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» 2017年04月14日 05時00分 UPDATE

Tech Basics/Keyword:LoRaWAN(ローラワン)

IoT/M2Mでは、省電力でローコストなネットワーク接続サービスが求められている。すでにさまざまなサービスが登場してきているが、本稿では最近注目度が高まっている「LoRaWAN」を取り上げ、その特徴などを解説する。

[小林章彦,デジタルアドバンテージ]
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 さまざまな機器にセンサーやコンピュータを搭載し、ネットワークに接続して、情報を収集したり、制御したりするIoT(Internet of Things)やM2M(Machine to Machine communication)。人工知能(AI)とともに、毎日のようにニュースが流れる注目の分野だ。

 IoT/M2Mにおいて常に課題となるのが、どのようにネットワークに接続するのかである。商業施設やビルなどの設備監視、ガスや水道メーターの自動検針、道路などのインフラ監視、トラックやバスなどの運行管理など、多くの端末を接続しなければならないIoT/M2M分野では、低価格、省電力、セキュリティなどが求められる。

 携帯電話網を利用する接続サービスの場合、1回線当たり数百円のコストがかかるという。スマートフォンなどに比べれば十分に安価だが、何百、何千台の端末を接続することを考えると、膨大なコストとなってしまう。

 そこでIoT/M2M向けのネットワーク接続サービスとして、新たに「LPWA(Low Power, Wide Area Network)」と呼ばれる無線通信規格に注目が集まっている。LPWAとは、省電力で広域をカバーするIoT向けに適したネットワーク接続規格である。

 代表的なものとして、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)が日本国内でサービスを提供することを発表している「SIGFOX(シグフォックス)」、長谷工グループの長谷工アネシスが高圧一括受電サービスを提供するマンションのスマートメーターに採用しているIngenu(アンジェヌ)の「RPMA(Random Phase Multiple Access)」、LoRa Allianceの「LoRaWAN(ローラワン)」などがある。

規格 SIGFOX LoRaWAN RPMA
周波数帯 サブGHz帯   2.4GHz帯
通信速度 100bit/sec 290〜50Kbit/sec 40Kbit/sec
通信距離 3〜10km(都市)/30〜50km(郊外) 1〜5km(都市)/5〜15km(郊外) 〜20km
主なLPWA規格

 本稿では、このうち、今後の急速な普及が期待される「LoRaWAN」を取り上げ、その特徴などを解説しよう。

オープンな規格のLoRaWAN

 LoRaWANは、LoRa Allianceが標準化した小電力の無線WAN(Wide Area Network。あるエリア一帯を通信範囲とする、より広域なネットワーク)規格である。ファブレス半導体メーカーの「Semtech(セムテック)」が開発した無線技術(LoRa変調)をベースにMACレイヤプロトコルなどを標準規格化したものである。

 LoRaとは「Long Range」の略で、長距離の通信を、低消費電力で実現する目的で開発されたことから名付けられている。その名前の通り、都市部で1〜5km、郊外で5〜15kmの通信距離を実現し、年単位の電池駆動が可能であるとしている。

 すでに、全世界の16地域でネットワークの運用が開始されており、56通信事業者が実証実験を行っているという。

 LoRaWANでは、免許不要のサブギガ帯域を利用するため、各国の法規制から地域ごとに異なる周波数帯が使われる。例えば、ヨーロッパでは867〜869MHz、北米では902〜928MHzを利用することが決まっている。日本では920〜925MHz、中国では470〜510MHzの利用が検討されており、現在、技術委員会で細かい仕様を策定している段階にあるという。

LoRaWANの構成 LoRaWANの構成
LoRaWANの規格は、LoRa ModulationとLoRa MAC(MACオプションを含む)で構成されている。物理層は「地域のISMバンド」とされているように、各国のISM(Industry-Science-Medical)バンドの周波数帯に合ったモデムを利用することになっている。モデムは、LoRaWAN Regional Parametersという仕様で規定されている。

 LoRaWANの特徴をまとめると、以下の通りである。

  • 免許不要のサブギガ帯域(中国などの一部の地域を除く)を利用し、長距離通信が可能
  • 低消費電力のため、バッテリによる年単位の長時間駆動が可能
  • 非営利の標準化団体LoRa Allianceが策定・公開するオープンな技術仕様

LoRaWANのネットワークアーキテクチャ

 LoRaWANでは、エンドデバイス(端末)からの通信を、LoRaゲートウェイを介してネットワーク上のサーバ(ネットワークサーバやアプリケーションサーバ)に上げるという構成となっている。LoRaWANでは、ゲートウェイとデバイスに加えて、ネットワークサーバが必要になる。

 ネットワークサーバでは、エンドデバイスのIDの管理やデータのルーティング、暗号化/復号などのパケットの制御が行われる。なお、LoRaゲートウェイとエンドデバイス間はスター型のネットワーク構成となっており、1つのLoRaゲートウェイには複数のエンドデバイスを接続できる。

LoRaWANのネットワーク構成 LoRaWANのネットワーク構成
LoRaゲートウェイとエンドデバイスはスター型で接続される。ローミングもサポートされており、異なるゲートウェイに移動してもシームレスに通信が行える。

 LoRaWANのMAC層では、以下の3種類の通信クラスをサポートしており、用途に合わせて利用することになる。

●Class A

 LoRaの基本通信モードで、エンドデバイス(端末側)からデータを送信する場合に利用する。1回の送信スロットに続き、短い2回の受信スロットを組み合わせたものとなっている。受信できるのは、あくまで送信の直後となっており、常時、受信を行うことはできない。無駄な受信待ち状態を避けることにより、消費電力を最大限に低減できる。

●Class B

 日本が率先して検証を行っているビーコンモード。ゲートウェイから定期的にビーコンが送信され、特別な受信ウィンドウでビーコンを受信したら、データを送信するといったことが可能だ。

●Class C

 レイテンシなしの通信モードで、サーバはいつでも通信を開始でき、エンドデバイス(端末側)は継続して受信モードとして待機する(データ送信時以外は受信モード)。その分消費電力は多くなる。

LoRaのセキュリティ

 IoTの無線通信においては、低価格と省電力に加え、セキュリティも重要な要素となる。例えば、電力やガスなどの検針に利用していた場合、利用状況が漏れてしまったり、使用量が改ざんされてしまったりするのでは困る。また第三者によって、さまざまな機器が遠隔操作されてしまう危険性は避けなければならない。

 そこでLoRaWANでは暗号化方式としてAES128を採用している(AESについては、マスターIT/暗号技術:「第3回 AES暗号化」を参照のこと)。エンドデバイスとネットワークサーバの間はネットワークセッションキー(NwkSKey)で、エンドデバイスとアプリケーションサーバの間はアプリケーションセッションキー(AppSKey)でそれぞれ暗号化することで、多段防御のセキュリティとしている。

いつからサービスが利用できるのか

 日本国内では、2016年5月にソラコムが、LoRaWANを利用した通信事業の提供を行うことを発表している(「株式会社ソラコム、IoT/M2M通信に適したLoRaWANを利用した通信事業に参入」)。2017年2月には、LoRaWAN対応機器の受注を開始(3月より提供開始)しており、ユーザー企業はLoRaWANを使ったサービスが利用できるようになっている。

 ソフトバンクも2016年9月にLoRaWANを提供することを発表しており、近いうちに本格的なサービスの提供についての発表が行われると思われる(「低消費電力でのIoTを実現する『LoRaWAN』提供開始」)。日本IBMなども、すでに福岡市でLoRaWANの実証実験を開始している(福岡市でIoTを活用した住みやすい社会インフラの構築に向けた実証実験 低消費電力かつ長距離無線通信「LoRaWAN」を活用」)。

 またLoRaWANは、自営網(Private)と事業者が運用する公衆網(Public)のいずれでもネットワークの構築が可能である。規格もオープンであることから、ArduinoやRaspberry Pi用のソフトウェアがGitなどで公開されており、これらを使ってLoRaWANゲートウェイを草の根で設置して、みんなでLoRaWANを利用できるようにしようというプロジェクト「The Things Network」もある。

 このようにLoRaWANは、企業がIoTデバイスを接続するためだけでなく、コンシューマーがさまざまな利用法を考えて活用できる点に、他のLPWAと異なる特徴がある。LoRaWANは、こうした草の根の利用から普及が始まるかもしれない。

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