日立、IoTプラットフォームを中心にデジタル化時代の製造、金融、流通、公共などの事例を紹介Hitachi Social Innovation Forum 2016 TOKYO(2/2 ページ)

» 2016年11月01日 19時50分 公開
[丸山隆平@IT]
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日立製作所のIoTのコア技術:人工知能、アナリティクス、ロボティクス

 次に、東原氏はLumadaを支えるコア技術として、人工知能、アナリティクス、ロボティクスの3つを紹介した。

人工知能――物流や流通、コールセンターなど14分野57案件で活用

 東原氏は人工知能(Artificial Intelligence:AI)について、「日立の考える人工知能は人を代替するものではなく、“人を支援するテクノロジー”だ」と述べた。日立製作所の人工知能テクノロジーである「Hitachi AI Technology/H」について、その特徴は「AIに何をさせるか」の最終判断は人が行うところにあると付け加える。「人が与えた目標に対しHが自ら学習し、成長しながら結果を出す」のだという。

 ここで東原氏はHの活用事例を動画で放映。ロボットがHを使ってブランコで膝を曲げるタイミングを学び、さらに膝を前と後ろで曲げるような人が怖くてなかなかできない技を学ぶ様子が紹介された。また、ブランコ専用にソフトウェアを作成したのではないことを示すために、ロボットが鉄棒を自ら習得する様子もデモンストレーションされた。

ロボットが鉄棒を自ら習得する様子

 東原氏によると、Hは既に物流や流通、コールセンターなど14分野57案件で生産性の向上や運転コストの削減、電力削減などに使われているという。

 例えば流通分野では、店舗や業界の知識を与えずに、顧客の流れや陳列商品のデータを与えるだけで、Hは売上が最大となる定員の持ち場配置を提案し、顧客単価の15%の向上を実現したことを紹介した。

 「製造現場では作業の最適な優先順位などを提案し、生産性を10%向上させた。コールセンターでは、お昼休みに誰と会話すれば生産性が向上するかなど、従業員のコミュニケーションの改善に適応し、受注率を27%向上させるなどの実績を示している」(東原氏)

アナリティクス――海洋船舶の保守業務、不正取引の検知システム

 アナリティクスでは、例えば企業内の(Enterprise Resources Planning:統合基幹業務システム)など一定のルールに基づく構造化データや、SNSの画像、音声、テキストなどの非構造データなど100種類以上のデータフォーマットに対応し、「専門家がいなくても迅速にデータを統合、可視化できることが特徴だ」と紹介した。

 すでにグローバルで多くの実例があり、海洋船舶の保守業務では、稼働効率を最適化している。その結果、燃費効率の改善などで1艘当たり年間50万〜150万ドル(約5200万〜1億6000万円)のコスト削減を実現したという。その他日立製作所では、流通、金融、公共分野など1500もの顧客にソリューションを提供している。

事例:海洋船舶保守業務(Caterpillar Marine社)

 「金融分野では米国で不正取引の検知システムの納入に成功、数兆件に上る膨大な取引データを統合、不正取引の摘発に貢献、2015年度には前年度比約3倍の不正取引の検知を実現した」(東原氏)

ヒューマノイドロボット「EMIEW」――羽田空港、東京駅で道案内の実証実験

 日立製作所のヒューマノイドロボット「EMIEW」はロボット単体としてではなく、複数のロボットが、ロボットIT基盤を通じて最新の情報をフィードバック、連携できることが特徴だ。「現場でとらえた最新の情報をフィードバックし複数のロボットで連携することで多くの現場に情報を返すことが可能になる」という。

 EMIEWの特徴は、時速6キロメートルで走行できること、人と会話するための画像、言語を認識すること、ロボット間でリアルタイムなコミュニケーションができることだ。

自立・相互連携型ヒューマノイドロボット「EMIEW」

 「ロボットIT基盤と連携することで、金融機関、交通機関、病院などさまざまな分野で人間を補佐する。羽田空港、東京駅で道案内の実証実験を始めており、近い将来のサービスインに向けて着々と準備を進めている」(東原氏)

日立製作所のIoT事例――生産管理、ダイセル、スポーツイベント

 次に東原氏は、Lumadaにおける価値創造の事例について解説した。

 まず、Lumadaを日立製作所社内の大みか事業所に適用し、リードタイムを50%削減した事例を紹介した。おおみか事業所は多品種少量生産の制御用機器を生産している。生産データ、OT(Operation Technology:運用技術)データとITデータをつなぎ、一元的に見える化し、リードタイムの改善を図り生産実績を大幅に改善。生産現場では約8万のRFID(Radio Frequency IDentification)タグが使われているという。

 ダイセルと共に取り組んだスマート製造の事例は、画像解析システムと製造実行システムをつなぎ、品質保証効率の改善を目指すもの。作業員の体に装着した特殊なカメラを使い、標準動作から逸脱した動きをモニタリングし、トラブルや不具合を未然に防ぐデモンストレーション動画を放映した。

ダイセルとの事例のデモンストレーション動画の一部

 パブリックセーフティーでは、米国で最も人気の高いスポーツイベントで750台の監視カメラを駆使し、顔認証などのフィジカルセキュリティと、Twitter監視などサイバーセキュリティを組み合わせたパブリックセーフティーソリューションを提供した事例を紹介。「過激な発言をする人のTwitterを監視するなどして、数万人が来場し米国中から注目されるイベントをトラブルなく安全に運営できた」と解説した。

日立製作所のFinTech事例――三菱東京UFJ銀行

 またFinTechでの事例では、三菱東京UFJ銀行とシンガポールで行っているブロックチェーンを活用した小切手の電子化の実証実験を開始したことを紹介した。

 「ブロックチェーンは情報の改ざんが極めて難しく、分散することでシステムコストも低減できるなどの特徴を持ち、さまざまな分野のビジネスと融合したFinTechサービスとして新たなサービスを共創していく」(東原氏)

新たな価値を創造するために

 基調講演のまとめとして東原氏は、「これまで日立製作所は製造や金融、流通などそれぞれの業界に価値を提供してきたが、個々の社会イノベーションをデジタル技術でつなぐことで、製造現場から、調達、Eコマース、物流、流通を含めバリューチェーン革新に貢献できる」とし、社会イノベーションの事例として駅構内の人流解析と駅ビルの店舗配置、エネルギー効率の改善などを挙げた。

 最後に東原氏は「新たな価値を創出していくためには、皆さまとの『共創』、データやナレッジを『つなぐ』ことが重要だ。産官学をデジタルで『つなぐ』ことで大きな価値を創出し、そこに暮らす1人1人のクオリティオブライフを向上させることがIoT時代のイノベーションパートナーである日立製作所の目指す姿だ。皆さまと共に新たな価値を創出していきたい」と結んだ。

ヒューマノイドロボット「EMIEW」を動かすデモと東原氏
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