個性あふれる人材が必要になります」

 「3つ目の理由は“個人的な事情”です。世帯全体の収入が落ちて、男性1人の収入だけでは生活が苦しくなっています。40代男性の正社員の平均年収は約420万円、平均世帯年収は約550万円といわれています。子どもを持っている家庭の場合、ギリギリのラインといわざるを得ません。世帯年収をもう少し上げていかなければ、子どもに十分な教育をしてあげられなくなる可能性もあります。また、男女の仕事に対する価値観が多様化し、仕事に積極的な女性も増えています。ワークスタイルの変革は、男女の暗黙の役割分担をなくし、世帯年収を高めるためにも重要な取り組みだといえます」

日本は“復活できない社会”

 このように日本では、国から企業、個人に至るまで、国民全体でワークスタイル変革に取り組む必要がある。もちろん、国としても少子高齢化や労働人口の減少に手をこまねいているだけではない。「一億総活躍社会」の実現を掲げて、大きな政策が動き始めようとしている。

 しかし野水氏は、「国は何とか女性の労働力を増やそうとしていますが、結婚して、家事や育児に追われる女性に、さらに働けというのは無理があります。まず男性をもっと柔軟に働けるようにして、家事や育児を分担できる時間を作らないと、女性の労働力をさらに増やすのは現実的ではないと思います」と、今のワークスタイルのままでは一億総活躍社会の実現は難しいと断言する。

 野水氏はさらに、現在のひずみの原因は“復活できない社会”にもある、と続ける。年功序列や終身雇用を前提とした人事システムは、一度でもレールから外れた人には大変厳しいものとなるからだ。

 「例えば、新卒で入社した会社で10数年働いて、中高年になってから退職した場合、転職・再就職しようとしても、収入が上がるケースはほとんどありません。パートナーが仕事をしていない場合は、世帯収入が大幅に下がります。転職先が見つからない可能性もあります。つまり、一度会社を辞めたら最後、復活するのが非常に難しいのが現在の日本です。こうした社会構造では、長期間継続的にひたすら働き続けるしか収入を伸ばす術はありません」

 野水氏の言葉を裏付けるようなデータがある。日本の自殺率は世界で8番目に高く、先進国ではロシアに次ぐ順位だが、中高年層の男性の自殺率では世界トップだという。他の国は60代以上での自殺率が高いのに対して、日本は40代、50代という働き盛りの男性が自殺を選んでいるのだ。

主要国の自殺死亡率(出展:内閣府「平成27年版自殺対策白書」
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