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» 2016年11月01日 05時00分 UPDATE

特集:成熟するOpenStack、企業における利用の現場(1):OpenStackの、NFVおよびコンテナへの取り組みから見えてくるもの

OpenStackは今、どのような状況にあるのか。どう普及してきているのか。本特集では、OpenStack Barcelona 2016で得られた情報から、これを探る。まず、アプリケーションとの連携をどのように進めているかについてお伝えする。

[三木 泉,@IT]

 OpenStackは今、どのような状況にあるのか。本特集では、2016年10月末にスペイン・バルセロナで開催されたOpenStack Barcelona 2016で得られた情報から、これを探る。まず、アプリケーションとの連携をどのように進めているかについてお伝えする。

 OpenStackの開発コミュニティを取りまとめるOpenStack Foundationが、2016年10月末にスペイン・バルセロナで開催したOpenStack Barcelona 2016。OpenStack Foundation COOのMark Collier(マーク・コリアー)氏が初日に行った基調講演のタイトルは「OpenStack for the Work that Matters」。つまり、「重要な取り組みに貢献するOpenStack」といった意味だ。「OpenStackの今」を切り出そうとすれば、これがそのままキーワードになる。

OpenStack Foundation COOのMark Collier氏

 OpenStackは「クラウドインフラ」のソフトウェアを開発するオープンソースプロジェクト。組織が「クラウド」(パブリック、プライベートを問わず)を使いたいというとき、拡張性、柔軟性、コスト効率に優れた汎用的なインフラ基盤が欲しいことがあれば、具体的な用途のために最適な基盤が欲しい場合もある。

 OpenStackプロジェクトは、拡張性の高い汎用的なインフラ基盤の開発を進めてきた。そしてコンピュート、ストレージ、ネットワークなどの基本コンポーネントについては、機能が成熟してきた(この作業が終わったわけではない)。一方で約2年前からは、その周辺、および用途(コンテナ、NFV、Hadoopなど)を意識した機能強化が進んでいる。Collier氏の講演は、特に後者の、用途を意識した活動や事例に焦点を当て、「重要な取り組みにOpenStackがどう貢献しているか、どう貢献しようとしているか」を説明していた。

 最近のOpenStackプロジェクトでは、用途を意識した機能開発が増えてきた。こうした開発が、各用途に関連する他の組織や企業との協力で促進されているケースもある。また、参照アーキテクチャ(推奨構成)の提示など、ソフトウェア開発以外の活動も目立つようになってきた。

「用途を意識した活動」とはどういうことか

 OpenStackはこの2年あまり、NFV、コンテナ環境、Hadoop環境といった特定用途への対応を進めてきた。どんな用途でも、OpenStackはインフラ部分を担う。インフラ側から、これらの用途に適したプラットフォームとして使ってもらうためには、各用途におけるインフラ要件を見いだし、これに適合するための取り組みを進めなければならない。こうした取り組みとしては、新機能開発、拡張性やパフォーマンスの向上、各用途のためのミドルウェアやアプリケーションとの連動性向上などが求められる。推奨構成を提示することも役に立つ。

 こうした活動では、OpenStackにおける既存・新規のプロジェクトにおける対応が不可欠なのはもちろん、これらプロジェクト間の連携強化が必要になる。そして特定用途に関する影響力を持つ組織や企業との協力も重要な意味を持つ。

NFVは、なぜOpenStackにおける模範なのか

 NFV(Network Function Virtualization)は、2015年以来、OpenStackの用途として急浮上している。あるOpenStackディストリビューションベンダーの責任者は、2016年におけるOpenStack関連の売上の約半分を、NFVが占めることになるだろうと話している。もちろん、多くのNFV関連プロジェクトは始まったばかりで、ビジネスとして本格化するのはこれからだ。また、NFVの対象は通話パケット交換処理にとどまらない。回線サービス全般、IoT(Internet of Things)のための移動体通信サービス、セキュリティサービス全般にも広がってくる。こうした意味で、NFVにおけるOpenStack利用は、始まったばかりだ。

 それにもかかわらず、NFVは、OpenStackの各用途への対応における模範的な存在だと表現することができる。その理由は、次の点にある。

 通信事業者におけるNFVへのOpenStackの適用は、欧州電気通信標準化機構(ETSI)が策定したNFVに関する標準に基づき、参照アーキテクチャを開発しているOPNFVという組織の活動によって促進されている側面がある。

 OPNFVは、ETSIの定めた要件を、オープンソースソフトウェアでどう実装できるかを取りまとめ、提示する役割を果たしている。OpenStackの他、SDN(Software Defined Networking)のOpenDaylightなどを、NFVの要件に照らしてどう組み合わせるかを示すとともに、開発コミュニティに対しては、不足する機能の開発を促している。こうした活動との深い連携に基づき、NFVオーケストレーションの「Tacker」、障害の根本原因解析を行う「Vitrage」といったプロジェクトが、OpenStack内でNFVに特化した機能を開発している。

 OpenStackでは他にも、ネットワークを高速化するData Plane Development Kit(DPDK)に対応した仮想スイッチOpen vSwitchの採用、OpenStack上の仮想マシンからネットワーク機能NeutronへのVLANタグの通知など、NFV関連ニーズに応える活動を進めている。

 このようにして、NFVという目的を達成するために、より上流の活動を進める組織と協力し、インフラに求められる要件を開発するサイクルが回っているところに、NFVにおけるOpenStackの活動の力強さがあり、他の用途への対応においても参考にしやすい。

コンテナでは、オーケストレーションツールとの棲み分けを明確化

 「物理マシン、仮想マシン、コンテナの3種類で展開されるアプリケーションを一括して支えるクラウドインフラになる」というのがOpenStackにおける最近の基本的なテーマだ。これに伴い、過去約2年の間に、コンテナ関連の活動が目立つようになってきた。

 OpenStack内では、コンテナインフラを動的に拡張できる仕組みを開発しているMagnum、ネットワーク機能Neutronをコンテナに結び付けるKuryr、アプリケーションカタログを構築するMuranoをはじめ、複数の関連プロジェクトが立ち上がっている。

 Magnumプロジェクトは当初こそコンテナのスケジュール機能を含み、一部Kubernetesなどのツールと競合する部分が見られたが、最近この機能を削除し、コンテナレベルのニーズに応じて仮想インフラを動的に伸縮する機能に特化することになった。また、Kuryrでは、ネットワークだけでなく、ストレージなどについてもコンテナへのマッピングができるよう、逆に守備範囲を広げようとしている。

 こうしてコンテナに関する役割が明確化したOpenStackの関連プロジェクトでは、Kubernetes、Docker Swarm、Mesosなどとの連携を前提とした機能の開発が進められている。Kubernetesプロジェクトは、OpenStack、Microsoft Azure、Amazon Web Servicesといったクラウドプラットフォームごとに、統合度を高めるための作業グループ(Special Interest Group)を運営しているが、OpenStackはこのグループで協議を重ねているという。

 では一方で、NFVにおけるOPNFVのような、コンテナ環境における上流に位置する組織との連携はないのか。Cloud Native Computing Foundation(CNCF)はインフラを対象としてはいないが、この団体との連携を深めることは意味があるのではないのか。そうCollier氏に質問すると、「CNCFとの話し合いは既に頻繁に行っている、今後も話し合いの回数を増やしていく」と答えている。

複数の手段でアプリケーションと連携

 本記事冒頭のテーマに戻ると、特定の用途のためにクラウドを使いたいというケースは、今後ますます増えてくるはずだ。OpenStack Foundationは、こうした用途のためのインフラとしての役割を改善できる余地があれば、必要なソフトウェア機能を開発していくという。また、これとは別に参照アーキテクチャ(推奨構成)を充実させていきたいといい、第1弾としてビッグデータ、すなわちHadoopについての参照アーキテクチャを公開したことを明らかにしている。

 本特集では今後、OpenStack Barcelona 2016で得られた情報から、OpenStackコミュニティの最新の動き、各種業界における事例などを紹介する。ご期待いただきたい。

特集:成熟するOpenStack、企業における利用の現場

OpenStackは利用フェーズに入ってきた。世界で、そして日本で、企業における導入が急増し、その利用目的も多様化してきた。本特集では、OpenStack Summit Barcelonaで得たOpenStackの最新情報、および世界/日本における具体的な導入事例をお届けする。

[取材協力:OpenStack Foundation]



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