役割分担表では「問い合わせ対応」のみですが、実際は全面協力してくださいね。ベンダーなんだから「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(34)(2/3 ページ)

» 2016年12月02日 05時00分 公開

役割分担表の解釈が争点になった裁判の例

 では、裁判例を見てみよう。せっかく役割分担表を作って両者の作業分担を明確にしたのに、「やってくれる約束だ」「いや。それはそちらの責任だ」と角を突き合わせる形になってしまった例だ。

東京地方裁判所 平成22年12月28日判決から

あるユーザー企業(以降、ユーザー)が基幹情報システムの刷新を計画し、パッケージソフトによる開発をベンダーに依頼した。開発は順次進み、ユーザーはベンダーに対して「納入受領書」「検収通知書」を交付した。

※(筆者注)この時点では、まだ「システムテスト」と「本番リハーサル」が残っていたが、プロジェクト開始当初に両者が合意した役割分担表によると、システムテストと本番リハーサルの「主担当」は「ユーザー」で、「ベンダー」は「支援」となっていたため、ベンダーの作業は完了したと見なしてのことだ

ところがこの「システムテスト」が難航して、本稼働は1年延期となった。ユーザーはいったん検収はしたものの、「システムテストと本番リハーサルが終わらないうちは、ベンダーの支援作業も完了したとはいえない」と考え、ベンダーへの支払いを停止した。

しかしベンダーは、「システムテストや本番リハーサルはユーザーの作業であり、自分たちの仕事は完成した」として費用の支払いを求め、両者はこの点を巡って裁判で争うこととなった。

 もう少し詳しく内容を見てみると、問題になったのは主にシステムテストだった。役割分担表には、この工程の「主担当」をユーザー、「支援」をベンダーが行うことになっていた。この「支援」の意味合いが問題になったのだ。

 ベンダーにとってシステムテストでの自分たちの役割は、合わせて3日間の「問い合わせ対応」のみであり、役割分担表の備考欄にもそう記していた

 しかしユーザーは、支援とは「テストの完了まで自分たちに付き合ってくれること」であると考えていた。テストを支援するというからには、それが終わるまでベンダーの作業は完了せず、プロジェクトが頓挫してしまったからにはベンダーに費用は払えないという理屈だ。

 裁判所の判断は、どうだったのだろうか。

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