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» 2017年03月22日 05時00分 公開

「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(38):このアルゴリズムは、私が「発明」しました! (2/3)

[ITプロセスコンサルタント 細川義洋,@IT]

アルゴリズムだけでは、審査もしてもらえない?

 今回紹介するのは、ある米国の法人がハッシュ関数に関する発明について特許を申請したが、これを認められず裁判になった例である。

 まずは、知財高等裁判所の判決文を見ていただこう。

知財高等裁判所 平成20年2月29日判決より

ある米国法人がハッシュ関数に関するアルゴリズムを特許出願したが、特許庁はこれについて拒絶査定を下した。特許として審査をする以前に、この申請自体を受け取れないという判断だ。

米国法人はこれを不服として特許庁に審判請求を行ったが、これも請求不成立とされたため、その取り消しを求めて知財高等裁判所に訴訟を提起した。

特許庁の言い分は以下の通りである。

1 提示されたアルゴリズムは、数学的計算であって、対象の物理的性質や技術的性質に基づく情報処理を特定したものということはできない

2 上記数学的計算が機器などに対する制御や制御に伴う処理に関与するものでもない

(以下略)

 特許庁の言い分を簡単に言い換えると、「アルゴリズムは単なる計算式であって、それだけでは特許審査の対象とはならない」ということだ。しかし特許申請側は、そのアルゴリズム自体が発明なのだと言って譲らない。

 裁判所の判断は、どのようなものだったろうか。

知財高等裁判所 平成20年2月29日判決より(つづき)

数学的課題の解法ないし数学的な計算手順(アルゴリズム)そのものは、純然たる学問上の法則であって、何ら自然法則を利用するものではないから、これを法2条1項にいう発明ということができないことは明らかである。また、既存の演算装置を用いて数式を演算することは、上記数学的課題の解法ないし数学的な計算手順を実現するものにほかならないから、これにより自然法則を利用した技術的思想が付加されるものではない。

 裁判所は、特許庁の言い分を認める判決を出した。「発明というからには、何らかの自然法則を利用したモノでなければならず、単なる計算手順だけでは特許審査の対象にはならない」という判断だ。

 「自然法則」とは、「自然のもの」「天然に存在するもの」という意味ではない。機械やソフトウェアの場合、「誰かが何か(入力)をしたら、その結果として何か(出力)が起きる」という「法則」が必要だということだ。

 紙に書いた計算式だけでは、それがいくら工夫に満ちた斬新なものであっても、何も起きない。計算式だけでは、ノーベル賞は取れても審査の対象にはならない。「特許とはそうしたものだ」と、この判決は言っている。

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