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» 2016年11月24日 05時00分 UPDATE

特集:成熟するOpenStack、企業における利用の現場(3):フォルクスワーゲンのOpenStackプライベートクラウド、究極の目的とは (1/2)

ドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲン・グループ(VWグループ)がOpenStackに基づくプライベートクラウドへの取り組みを拡大している。究極の目的は何なのか。OpenStack Summitにおける同社の講演をまとめ、何を目指しているのかを探った。

[三木 泉,@IT]

 ドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲン・グループ(以下、VWグループ)がOpenStackに基づくプライベートクラウドへの取り組みを拡大している。本社のある独ヴォルフスブルクのデータセンターで本格稼働が始まっているが、グループ企業シュコダの本拠地であるチェコや、アジア太平洋地域へとグローバル展開を進める。

 本記事では、2016年10月に開催されたOpenStack Summit Barcelona 2016でのフォルクスワーゲンによる2つのセッション、および2016年4月のOpenStack Summit Austin 2016におけるVWグループ IT運用サービス&インフラ担当コーポレート・ディレクター、Mario Muller(マリオ・ミュラー)氏の講演から、同社がOpenStackで何をやろうとしているのかをまとめた。

「変革の時代、ITインフラを再発明する」

 VWグループは、「Volkswagen Group IT Cloud(VW GITC)」と呼ぶ、グループ全体を対象としたプライベートクラウドの整備を進めている。この取り組みが始まったのは比較的最近だ。2015年の7〜8月に計画を立案、9〜10月にPoC(Proof of Concept)およびベンダー選択を実施、2015年の12月までにOpenStackインフラの稼働を開始した。その後2016年6月までに、PaaS基盤であるCloud Foundryの提供を開始するなどし、本格稼働に至っている。規模は、2016年5月時点でCPU 3600コア、ストレージ 840TBだという。チェコに開設する新拠点は、これと同等の規模でスタートするとしている。

 VW GITCを通じ、同社は「(自社の)ITインフラを再発明する」(ミュラー氏)としている。その背景にはもちろん、自動車業界の大きな変化がある。VWグループは「自動車メーカー」から「モビリティプロバイダー」への変身を図ろうとしている。自律運転、テレマティクス、消費者とのコミュニケーションを含めたデジタル化などが重要性を増す一方、製品開発において仮想現実/拡張現実の利用が本格化、コンピュータに設計を行わせる手法も進化しているという。生産活動についても、ロボティクスの進化やスマートプロダクションへの取り組みが進められている。

 「私たちは、VWグループにおける新しいアプリケーション全てのための、オープンなクラウドプラットフォームとしてOpenStackの導入を進めている。事業部門やソフトウェア開発者が必要としているものを、これまでよりもはるかに速く提供することが目的だ」とミュラー氏は話している。同氏は、「OpenStackが新しいアプリケーションの投入を加速化し、ビジネスに対するITの応答速度を向上する」とも表現している。

 より具体的なVW GITCの目標としては、「VWグループにおける全ブランドのためのグローバルな統合プラットフォームになること」「ハイブリッドクラウドを活用すること」「DevOps、アジャイルな開発メソドロジー、ITイノベーションを促進すること」「新しいアプリケーションや機能の市場投入までの時間を短縮すること」「VWグループのガバナンス、コンプライアンス目標に対応したクラウドの運用」「オープンソース的な社内文化を醸成すること」「コスト削減」を挙げている。

具体的なVW GITCの目標

 上記のうち、「ハイブリッドクラウドの活用」は、VWグループがパブリッククラウドの利用を排除しようとしているわけではないことを意味する。「私たちだけで全てのニーズを満たすことはできないと認識している」と担当者は話す。実際に専任のハイブリッドクラウド検討チームがいて、メガパブリッククラウド事業者とも協議しているという。

 「オープンソース的な社内文化の醸成」とは、あるユーザー部署で開発したやり方から他の部署が学び、流用できるような環境を整えることを意味している。

 前述の通り、VW GITCはモード2アプリケーション(新しいアプリケーション)用のインフラだ。現在のところ、既存ITインフラで稼働するモード1アプリケーション(既存アプリケーション)を移行する具体的な計画はない。だが、VWグループでは、「モード1」(既存アプリケーション)と「モード2」(新しいアプリケーション)を完全に別物として考えないことを方針としているという。

 「モード2の世界を運用する過程で出てきた考えを、モード1に適用する方法はないかを考える。また、モード1の運用経験で、モード2に適用できることはたくさんある」(担当者)

 VWグループでは、プライベートクラウド構築チームに、既存のサーバ、ストレージ、ネットワークなどに関する社内専門家を積極的に加え、その知識を生かしているという。また、OpenStackクラウド側で得た構築自動化などのノウハウを、ゆくゆくは既存システムの運用に生かしていくという。

本格稼働に至るまでの、2つの「決断」

 2016年中頃に本格稼働を開始したVW GITCだが、2017年中頃までの1年間に、約60の新サービスプロダクトを提供する計画だ。

 その内容は下記の図の通り。Pivotal Cloud Foundryは稼働開始しているが、加えてコンテナオーケストレーションなども提供する。その他、データベース(DBaaS)、データウェアハウス(DWH)、高セキュリティのCI/CD環境、APIゲートウェイ、パブリッククラウドとの接続、メータリング/課金、ユーザーポータルなど、多岐にわたっている。

 また、クラウドとしての機能の他に、ソフトウェア開発者のためのクラウド活用ガイドラインやメソドロジーの整備、さらにビジネスユーザーのためのアプリケーション移行支援がある。

これらの機能/プロダクトを、1年間で整備する

 「プライベートクラウドでユーザーのために提供しなければならないことを全体として考えれば、OpenStackはそのほんの一部でしかない」と、担当者は話す。

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