F5ネットワークスジャパン、新BIG-IPとコンテナプロキシを国内発表日本企業は先進的な使い方をしている

F5ネットワークスジャパンは2016年11月24日、同社のアプリケーションデリバリコントローラ(ADC)製品を一新し、「BIG-IP iシリーズ」として2017年2月1日に発売すると発表した。また、コンテナ環境を可視化し、セキュリティ/可用性/パフォーマンス管理ができるソフトウェア製品を2017年第1四半期に提供開始するという。

» 2016年11月25日 10時58分 公開
[三木 泉@IT]

 F5ネットワークスジャパンは2016年11月24日、同社のアプリケーションデリバリコントローラ(ADC)製品を一新し、「BIG-IP iシリーズ」として2017年2月1日に発売すると発表した。また、コンテナ環境を可視化し、セキュリティ/可用性/パフォーマンス管理ができるソフトウェア製品を2017年第1四半期に提供開始するという。

コンテナ環境のための高機能プロキシを提供

 コンテナ環境への対応については、コンテナオーケストレーションのためのプロキシソフトウェア「F5 Application Service Proxy」を発表した。これはKubernetesおよびMesos Marathonと連携し、kube-proxyやHAProxyの代わりに導入できるものだという。

 マイクロサービスアプリケーションにおける現在の課題として、マイクロサービス間通信の可視化とコントロールができないという点がある。実際に国内の大手ゲーミングプラットフォーム企業のインフラ担当者は、1つの処理を完結するために50以上のAPIコールが行われるケースもあり、ネットワーク遅延やネットワークエラーの確認作業が煩雑すぎると話しているという。

 F5の新しいプロキシソフトウェアでは、マイクロサービス間のトラフィックを詳細に可視化できる。このため、アプリケーションの開発・運用における障害対応がしやすくなる。また、マイクロサービスを動的に追加し、負荷分散することで、ボトルネックを回避できるという。

Splunkを使って、サービスのレイテンシやサービス間のトラフィックフローを可視化する例

 もう1つのコンテナ対応製品「Container Connector」は、BIG-IPとコンテナアプリケーションを連携して、自動スケーリングを実現するもの。BIG-IPは仮想化環境において、アプリケーションリクエストが増えると仮想化環境と連動し、新たなWebサービスインスタンスを起動して負荷分散するといった機能がある。コンテナアプリケーションに対してこれと同様な連携を実現するという。

選択的に高速化する機能を搭載した新BIG-IPアプライアンス

 一方、今回発表したBIG-IP iシリーズは、既存のハードウェア版BIG-IPの全機種を刷新するもの。「BIG-IP 2000シリーズ」「同4000シリーズ」「同5000シリーズ」「同7000シリーズ」「同10000シリーズ」が、「BIG-IP i2000シリーズ」「同i4000シリーズ」「同i5000シリーズ」「同i7000シリーズ」「同i10000シリーズ」になる。

 新製品は楕円曲線暗号(ECC)を使ったSSLを、ハードウェアで高速化できる。全機種でECC SSLのハードウェア高速化ができる業界で唯一の製品だとしている。

 そして最大の特徴はF5が「Turboflex」と呼ぶ機能。BIG-IPはアルテラのFPGAを搭載しており、ハードウェアによるトラフィック処理を行っているが、これにプログラムして追加的に高速化する対象を、顧客が選べるというのがこの機能。「プロファイル」という形で選択できる。当初は「セキュリティ」「アプリケーションデリバリコントローラ」「クラウド」の3つのプロファイルが提供される。例えばセキュリティのプロファイルでは、SYN Flood、ICMP Ping of Death、UDP Flood、DNS Query Floodへの対応をハードウェアで高速化できるという。

ユーザーは「プロファイル」を選ぶことで、用途に合ったハードウェア高速化を利用できる

 Turboflexでは、共通のハードウェアを用いながら、ユーザー組織の用途・ニーズに応じた対応をしやすくなる。

 なお、BIG-IP iシリーズではスタンダードモデルとハイパフォーマンスモデルがあり、Turboflexはハイパフォーマンスモデルで利用できる。ハイパフォーマンスモデルは他に、主要なパフォーマンス値がスタンダードモデルの2倍になるという違いがある。ハードウェアは両モデルで同じであるため、機能に制限を加えて価格を下げたものがスタンダードモデルとも表現できる。スタンダードモデルの機能で不足するようになった場合には、ハードウェアを買い替えることなくハイパフォーマンスモデルに移行できるという。

国内BIG-IPユーザーは先進的な取り組みをしている

 F5ネットワークスジャパン 代表執行役員社長の古舘正清氏によると、日本法人の成長率は、F5の他の地域と比較してナンバーワンだという。その背景の1つとして、BIG-IPでは、国内ユーザーの間で、世界に先駆けた先進的な使い方が見られるという。

 特に目立つのは、SDN(Software Defined Networking)およびNFV(Network Function Virtualization)での利用。VMware NSXやCisco ACIのようなSDNと「BIG-IP」を連携させることで、物理的なネットワーク構成の制限を受けることなく、BIG-IPの機能を任意のアプリケーション/サービスに適用できる。通信事業者では、サービスチェイニングにより、BIG-IPの機能をNFVで活用する実証実験が進んでいるという。

 次のテーマとして、F5ネットワークスジャパンが取り組んできたことの1つはパブリッククラウドへの対応。BIG-IPのメリットは、アプリケーションのパフォーマンスや可用性の管理、およびユーザー認証を含めたセキュリティで、クラウドサービスに依存しない、一貫したポリシーを適用できることにある。

 製品としては既に仮想アプライアンス版を提供しており、これを任意のパブリッククラウド上で動かして、ハードウェア版と同一のポリシーに基づき機能を実行できる。もう1つの選択肢としては、エクイニクスのような、クラウドエクスチェンジサービスを提供している事業者のデータセンター(具体的にはエクイニクスの場合「Performance Hub」)にハードウェア版を置いて、パブリッククラウド上で稼働しているアプリケーションのトラフィックを通すことにより、複数のパブリッククラウドを併用しているとしても、共通のセキュリティ/アプリケーション管理機能を適用できる。

 パブリッククラウドにおけるBIG-IPの利用支援では、クラウドインテグレーターを対象としたパートナープログラムを日本発で設置。現在FIXER、サーバーワークス、クラスメソッド、ISAO、cloud.config、JBSが参加しており、2017年末までに20社の加入を目指している。

 また、日本ではセキュリティにも力を入れており、伸びているという。F5では2017年に、世界でセキュリティの専用ブランドを立ち上げるとしている。

 今後はさらに前述の製品などでコンテナ環境に対応、その先にはIoTへの取り組みを進めていくという。

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