経済産業省が中小製造業のためのIoTツールリストを公表、企業自身が開発したツールもAWSジャパンの説明会で紹介

2016年11月4日にアマゾンウェブサービス(AWS)ジャパンが開催した説明会で、経済産業省は中堅・中小の製造業におけるIoT活用を進めるための取り組みを紹介。また、この取り組みに参加したツール提供企業3社が自社の活動について説明した。ツール提供企業の中には、「それ自体をビジネスとして考えていない」というところもある。

» 2016年11月07日 10時51分 公開
[三木 泉@IT]

 2016年11月4日にアマゾンウェブサービス(AWS)ジャパンが開催した説明会で、経済産業省は中堅・中小の製造業におけるIoT活用を進めるための取り組みを紹介。また、この取り組みに参加したツール提供企業3社が自社の活動について説明した。ツール提供企業の中には、「それ自体をビジネスとして考えていない」というところもある。

 日本政府は、経済産業省、総務省を中心に、IoTへの取り組みを進めている。経済産業省製造産業局参事官室課長補佐の安藤尚貴氏によると、ロボット革命イニシアティブ協議会の下に「IoTによる製造ビジネス変革ワーキンググループ」が設置され、この中で中小企業がIoTを活用するための基礎インフラを整備することの重要性が認識されているという。そして、中小企業のIoT活用に向け、「IoTツールに関する情報の一元化」「事例集の策定」「IoT導入コンサルタントの育成・活用促進」といった取り組みを行っているという。

 今回紹介したのは「IoTツールに関する情報の一元化」に関する部分。中堅・中小企業が簡単に使える安価なIoT関連業務アプリケーションやセンサーなどのツールを2016年7〜8月に募集。その結果を10月4日に、ロボット革命イニシアティブ協議会のWebで公開した。

中小の製造業がIoTを生かすためのツールリストを公開

 この施策と直接の関連はないが、中小企業庁ではIoT関連での投資を支援するため補助金を支給しており、上記のようなツールの利用におけるハードルが下がることも考えられるという。

中小企業自らが開発したユニークな生産管理ツール

 リストされたツールの1つでユニークなのが、従業員160人規模のパイプ曲げ加工・板金加工メーカー、武州工業が開発した「BIMMS on AWS」(仮称)。これは同社のために開発した(生産管理を中心とする)総合管理システムをAWS上に載せ、サービスとして提供するもの。代表取締役の林英夫氏によると、このソフトウェア自体を事業の柱にするつもりはないという。「クラウドで簡単に共有できるようになったので、広く使ってもらおうと思った。製造業は、外国に出ていく(製造拠点を移す)だけが能ではない。日本の中小企業が生産性を高め、生き残っていくために役立ててもらえればいい」と話す。

 BIMMS on AWSは、「リアルタイムの棚卸し」をコンセプトに開発されている。「中小の製造業では、売り上げと仕入れの間で、何が起こっているのかを可視化できているところがほとんどない。これを示せれば、融資を受ける際にも有利」(林氏)という。

BIMMS on AWSは生産管理を受注管理、品質管理と連携

 このソフトウェアでは、完成品だけでなく、仕掛中の製品の数を含めてリアルタイムの棚卸しができる。各工程で良品数、不良品数を入力するようになっているからだ。不良の内訳をグラフで示し、カイゼンに役立てることもできる。また、各製品の使用した部品のロットを後から追跡できるようにしている。IoT的なのは、製造機械の動作実績を自動収集する機能。といっても、センサーの代わりにスマートフォンなどを機械に貼り付けて、その3軸センサーなどにより、機械の動きを記録。これに基づいて、機械を使う作業者の生産性を可視化できる。また、受注情報をリアルタイムでそのまま生産現場に伝えられ、これに基づいて生産現場も納期情報を営業担当者に連絡できる。

 武州工業ではトップダウンでなく、社員が自律的に、会社の方針にベクトルを合わせられるような環境を目指しているという。ワークライフバランス改善のためにも、同社はこのソフトウェアを役立てているとしている。

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