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» 2016年12月19日 05時00分 UPDATE

お茶でも飲みながら会計入門(106):年収1000万円のエンジニアと年収600万円の営業、配偶者控除を受けられるのはどっち?

年末調整時に話題になる「配偶者控除」。その概要と廃止案議論が登場した経緯を、元ITエンジニアで現会計士の吉田延史さんが解説する。

[仰星監査法人 吉田延史, イラスト:Futoden,@IT]
「お茶でも飲みながら会計入門」

連載目次

本連載の趣旨は、「ITエンジニアになぜ会計は必要なのか」をご覧ください。


 年末調整の時期になりました。

 所得税の1つ「配偶者控除」に関するニュースを、最近よく見かけます。配偶者控除を廃止する案も出たようですが、2016年12月8日時点では、維持される方向で進んでいるようです。

 会計システムに携わるITエンジニアに、業務知識として会計の基礎知識をお伝えする本連載。今回は、配偶者控除の概要と廃止案登場の経緯を説明します。

※本記事の内容は、2016年12月8日現在の情報を元に作成しています。また、配偶者控除についてのみの説明で、「社会保険の扶養」や「特別控除」は含んでおりません。

【1】納税額が確定するまでの流れ

 配偶者控除は、「所得控除」のうちの1つです。そこで、最初に所得税の基本を確認します。

 所得税は「1年間の個人のもうけ」に対して課される税金です。もうけの計算は4つのSTEPで行います。詳しくは、本連載第41回「アプリ開発ビジネスで独立するなら、知っておきたい『所得税計算』」も参照してください。

STEP1:所得を計算する。

 個人の所得を幾つかの種類に分類して計算します。代表的なものは「給与所得」「不動産所得」などです。

STEP2:所得控除

 STEP1で計算した「所得」から、幾つかの項目を税額計算前に控除します。代表的なものは「配偶者控除」「扶養控除」です。

STEP3:税額計算

 STEP2で算出した「控除後の金額」を基に「税額」を計算します。

STEP4:税額控除

 STEP3で計算した税額からさらに税額をマイナスできる場合は、差し引きます。代表的なものは「住宅ローン控除」です。

 これで「納税額」が確定します。

 配偶者控除はSTEP2で登場します。配偶者控除の適用を受ければ、所得税は減ります。次の項で詳細を見ていきましょう。

【2】配偶者控除を受けるための条件

 まずは、現状の配偶者控除の仕組みについて見ていきましょう。

 配偶者控除は名前の通り、配偶者がいる人だけが受けられる控除です。しかし配偶者がいれば必ず受けられるわけでもありません。

 4種類のパターンを例にとります。

パターン 夫収入 雇用形態 職種 妻収入 雇用形態 職種
A家 1000万円 正社員 エンジニア なし なし 専業主婦
B家 800万円 正社員 会計士 100万円 パートタイマー 営業事務
C家 600万円 正社員 営業 750万円 正社員 エンジニア
D家 700万円 正社員 エンジニア 140万円 パートタイマー 販売
お茶会計1 配偶者控除

 配偶者控除を受けられるか否かの判定指標は「配偶者の収入が103万円以下である」です。

 この指標をそれぞれのパターンに当てはめます。配偶者控除を受けられる人を「○」、受けられない人を「×」で記します。

パターン
A家 ×
B家 ×
C家 × ×
D家 ×(ただし「配偶者特別控除」という別制度により一部控除可能) ×

 「配偶者の収入が103万円以下である」A家夫とB家夫が、配偶者控除を受けられることが分かりました。なお、配偶者控除によって軽減される所得税額は、ざっくり5万円ぐらいと考えてください。

【3】配偶者控除廃止の経緯

 皆さんは「奥さんの年収が103万円を超えないようにした方が得」という話を聞いたことがあるでしょう。

 その理由がこの配偶者控除です。パートナーに配偶者控除を受けさせるために、あえて年収103万円未満で働く人もいます。しかし、年収103万円未満の仕事となると仕事量は限定的でしょう。「配偶者控除制度が、女性の社会進出の足かせになっている」という指摘があります。

 こういった議論を背景に、配偶者控除廃止案が浮上しました。しかし、単に廃止するだけならば専業主婦世帯が損をすることになります。

 2016年12月8日に与党は、「税制改正大綱」をまとめ、配偶者控除の判定を「配偶者の収入が150万円以下である」に変更するとしています。

 あえて103万円未満で働いていた人は、150万円まで働けることになり、「配偶者控除制度が、女性の社会進出の足かせになっている」という指摘に少しでも対応できればという考えによる改正です。

 配偶者控除を説明しました。共働き世帯でも、育児休暇中の場合など一時的に配偶者の所得がなくなった場合に配偶者控除を適用できることがありますので、注意するとよいでしょう。



 2008年から8年にわたって続けてきた「お茶会計」は今回で終了です。この連載により、著書の出版をはじめとして、多くのご縁を頂きました。この場を借りて読者の皆さま、歴代編集者にお礼を申し上げます。

 それではいずれまた。

お茶会計2 配偶者控除

イラスト:Futoden


筆者プロフィール

吉田延史(よしだのぶふみ)

吉田延史(よしだのぶふみ)

京都生まれ。京都大学理学部卒業後、コンピューターの世界に興味を持ち、オービックにネットワークエンジニアとして入社。その後、公認会計士を志し同社を退社。2007年、会計士試験合格。仰星監査法人に入所し現在に至る。共著に「会社経理実務辞典」(日本実業出版社)がある。

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